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【チーム状況】

野球協会とプロリーグの対立が解消され、上手くチーム編成が出来たメキシコ代表。オープニングラウンドでは、同じアメリカ大陸予選の枠を争うアメリカ代表、ドミニカ共和国を破りトップ通過。更に、グループBでは戦力が整っていたと見られた難敵ベネズエラが台湾に敗れ敗退。グループCでも、そこそこ強いカナダ代表が伏兵オーストラリアに足元をすくわれ敗退。スーパーラウンドは、同大陸チームのいない戦いとなりました。これは、プロ野球の交流戦のようなもので、仮に自分が全敗してもアメリカ代表も全敗してくれれば、問題ありません。オープニングラウンドの直接対決で勝っているので、お互い全敗してもメキシコが五輪本戦の切符を手にします。トッププロスペクト集団と見られていたアメリカ代表ですが、オープニングラウンドを見る限りあまりチームとして機能している印象が乏しく、対戦相手として見た場合、メキシコ代表の方が怖さがあります。

意外な感じもしますが、メキシコ代表は野球でオリンピックに出たことがありません。彼らからすれば、最初で最後にもなるかもしれないオリンピック本戦出場の最大のチャンス。何としてもこのチャンスを掴みたい所でしょう。


【戦力/チーム編成】

チーム構成は、メキシカンリーグ所属の選手を中心に、メジャーリーグ傘下のマイナーリーガーや、(退団濃厚ですが)日本のプロ野球所属の選手という編成です。特に今大会は、ファン・カストロ監督による早目の継投策が奏功しています。これまで、メキシコの強みと呼ばれつつも国際大会の場で中々活躍出来なかったメキシコ人ピッチャーたちが、漸くその真価を発揮した感があります。

打線の方は、NPB組のクリスチャン・ビヤヌエバ(3B/読売ジャイアンツ)が負傷で欠場。代わりの召集選手はいませんが、代わりに今季メキシカンリーグで本塁打30本のホセ・バルガス(3B/モンクローバ・スティーラーズ)がファーストからサードに入りました。ファーストにはレフトのエフレン・ナバーロ(LF/阪神タイガース)が入り、レフトは本来内野手のノア・ペリオ(2B,SS/モンクローバ・スティーラーズ)が入っています。

個人的に一番いい選手だと思うのは、パドレス傘下のエステバン・キュロス(2B/サンディエゴ・パドレス3A)です。元々メキシカンリーガーでしたが、2017年のWBCの活躍を機に、レッドソックスとマイナー契約。その後パドレスと契約し、もう少しでメジャーに手が届きそうな距離まで来ています。野手がメキシカンリーグからメジャーに入るケースは多くないので、是非頑張ってもらいたい選手です。また、ジョナサン・ジョーンズ(CF/ユカタン・ライオンズ)やホアン・ペレス(RF/サルティーヨ・サラぺメーカーズ)は、共に盗塁30本以上をマークする足がある選手で、相手の機動力にも警戒が必要です。


【展望】

スーパーラウンドでのポイントは、アメリカ代表よりも負けを増やさないことです。アメリカ代表は、弱いチームにはあまり負けないでしょうが、勝負強さはなさそうなので侍ジャパンや同じ位の強豪相手だと力負けする可能性があります。台湾には既に勝利し2勝、アメリカは韓国に敗れ既に2敗。侍ジャパンか韓国のどちらか当たりに勝てれば完璧ではないでしょうか。


【参考:今季成績】

【チーム状況】

直前のキューバとの強化試合は2-2の引き分け、オーストリアとは7-1の完勝と、まずまずの状態で大会入りしたホスト国の台湾代表。台湾プロ野球リーグCPBLは超がつく打高投低のリーグで、特に先発投手の成績上位は外国人投手が独占するなど、投手力不足に悩まされてきました(参考:『台湾代表の勝算は投手次第』)。今大会でも、決して投手力不足が解消されたとは言い切れませんが、日本のプロ野球やアメリカマイナーリーグからどうにかこうにか海外組の選手を召集することに成功し、戦えるだけの戦力を揃えることが出来ました。


【戦力/チーム編成】

台湾と同じく打高投低の国内リーグで、投手力不足に悩む国と言えばキューバ代表があげられます。亡命選手の代表復帰を推進し戦力の底上げを図ったキューバは、補強ポイントである投手で代表復帰する選手はいませんでした。それと比べると、海外組が多く加入した台湾代表は、良い具合で補強ポイントに適した編成が出来たと言えます。その結果、7月末に行われた国内選手中心で行われた強化試合に召集されたメンバーと比べると、先発投手陣はがらっと面子が変わっています。

先発投手では、台湾を代表する野球選手 陽岱鋼(OF/読売)の従兄弟で今シーズン1軍デビューした張奕(SP/オリックス・バッファローズ)、今季マイナー3Aクラスで9勝を挙げた江少慶(SPクリーブランド・インディアンズ3A)、昨年のアジア大会でアマチュアチーム所属ながら全選手プロの韓国代表を破った”韓国キラー”こと吳昇峰(SP/合作金庫(アマチュア) )など、様々なリーグの選手が揃いました。彼らの後ろには今季リリーフ中心に活躍した陳冠宇(RP/千葉ロッテ)なども控えています。

打線はパワーヒッターが揃っています。CPBL本塁打王の朱育賢(OF/Lamigoモンキーズ)、HR27本盗塁21個とパワー&スピードを兼ね備えた蘇智傑(OF/統一ライオンズ)、CPBL首位打者で林立(3B/Lamigoモンキーズ)などが要注目です。今シーズン台湾プロ野球界から日本プロ野球に挑戦した”大王”こと王柏融(OF/北海道日本ハムファイターズ)も代表入りしていますが、彼に続く勢いのある若手が揃っています。


【展望】

オープニングラウンドのグループBでは、日本、ベネズエラに続く3番手と見ています。ただ、ラグビーワールド杯での日本が活躍したように地元の応援というホームアドバンテージを得て、ベネズエラか日本のどちらかを破りスーパーラウンド進出と行きたい所でしょう。

東京オリンピック本戦に出場するには、今大会でアジア/オセアニアの中で最高位(日本は除く)の順位で終える必要があります。つまり、当面のライバルは韓国とオーストラリアなのですが、恐らくオーストラリアは戦力的にオープニングラウンドを勝ち抜くことが難しいでしょうから、最終的に台湾と韓国の一騎打ちになる可能性が高いです。対韓国という意味では、前述したオールプロの韓国代表を見事に抑え込んだ吳昇峰のように、対韓国を意識した編成も見られ、韓国戦は総力戦になると思われます。

