ARTICLE

 コロナの影響で開幕が延期されていた世界各国の野球リーグが、徐々に再開される動きが本格化してきました。日本のプロ野球もようやく再開し、無観客の寂しさはあるものの漸く3か月遅れの球春(?)が到来となりました。一方で、海を超えたメジャーリーグの方は、球団と選手の折り合いが中々ついていないようで、開催が不透明な状態が続いています。

 一方、メジャー傘下マイナーリーグの球団数を削減するという話が去年話題になり、今年4月になって、MLBとマイナーリーグの間で現在のマイナー球団数160チームから120チームへの削減に合意されるという報道がありました。背景には、マイナーリーガーの待遇の改善、長距離移動の負担低減といった目的があるようですが、これはアメリカのマイナーリーグが独立採算であるが故に起きている問題とも言えます。


マイナー球団削減

 そもそも「MLBとマイナーリーグの間で」と書きましたが、マイナー球団は地元の独立資本のチームなので、MLBとは別々の組織になります。なので、マイナー球団が提携先のメジャー球団