日本が対戦するオープニングラウンドでは、中盤位まで接戦になる可能性が十分考えられます。しかし、相手の投手継投の中でコントロールを乱すピッチャーがどこかで必ず出てきますから、国際試合だからといって積極的に振り過ぎず、自滅を待つのも時として必要です。


【参考:今季成績】

※張奕と陳冠だけGO/AO(ゴロアウト/フライアウト率)ではなく、GB/FB(ゴロボール/フライボール率)で表示。

【チーム状況】

今年ペルーのリマで行われたパンアメリカン競技大会。同大会を過去10連覇を達成したキューバ代表からすれば、6位と言う結果に終わった今年の大会は古豪キューバのプライドを大きく傷つけたことでしょう(参考:完敗のキューバ。コロンビアとニカラグアが東京五輪アメリカ予選進出)。読売ジャイアンツでもプレイしたこともあり、同国の英雄的存在であるフレデリック・セペダ(LF/グランマ)をメンバーから外したことがキューバ国内で議論を呼びました。しかし、大会前の海外遠征でアメリカやカナダの独立リーガーを相手に成績が良くなったセペダを外したことは、監督の判断として決して間違っていなかったと思いますが、チームが代表史上最悪の成績に終わった結果は何も弁明も出来ない事態に陥っています。そして、世論の声に押され39歳のベテラン野手は代表に復帰しました。

敗因は”早い回での先発投手の降板”です。昨年からメジャーで導入され話題になった『オープナー制』だとか『ブルペンデー』のような戦法が流行り、なかなかリテラシーが高い同国のメディアも、メジャーの最新戦法の導入を進めるような記事もみかけました。ただ、元々キューバ代表は国際試合において、ちょっとでも投手が打ちこまれそうな兆候があるとどんどん次の投手をつぎ込んでいく積極的な継投策が十八番でした。その内、相手打線が打ちあぐねるような打てそうで打てないピッチャーが表れ、イニングイーター的な活躍をするのが勝ちパターンでした。

キューバ野球連盟(FCB)は、代表チームや国内リーグの底上げのため、亡命した野球選手の国内リーグへの復帰や、更には代表チームへの復帰まで認めました。その第1号が元LAドジャースのエリスベル・アルエバルエナ(SS/マタンサス)ですが、連盟としては野手よりも投手に復帰して欲しかった、というのが本音だったのではないでしょうか。球速が速くなく、球種も少ない、選手層としては薄い投手陣の中で、積極的な継投策をどこまで思い切ってやり切れるかが、勝負の鍵となりそうです。


【戦力/チーム編成】

打線の中心は、キューバのNo.1打者 アルフレッド・デスパイネ(DH/福岡ソフトバンクホークス)になります。しかし、F・セペダを代表復帰させて以上、スタメンで使わない訳にも行かないでしょうから、もしセペダをDHで使うなら、デスパイネを外野で起用しないといけないのが辛い所です。ただ、交流戦ではレフト起用されるデスパイネですが、今シーズンに限っては守備指標UZRが、大きくマイナスにはなっていませんでした。デスパイネの前は、日本シリーズMVPのユリスベル・グラシアル(UT/福岡ソフトバンクホークス)になるでしょう。パンアメリカン大会では、海外組として活躍が期待されたものの逆に打線にブレーキを掛ける役になってしまいました。リベンジの想いは人一倍強いでしょう。

他にも、内野手では、ラウル・ゴンザレス(3B/シエゴ・デ・アビラ)、ヨルダニス・サモン(1B/ハバナ)、セサル・プリエト(2B/シエンフエゴス)の3人はパンアメリカン大会でも成績を残した選手です。特にプリエトは若手の有望株で、遊撃で高い守備力を誇るA・アルエバルエナとの守備は必見です。パンアメリカン大会では得意の打力を発揮出来なかった打てる捕手ヨスバニ・アラルコン(C/ラス・トゥナス)も、今大会での活躍を期する選手の一人ですが、日本で武者修行中のアリエル・マルティネス(C/中日ドラゴンズ)がマスクを被るならば、指名打者がセペダ、デスパイネ、アラルコンでDH渋滞を起こしてしまいます。キャッチャーの起用方法にも要注目です。


【展望】

キューバの属するグループCは、韓国/カナダ/オーストラリアと同組です。キューバは、韓国、カナダに次ぐ3番手という扱いになるでしょう。ただ、どの国も投手陣が盤石とは言えないので、どの国にもチャンスありといったところでしょうか。逆に4番手のオーストラリアが、投手力を武器にするチームであるので、他の3カ国でオーストラリアに足元をすくわれるチームが出てくるかもしれません。(意外とそれがキューバだったり・・・。)


【参考:今季成績】

※イバン・モイネロとライデル・マルティネスだけGO/AO(ゴロアウト/フライアウト率)ではなく、GB/FB(ゴロボール/フライボール率)で表示。

【チーム状況】

今年夏に開催されたパンアメリカン競技大会(開催地ペルー/リマ市)で、見事に優勝したのがプエルトリコ代表です。同大会では、先月侍ジャパンとも対戦したカナダ代表を2度破っています。パンアメリカン大会でもそうでしたが、近年のプエルトリコ代表チームの戦い方は、犠打を多用する傾向が出てきています。プエルトリコは、中南米系の強豪ドミニカ共和国やベネズエラといったタレント王国と比べて選手層が薄いため、僅差のゲームを勝ち切れるよう小技を絡めたスモールベースボールを展開しているように見えます。


【戦力/チーム編成】

パンアメリカン大会ではプエルトリコ国内のウィンターリーグ所属の選手が中心の構成でした。プレミア12では、パンアメリカン大会のメンバーに加え、何人かの現役マイナーリーガーがチームに合流できまして、野手を中心に若干戦力アップしています。ただ、土台がマイナーリーグすらも解雇された国内組の選手ですので、選手層という意味ではオープニングラウンドで同組のベネズエラなどと比べると圧倒的に劣っていると言わざるを得ません。ただし、継続してチームが作られているという意味では、チームの結束力や連携面では他の代表チームより有利かもしれません。

元西武のミゲル・メヒア(RP/カンペチェ・パイレーツ(MEX))や元東京ヤクルトのオーランド・ロマン(RP/クリオーヨス・デ・カグアス)など、日本球界と関わりのある選手もいるのですが、日本で活躍していたのは4年位前の話。やはり選手の格で言うと落ちる印象です。野手で注意したいのはダニー・オルティズ(RF/プエブラ・パロッツ(MEX))。打球の飛びやすい標高2,000m級のメキシコのプエブラを本拠地にしていることを差し引いても、今季42本の本塁打をマークするのは運では出来ないでしょう。彼の前にランナーを置かないよう注意したい所です。


【展望】

グループB(日本/台湾/ベネズエラ/プエルトリコ)の中では、一番戦力が揃っていない印象。直前の韓国との強化試合では、0-4、0-5と2試合連続の完封負け。楽勝な雰囲気もしますが、そう思惑通り行かないのが国際大会。プエルトリコからすれば、何とか接戦に持ち込んで、対戦相手が焦る展開に持ち込みたい所。正直なところ、今回のメンバーで東京オリンピックの出場権獲得は至難の業ですが、プレミア12に続いて開催される東京オリンピック・アメリカ大陸予選に向けて良い流れを作って臨みたい所でしょう。

日本代表からすれば普通にやれば勝てる相手ですので、序盤に点が取れなくても焦らず、終盤に一気に突き放す展開も想定して試合に臨みたい所です。


【参考:今季成績】

【チーム状況】

ベネズエラは、経済危機による治安悪化で国自体が非常に深刻な状況に陥っています。当然スポーツにも大きな影響を及ぼしており、同国の国技と言われる野球もこれまでと違う現象が起きています。例えば、メジャーリーグ機構は経済制裁の一環で、今シーズンの同国ウィンターリーグにメジャーリーガーやマイナーリーガーが参加することを禁止しました。また、メジャーリーグ球団が同国に設立したアカデミーが全て閉鎖されるなど、トップ選手から底辺となるアマチュア層に至るまで野球が出来る環境が国外へと移ってきているのです。

ベネズエラ代表の選手は、母国で集まる機会を逸してしまった今、オリンピックへの出場権獲得を目指し台湾に集まります。今大会に集まったベネズエラ代表の野球選手の中にカルロス・リベロ(3B /レオン・ブラボーズ(メキシカンリーグ・元東京ヤクルト) )がいます。彼は昨年母国で起きた強盗殺人事件に遭遇し同僚のベネズエラ人選手を目の前で亡くしています。母国ではなく東アジアに集結した彼らが、今大会に対してどのような想いを抱いているのか、私などでは到底想像できるものではありません。ただ、1つ言えることは、ベネズエラが日本が対戦するオープニングラウンドの中で最も強い相手だということです。


【戦力/チーム編成】

あまり話題になっていませんが、今大会ベネズエラ代表は中々実力のあるメンバーを揃えてきました。日本が入っているオープニングラウンドGroup Bには、日本/台湾/ベネズエラ/プエルトリコという組合せになっていますが、3つの対戦国の中では、日本のプロ野球でもも何人かの選手が活躍している関係で、どうしても台湾がメディアの注目を集めがちです。ただ、台湾代表の選手構成は、台湾プロ野球CPBLの選手にNPB所属の選手が数名とマイナーリーガー数名が加わっただけでして、一方ベネズエラ代表は、ほぼ全員が2A~3Aのマイナーリーガーか、メキシカンリーグ所属の選手で占められています。リーグの格で言うば、ベネズエラ代表選手の方が高いレベルでプレイしています。日本に来る助っ人外国人選手も、だいたいマイナー3Aやメキシカンリーグ所属の選手が多い訳ですから、そのクラスでプレイしている選手と見れば、明らかに難敵であることは分かるかと思います。

投手で注目は先発陣。ヘンダーソン・アルバレス(SP/キンタナロー・タイガース(MEX) )はメジャー通算6年間で95試合、防御率3.82をマークしている元メジャーリーガーです。2013年にはWBCベネズエラ代表にも選ばれています。同じく先発のフェリックス・ドゥブロン(SP/サルティーヨ・サラペメーカーズ(MEX))は、4年間メジャーを経験し85試合先発を務めました。

野手では、アンドレス・ブランコ(IF/アトランタブレーブス3A)は、メジャーで10年536試合ユーティリティープレイヤーとして出場した経験があり、代表チームでも国際大会における重要な役割を担うことになりそうです。

日本球界と関係ある選手には、前述のリベロ選手以外にミゲル・ソコロビッチ(RP/オアハカ・ウォーリアーズ(MEX))は、2013年に広島カープでプレイ経験があります。


【展望】

日本以外の3カ国の立場からすれば、日本に負けても他の国も日本に負けれくれれば東京オリンピック出場権の争いに直接的な影響がありません。(もちろん、日本に勝てれば次のスーパーラウンドで大きなアドバンテージにはなりますが。)そう考えると、2位通過を目指すのが現実的な目標になります。H・アルバレスやF・ドゥブロンなどの元メジャーリーガーの先発投手は、台湾やプエルトリコ戦に当ててくるでしょう。特に中南米系の外国人選手が多くない台湾は、ベネズエラの2A3Aクラスの投手陣に苦戦するのではないかと思います。


【参考:今季成績】

【チーム状況】

昨年5月にドミニカ野球連盟(FEDOBE)が、ドミニカ共和国のウィンターリーグ(LIDOM)などの協力を得て『東京オリンピックを目指す!』。そんなニュースが世界野球ソフトボール連盟(WBSC)のサイトで発表された時は、メジャー40人枠以外の3A/2Aに属する元メジャーリーガーやメジャー有数のプロスペクトが勢揃いするのではないか、と期待が高まり、今大会のダークホースと目されるようになりました。しかし、プレミア12のドミニカ共和国代表が発表されたものの、期待したようなビッグネームは不在。結局、メジャー球団との交渉が上手く行かなかった、ということなのでしょうか。

とは言え、アメリカ代表編でも書きましたが、ドミニカ共和国も仮に今回のプレミア12で東京オリンピック出場権を逃したとして、アメリカ大陸予選、さらに最終予選、と五輪本戦への出場権を争う機会はまだ残されています。とは言え、早く出場権を得られるのなら、それに越したことはありません。プレミア12では、同じアメリカ大陸の中で一番良い順位で終えられたチームが出場権を得ます。その中で一番の壁となるのが、オープニングラウンドで対戦するトッププロスペクトだらけのアメリカ代表でしょう。続くスーパーラウンドでは、オープニングラウンドに進出した同じ組のチームとの対戦結果を持ち越すため、オープニングラウンドが開催されるメキシコの地で、何とかアメリカ代表に土をつけられれば、五輪出場の可能性が見えてきます。標高の高いハリスコの球場で乱打戦に持ち込み打ち勝つ。このシナリオがドミニカ共和国代表にとって狙いたい展開でしょう。


【戦力/チーム編成】

まず投手ですが、メジャー通算149勝の元メジャーリーガー、アーヴィン・サンタナ(SP/NYメッツ3A)が一番存在感があります。もしかしたら、今大会に参加している選手の中で最も知名度のある選手かもしれません。恐らく、彼がアメリカ戦に投げるのではないでしょうか?続いて、日本球界からエンニー・ロメロ(SP/中日ドラゴンズ)。今季は8勝10敗 防御率4.26ながら、日本でリリーフから先発に転向しローテーションの一角を担いました。個人的にはヘンリー・ヘンリー(RP/サンディエゴ・パドレス1A)投手が気になっています(名前じゃなくてプレイが見たい、という純粋な意味です)。

野手の方は、アレハンドロ・メヒア(1B/広島カープ)や元・楽天のカルロス・ペゲーロ(RF/LGツインズ(韓国))など、日本球界と馴染みな面子もいますが、個人的にはプロスペクトのエレウリス・モンテロ(3B/セントルイス・カーディナルス2A)のパワーと、ジェラルド・ぺルドモ(SS/2B/アリゾナ・ダイヤモンドバクス1A+)のスピードに注目したいと思います。


【展望】

鍵となるアメリカ代表戦。アメリカが2A~3Aレベルのプロスペクトを集めてきたのに対し、ドミニカ共和国代表は1A~2Aクラスが中心。より原石に近いメンバーが完成度の高いアメリカの選手を相手にどこまで戦えるか。ラテン系選手は一度気持ちが切れると崩れる傾向がありますので、接戦に何とか持ち込み、できれば先制して試合が終盤まで崩れないようにしたい所です。


【参考:今季成績】

※E・ロメロとアダメスだけGO/AO(ゴロアウト/フライアウト率)ではなく、GB/FB(ゴロボール/フライボール率)で表示。

【チーム状況】

アメリカ代表にとって『普通にやれば勝てる』相手が多いのだけれど、普通に戦うのが難しいのも国際試合の醍醐味でもあります。とりわけ、今回のプレミア12はオープニングラウンドが、メキシコ/ドミニカ共和国/オランダといった他の組と比較して強い相手である上に、開催地のハリスコは標高1600m近い高地にあるため打球がよく飛ぶことから乱打戦が予想されます。アメリカ代表がオープニングラウンドで敗退なんてことも、十分あり得るシナリオなのです。ただし、プレミア12で敗けて、仮にここで東京オリンピックへの出場権が得られなかったとしても、来年3月に開催されるアメリカ大陸予選で優勝すれば東京オリンピック本戦には出場できます。更に、アメリカ大陸予選で優勝出来なくても、3位までに入れば、東京オリンピック最終予選への出場権が得られ、最終予選で優勝すればオリンピック本戦には出られます。このように、アメリカ代表にとってはプレミア12以降も、何度もオリンピック本戦へのチャンスが残されているので、流石に全てのチャンスを逸するということは考え難そうです。

とは言え、アメリカ代表以外の選手にとっては、『野球でアメリカを倒す』ことに大きな意味があります。特に、普段アメリカのMLBやマイナーリーグでプレイしている中南米系の選手には、どこかで「アメリカを見返したい」という想いは抱いていると思います。ハリスコは、そういう想いが体現出来る舞台でもあり、オリンピックとは関係なく熱い戦いが見られるのではないかと期待しています。


【戦力/チーム編成】

アメリカ代表のメンバーですが、メジャーリーガーは出ていないとは言え、やはりオリンピックが関係しているだけあって、4年前の前回大会とは比べモノにならない位豪華です。中でも注目は、全米トッププロスペクト(若手有望株)のジョー・アデル(OF/ロサンゼルス・エンゼルス3A)です。メジャー昇格は確実視されており、将来的にスター選手になるよう期待されている選手です。野手には他にも、アウレック・ボーム(3B/フィラデルフィアフィリーズ3A)、ドリュー・ウォーターズ(3B/アトランタブレーブス3A)、アンドリュー・ヴォーン(1B/サンディエゴ・パドレス1A+)など、将来のスター選手候補がずらっと揃っています。

投手の方は、野手と比べるとプロスペクトの選手数はやや少ないですが、逆にメジャー経験豊富な選手もロースター入りしています。例えば、クレイトン・リチャード(SP/前トロント・ブルージェイズ)は、今季メジャーで10先発している普通のメジャーリーガーです。打球が飛びやすいハリスコの球場では、彼のようなグランドボールピッチャーは相性が良いだろうと思います。アメリカ代表の投手編成は、WBCなどでは先発投手が少なくリリーフ投手が多い傾向があったのですが、今回オープニングラウンドを勝ち抜いた後に控えるスーパーラウンド(各オープニングラウンド上位2チームによる総当たり戦)で連戦となるためか、先発が出来る選手も多めにロースター入りさせています。個人的に気になるのは、ダニエル・ティーロ(SP/カンザスシティ・ロイヤルズ2A)です。2017年ロイヤルズからドラフト3巡目で指名を受けた若手で、彼も典型的なグラウンドボールピッチャーで、球質は重そうな感じがしました。彼もハリスコ向きでしょう。日本球界からはブランドン・ディクソン(RP/オリックス・バッファローズ)がロースター入り。彼もグラウンドボールピッチャーですね。


【展望】

前述した通り、メキシコラウンド次第と言えます。日本で開催されるスーパーラウンドに進出できれば、以降は日本以外のチームは対戦相手的に格が落ちてくるので、取りこぼしなく上位に食い込んでくるのではないかと思います。(もっとも、そんな簡単には行かないのが世界の野球だと思います。)初戦の相手オランダは、先発が大ベテラン45歳のロブ・コルデマンス(SP/アムステルダム・パイレーツ)。流石に苦戦する相手ではないと思いますが・・・、果たしてどんな展開になることやら…。


【参考:今季成績】

※B・ディクソンだけGO/AO(ゴロアウト/フライアウト率)ではなく、GB/FB(ゴロボール/フライボール率)。ゴロの方がアウトが獲り易いことから、GB/FBの方がGO/AOよりも数値が低くなる傾向があるので、ディクソンのゴロ率は相当なもの。

今回からプレミア12出場チームの特集/戦力分析をしていきたいと思います。第1回は10/31(木)と11/1(金)に侍ジャパンと対戦するカナダ代表の戦力分析です。


【チーム状況】

今年ペルー/リマで開催されたパンアメリカ大会では、決勝でプエルトリコに敗れたものの準優勝。相変わらずメジャーリーガーが出場しないWBC以外では、実力者っぷりを示すカナダ。今回はそのパンアメリカン大会に出場したメンバーを土台に、何人かマイナーリーガーを加えた陣容で臨んでいます。カナダ代表からすると、もしプレミア12で出場権が獲得できないと、強豪が揃うアメリカ予選に回ってしまいます。むしろ彼らからすれば、プレミア12の方がチャンスが多いと考えているのではないかと思います。オープニングラウンドのグループAでは、アメリカやドミニカ共和国、メキシコといったアメリカ大陸の強豪が潰し合いをしてくれる。また、グループBでは同じアメリカ大陸のベネズエラ、プエルトリコが、優勝候補の日本と同組になったため、少なくとも1組は脱落が予想される。一方でグループCのカナダは、韓国、キューバ、オーストラリアと同組で、割と組合せに恵まれた感じがあり、1次ラウンドは他のアメリカ大陸の国よりもハードルが低い状況です。特にキューバ代表に対しては、パンアメリカン大会でユリスベル・グラシアルやイバン・モイネロ(共に福岡ソフトバンク)などNPB組も召集した本気のキューバ代表を普通に破っています。こう考えると、カナダ代表の視点で見れば、東京五輪の本戦出場のチャンスが一番高いのが今回のプレミア12と見ているのではないでしょうか。


【戦力/チーム編成】

(相変わらずというか)カナダ代表は昔から野手に比べて投手の人材が薄い印象があります。彼らが投手戦をするイメージは無く『打ち勝つ野球』で勝っている印象です。(因みに先ほど触れたキューバ代表との試合も8-6というスコアで勝っています。)

カナダ人選手で多いのは、ファーストかレフト/ライトのポジションの選手が多いです。過去の有名カナダ人メジャーリーガーを挙げてみても、ジェイソン・ベイ、ジャスティン・モルノー、ジョーイ・ボットなど、ファーストか外野の選手は多く輩出していますが、一方でセカンドやショートの人材があまり多くありません。なので、外野には3Aや2A、メジャー経験者などがいる一方で、内野は一線を退いたベテランや引退した選手が守っているケースも珍しくありません。

今回のメンバーでは、4年のメジャー経験のあるダルトン・ポンペイ(CF/トロント・ブルージェイズ3A)、その弟トリスタン・ポンペイ(LF/トロント・ブルージェイズ1A+)、ナイジェリア生まれのデミ・オリモロエ(RF/トロント・ブルージェイズ1A+)の3人に注目しています。3人とも地元トロント・ブルージェイズの傘下でプレイしており、これまでのパワーヒッター系のカナダ代表とはちょっと違った戦い方が出来るのではないかと勝手に期待しています。投手では今季読売ジャイアンツを引退したスコット・マシソン(RP/無所属)や元日本ハムのダスティン・モルケン(RP/ケベック・キャピタルズ(独立リーグ))がいますが、彼らベテランリリーバ―までどのようにつなげるかが課題です。先発1番手になりそうなのはチームで数少ない左腕ロブ・ザストリズニー(SP/LAドジャース3A)、2番手は韓国で活躍するブロック・ダイクソーン(SP/ロッテ・ジャイアンツ)になりそうですが、二人とも速球派ではなく、強打の韓国やキューバ打線をどう抑えるかが鍵となりそうです。特に、フライボールピッチャーのダイクゾーンは相手打者との相性などが気になります。(そのためにも足の速い外野手を3人置いた方がいいのかなぁ、なんて考えながら妄想しておりました。)


【展望】

1次ラウンドは、カナダ、韓国、キューバの3つ巴となりそうですが、カナダがやや有利といったところでしょう。問題は2次ラウンドです。1次ラウンドよりも明らかに強い相手になりますので、苦戦は必至。そんな中で何とか、アメリカやドミニカ共和国辺りがコケてくれれば、漁夫の利でオリンピック本戦獲得・・・、なんて道も見えてくるのではないでしょうか。

【参考:今季成績】


以上

 久々の更新です。先月行われた東京オリンピックの欧州アフリカ予選は、伏兵イスラエルが欧州王者オランダや強豪イタリアを破り、東京オリンピック一番乗りを決めました。同予選2に入ったオランダは、イスラエルの東京行きの切符を譲ったものの、なんとか望みをつないだ形になりました。一方で、オランダのライバル・イタリアは早くも無念の敗退。イタリアとしては、せめて2位にまでに入り東京オリンピックの最終予選には入りたかったところでしょうが予想よりも早い段階で姿を消すことになりました。今回の予選は、欧州上位国同士の戦いではあったものの、非常に混戦となりました。欧州5位のチェコが同3位のスペインを破り、そのスペインは2位のイタリアを破るなど、欧州選手権の”順当な序列”が覆りまくる結果となっています。


得点貢献度で見る注目選手~打者編~

 今回の欧州選手権と東京オリンピック欧州アフリカ予選の2大会の結果を、セイバーメトリクスの指標を使ってみていきました。侍ジャパンと対戦の可能性のある、イスラエルとオランダの選手に注目してみていきたいと思います。まずは、バッターです。

 指標には、『wRAA』と『wSB』を使いっています。『wRAA』は、大会に参加した平均的な打者が同じ打席数に立った場合と比べて暗転得点を増やしたかを示す打撃の貢献度を表す指標です。『wSB』はwRAAの盗塁版で、盗塁による得点貢献度を示しています。細かい計算方法の説明は割愛します。尚、守備の指標は得点換算できるようなスタッツが無いので考慮されていません。

 1位はイタリアの主砲で元メジャーリーガーのクリス・コラベロ(1B/米国独立リーグ)。そして注目は、2位のアデマー・リファエラ(LF/ボルティモア・オリオールズ3A)と6位のヘンドリック・クレメンティーナ(C/シンシナティ・レッズ(1A+))の、オランダ3,4番コンビです。特にクレメンティーナの方は、オランダ代表では比較的選手層が薄いキャッチャーをポジションにしているので、オリンピックだけでなくWBCでも代表入りしてくる可能性があります。ちょっと注意が必要です。

得点貢献度で見る注目選手~投手編~

 続いてピッチャーです。ピッチャーの評価は『FIP』という当サイトお馴染みの野手の守備が関連しない指標から導いた疑似防御率を使い、平均的な投手と比べてどのくらい失点抑制に貢献したかを計算してみました。

 1位はイスラエルのジョーイ・ワグマン(SP/米国独立リーグ)。投手のランキングには、イスラエル、オランダ、イタリアといった実力国の選手が多くランクインしています。打者と比べると投手はベテランが上位にランクインしてきた印象。

 現役マイナーリーガーもそれほど多くなくあまり怖い印象はないものの、やはりイスラエルの投手陣はどこか不気味に映ります…。


SPLITTERランキングを更新

早速ですが、この予選の結果をランキングに反映しました。

 東京オリンピック出場を決めたイスラエルが、かなり過大に評価された感じもしますが、東京オリンピック本戦では一層ユダヤ系アメリカ人選手の召集が進みそうな予感がしています。ダニー・バレンシアのように、つい最近までメジャーリーグで普通にプレイしていた選手が加わるかもしれません。


以上、今回もご覧頂きありがとうございました。



 今更ながらですが、U18W杯における高校日本代表の戦いっぷりを振り返ってみます。分析してみると、プロやU23代表など他の世代の日本代表と共通する戦い方をしていた一方で、日本らしくない(ある意味高校らしい?)戦い方をしていた点が見えてきました。


投手の奪三振は他国と比べて突出

 下のグラフは、各国のアウト(三振、ゴロアウト、フライアウト)とヒット(本塁打以外の安打、本塁打)を割合にしたものです(グラフ内数値は、アウト及びヒットの数)。全体に占めるヒット系(黄緑と深緑)の割合は、ほぼ各国投手の被打率の値になります。

 奪三振(青)の割合に注目すると、高校日本代表の投手陣は他のU18代表チームと比べて如何に高い奪三振能力を持っていたかが分かります。日本代表チームは、WBCなどの大会でも、他の国と比べて高い奪三振率をマークすることが多いのですが、高校日本代表も例外ではなく、他国とは明らかに違うアウトの取り方をしていたと言えると思います。


日本代表の守備は本当に良くなかったのか?

 それでは、三振以外の部分つまり野手の”守備”はどうだったのでしょうか?大会後、優勝を勝ち取ることが出来なかった原因として、『野手の守備の乱れ』を指摘する記事が多く書かれていました。先ほどのグラフの通り、日本代表は三振によるアウト奪取が多かった分、野手の守備機会は他国と比べて少ない方でした。更に、野手によるアウトの数で見ると、ゴロアウトの割合は他国の代表と大きく変わらないのに対し、フライアウトの割合は他国の半分程度しかありませんでした。では、フライアウトが取れてないのは、アウトが取れずヒットになってしまっているのかと言うとそうでもありません。日本代表の投手陣は、被長打数が少なく、外野を超えるようなヒットは比較的少ない方でした。

 まず、伝統的な守備の指標『守備率』を見てみます。守備率はエラーをしなかった割合です。

【各U18代表チーム守備率】

アメリカ 0.981

台湾     0.971

韓国          0.970

日本          0.966

スペイン   0.966

パナマ      0.965

中国         0.960

豪州         0.959

オランダ  0.958

ニカラグア 0.956

カナダ      0.943

南アフリカ 0.896


日本代表の守備率は4番目に良い数値でしたが、今大会で上位に進出したアメリカや台湾、韓国と比べると下回っています。

次にセイバーメトリクス系の指標『DER(守備効率)』です。これは本塁打を除くグラウンド内に飛んだボールをアウトにした割合です。

【各U18代表チームDER】

オランダ  .767

台湾    .735

豪州    .731

スペイン  .726

アメリカ  .707

パナマ   .695

日本    .683

中国    .659

カナダ   .655

ニカラグア .651

韓国    .643

南アフリカ .559


日本代表のDERの値は、参加12チーム中7番手です。一般的にフライアウトよりゴロアウトの方が多いですから、DERには内野守備の方が影響を与えます。守備率の順位、DERの順位、被長打の数は少なかった点、他の国と比べてゴロアウトの割合は変わらなかった点、これらの情報から総合して考えると、やはり日本代表の内野の守備力が優勝した台湾など他の強豪国と比べると若干劣っていた可能性があります。そう考えると、日本の優れた投手陣と内野陣の相性はあまり良くはなかったのかなと思います。


日本代表の攻撃は問題なかったのか?

一方、日本代表の攻撃は問題なかったのでしょうか?月並みですが、まずはOPS(=出塁率+長打率)を見てみます。日本代表のOPSは0.781で大会参加チーム中4番目。ただし、出塁率は0.390で、優勝した台湾に続き2番目に位置しています。

次に塁に出た後の動きを見てみます。下のグラフは、盗塁、犠打、盗塁死の回数を示したものです。日本代表を見てみれば一目瞭然、他国と比べて犠打が圧倒的に多いのが分かります。

 一方で、日本代表の盗塁数が少ないのが分かります。台湾、韓国だけでなく11位の中国も2桁の盗塁数をマークしています。パワーで劣るアジアの国が小技を駆使しているのかと思いきや、アメリカやカナダも盗塁数は日本の倍近くマークしているのです。もちろん、盗塁が失敗すればランナーがいなくなりますので、リスクも付きまといます。一般的に盗塁成功数が盗塁失敗の倍以上マークしていれば、得点期待値としてはプラスに効きます。そうみれば豪州あたりは盗塁死が多すぎて論外ですが、カナダなんかは盗塁11に対し盗塁死0ですから、これは完全に成功例です。

 日本代表の首脳陣が、他の強豪国と比べて盗塁を控え、犠打に頼ったのは完全に”高校野球”の発想です。しかし、日本を代表する打者が揃ったチームで、犠打に頼らなければ得点できなかったのか?少なくとも、日本の野手が他の国と比べて明らかに足が遅いという訳ではなかったと思います。これが1つの高校の話ならば分かりますが、代表の戦い方と1高校の戦い方は違うと思うのです。単刀直入に言えば、もう少し仕掛けても良かったのではないかと思う訳です。

 さらに別の見方をすれば、犠打10ということはイニング数で言うと3回1/3はアウトを献上しているということなので、犠打10はちょっと多すぎだろうと…。


3試合を振り返る

 まず5-1で勝利したカナダ戦。日本代表は1回、2回、3回と全て先頭打者が出塁し、次の打者が犠牲バントを決めています。しかし結果3回までで得点なし。得点した5回と7回は、先頭打者が四球で出塁しますが、次の打者も連続四球で犠牲バントを使いませんでした。

 次に4-5で敗れた韓国戦。この試合はタイブレークで敗れたので、勝敗自体は引分けのようなものでしたが、1回と2回先頭打者が出塁したものの、得点に繋げられなかったのは痛恨でした。この時も1回先頭の森が出塁した後、2番の武岡が犠打で送ったものの、ランナーを返せませんでした。

 1-4で敗れた豪州戦。この時はゴロやフライを量産して打線が沈黙しました。この試合は犠打や盗塁どうこうというより、相手投手に対して力負けしたように見えます。この試合は采配でどうにかなる試合ではなかったかと思います。ゴロアウトやフライアウトを量産してしまうのは、プロの日本代表でも負けパターンです。

 結果論ぽくなりますが、カナダ戦や韓国戦の試合序盤の展開を見ると、早い回からの犠牲バント戦略が試合展開を難しくした可能性があります。特にカナダ戦は3回犠打をしている訳ですから、1イニング分は攻撃のチャンスが減っている訳です。もちろん、これでランナーは進んでいますが、1アウト2塁と0アウト1塁では、その後に得点が入る確率は大きく変わらず、むしろ後者の方が若干高いと言われています。なので、タイブレーク時のように試合終盤での犠牲バントは否定しませんが、序盤からの犠打が有効だったかというと”理屈”だけでなく”結果”から見ても有効ではなかったと言えます。


日本代表の振り返り、まとめると以下の通りです。

1)投手陣は、高い奪三振能力で日本らしさを見せていた。

2)守備は他の強豪国と比べて決して良いとは言えなかった。投手陣と内野陣の相性は良いとは言えなかった。

3)攻撃は盗塁が控えて犠打を多用したが、序盤からの犠打戦略が得点に繋がるような有効な戦略だったかというとかなり疑問が残る。


 U18野球ワールド杯を、どうしても高校野球の感覚で見がちですが、集まっている選手はプロ野球のドラフトにもかかるような同世代のトップ選手です。采配やチーム編成の視点は1つの高校を率いるのとは考え方が違ってくるのだと思いますが、中々普段高校野球で行っている戦い方を変えるのは難しいでしょう。そこで、例えばプロの元スカウトや指導経験のある元プロ野球選手を首脳陣に添えるのも”あり”ではないかと思います。選手の方もプロの考え方を学ぶチャンスですし、良い経験に繋がると思います。もちろん、大人の事情があって現実的には難しいのだろうと思いますが、日本のトップの選手を毎回集めて1回も優勝できないのですから、思い切った策を選択してもいいのではないかと。


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 前回特集した通り、東京オリンピックへの切符がかかった欧州野球選手権で、イスラエルが台風の目になりました。大会を4位で終え、オランダ、イタリア、スペイン、ドイツといったこれまでの4強から、ドイツを5位決定戦に追いやる形となりました。そのドイツは5位決定戦でもチェコに1点差で敗れ、ここ最近コンスタントにメジャーリーガーも輩出してきたドイツが敗退となりました。優勝のオランダは、決勝でライバル・イタリアを破り大会3連覇達成。ということで、今大会の上位5位までに入ったオランダ、イタリア、イスラエル、スペイン、チェコは、東京オリンピックの欧州・アフリカ予選に進出。アフリカ王者南アフリカを加えた6チーム総当たり戦を行い、優勝した1チームが東京オリンピックへの切符を手にします。2位は2020年3月開催予定の東京オリンピック最終予選に回ります。

今大会の結果をまとめると以下の通り。

 オランダとイタリアの2強が決勝に進出したものの、ベスト4のスペイン、イスラエルとは1点差の勝利。スペインはオランダ相手に7回まで0-0でしたし、イスラエルも7回までイタリアに2点リードしていた状況でした。この辺りからも、ベスト4チームの実力は非常に拮抗していると見えます。欧州・アフリカ予選では、今大会の結果は関係ありませんので、より熾烈な争いが繰り広げられるでしょう。


因みに今大会の試合結果を当サイト独自のランキング『SPLITTER RANKING』に反映。

オーストリア、スウェーデン、クロアチアの3カ国を新たに追加。追加組から容赦なくポイントを荒稼ぎした強豪のオランダ、イタリア、スペイン辺りがランキングを上げており、やや過大評価気味に…。


以上、当サイトご覧頂きありがとうございます。

 9月7日から15日にかけて欧州野球選手権が開催されています。ヨーロッパ各国にとってこの大会は、東京オリンピックへの切符を懸けた最初の戦いになります。この欧州選手権の上位5位までに入れば、次のステージである『東京オリンピック 欧州&アフリカ予選』に進出することができます(下のの図参照)。

 戦前の予想では、WBCでもコンスタントに成績を残しているオランダとイタリアの2強と、これに続くスペイン、ドイツ辺りが順当に上位5位以内までに勝ち上がってくると思われています。そして、残りの椅子をチェコやフランス、ベルギー、イギリスなど欧州中堅国クラスが争う形となると思いますが、そこに割って入ってきそうなのが”欧州野球選手権の予選”から勝ち上がってきたイスラエル代表です。


イスラエル野球協会会長のリクルーティング

 イスラエル代表と言えば、2017年第4回WBC2次ラウンドで日本とも対戦したことが、よく取り上げられます。同大会の1次ラウンドでは、韓国、台湾、オランダといった野球の強豪国を倒し『番狂わせ』と報じられていました。ただ、イスラエル代表の実態は、ユダヤ系アメリカ人マイナーリーガーであり、戦力的には1次ラウンドを勝ち抜く可能性は十分あったので、決して『番狂わせ』という程戦力差は無かったのです。

 WBCイスラエル代表がユダヤ系アメリカ人選手を召集できたのは、WBCの出場資格と関係しています。というのも、WBCでは必ずしもイスラエルの国籍を持っていなくても、出生国であったり両親の国籍や出生地が当該国であれば出場資格が得られます。逆に、WBC以外の大会(それこそ東京オリンピックなど)ではその国の国籍を入手する必要があります。なので、WBCに出場したようなイスラエル代表メンバーをそのまま召集することは簡単にはできません。

 そこで登場するのがイスラエル野球協会の会長Peter Kurz氏です。Kurz会長やイスラエル野球協会の面々が積極的に動いて、ユダヤ系アメリカ人選手のリクルーティングや、イスラエル国籍取得に関係組織への協力を呼びかけた結果、欧州選手権に向けて多くのユダヤ系マイナーリーガーを召集することに成功しました。召集できた選手の中には、メジャーで8年間プレイしたダニー・バレンシア(3B/元シアトル・マリナーズ他)のような本当のメジャーリーガーも含まれています。イスラエル代表の選手達も”イスラエルを代表してオリンピックに出場する”ことへのこだわりがあるようで、例えば、WBCにも出場したタイ・ケリー選手は、先月8月にプロ選手として引退しましたが、今月イスラエル国籍を取得しそのまま代表チームに合流しています。キャリアの集大成をオリンピックで迎えたい、という強い気持ちがあるのではないでしょうか。他にも、Jeremy Wolf選手はイスラエルでの野球普及のため、欧州選手権後に同国への移住も考えているとか。選手からフロントまで、イスラエル代表の結束や想い,覚悟はかなり強いように思えます。

 そんな想いで集まったイスラエル代表チームは、戦力的にはWBCの時程の面子は集められていないものの、他の参加チームからすれば十分警戒が必要なレベルの戦力にはなっているようです。


欧州野球選手権の戦力を見てみよう

 そこで、具体的に欧州選手権に参加する強豪4カ国とイスラエル代表の戦力を見ていきましょう。

オランダ代表

 WBCでもメンバー入りした選手を多く揃えるオランダ代表。そもそもWBCでは、野手にメジャーリーガーを多く揃えていたので、投手陣はいい意味でも悪い意味でも戦力維持。超ベテランのコルデマンスやマークウェルも健在で、個人的にはもう少し新顔が見たかった。一方、野手の方は、WBC代表と比べれば現役メジャーリーガーがいない分、ごっそり主力が違う面子になっています。しかし、オランダが他の欧州各国と違うのは選手層の厚さ。メジャーリーガーがいなくとも、多くのオランダ及びオランダ領諸島出身のマイナーリーガーがそれらのポジションに入れることができます。他の代表チームもなるべく多くのマイナーリーガーを召集しようと頑張っていますが2,3人程度。オランダはそれより多くのマイナーリーガーが召集できるのが強みです。投手はオランダ国内リーグ中心、打者はアメリカを主戦場とする選手が揃っています。


イタリア代表

 オランダと双璧のイタリア代表。イタリアの国内リーグ”セリエA”所属の選手中心の構成となっていますが、アメリカでプレイする選手もちらほら。プロ野球初のイタリア人選手だった、アレッサンドロ・マエストリ(SP/元オリックス)がエース格で、WBCブラジル代表経験のあるムリーロ・ゴーベア(RP/ボローニャ)などもロースター入り。打者では、メジャーで225試合の経験のあるクリス・コラベロ(1B/元トロント・ブルージェイズ)や昨年メジャーデビューしたジョン・アンドレオリ(OF/シアトル・マリナーズ(3A))などが、強力打線の中心を担ってくる見込み。


スペイン代表

 スペイン代表は、前回WBCの予選大会に出たメンバーが半分程度メンバー入りしました。投手の中には、元楽天所属のライナー・クルーズなどがいます。スペイン国内リーグ所属の選手が多いですが、結構イタリア・セリエAでプレイしている選手も多く、イタリア代表とは、手の内を知る選手同士の戦いとなりそうです。(もっとも、オランダやドイツとも、ヨーロッパの大会で何度も戦っている選手は沢山いると思いますが…。)

 U18野球ワールド杯ではスペイン代表が、アジアやアメリカの強豪国相手に大健闘しました。戦力的にはオランダやイタリアの方が少し上だと思いますが、スペインのフル代表も頑張って欲しい所です。


ドイツ代表

地元開催のドイツ代表。ドイツ出身のメジャーリーガー、マックス・ケプラー選手(RF   /ミネソタ・ツインズ)今季36本塁打(9月8日時点)を放ち完璧にブレイクした状態になりましたが、彼に続くように近年ドイツ出身マイナーリーガーの数も少し増えてきた印象があります。そんな中マーカス・ソルバックなど、ピッチャーのマイナーリーガーを呼べたのは大きいかなと思います。他の国と比べると国内リーグ(ブンデスリーガ)出身者の比率が高い。


イスラエル代表

そして、今回のテーマであるイスラエル代表です。見てすぐお気づきかと思いますが、「無所属」の選手が多いです。これを見ると「なんだ、マイナーリーグをクビとなった浪人チームか。」と思われるかもしれませんが、どうもそう単純ではないみたいです。イスラエル野球協会のホームページを見ると、現在の所属チームが TEAMイスラエルとなっていました。ラグビーなどでは、選手が協会と契約する形がポピュラーですがそんな感じなのか?イスラエルの場合、欧州選手権には予選からの出場でしたから、代表チーム専任っていう感じなんですかね?まぁ実質、無所属なのかもしれませんが、だからといって実戦から遠ざかっていたりするかというと油断はできません。先月まで現役マイナーリーガーだったタイ・ケリー選手の他にも、ニック・リックレス選手はミルウォーキー・ブルワーズのマイナーチームでコーチをやっていますが、昨年までマイナー3Aクラスでプレイしていましたし、それこそ前述のダニー・バレンシアに至っては、昨年までメジャーリーガーでした。

 因みに、このタイ・ケリーとブレイク・ガイレン(OF/ロサンゼルス・ドジャース(3A))は、第4回WBCのイスラエル代表チームでもスタメン出場していましたし、そこにメジャー引退したてのダニー・バレンシアが構成するクリーンナップはかなり強力だと思います。


 今回特集した5チームは、欧州選手権初日時点でどのチームも勝利して順調なスタートを切っています。特に、イスラエルは一番のライバルになりそうなチェコ代表を破りました。(チェコ代表にも頑張って欲しいので個人的には複雑な気持ちですが…。)WBCでダークホースとなったイスラエル代表が、東京オリンピック予選でも台風の目となるのか?要注目です。


以上、今回も当サイトをご覧頂きありがとうございました。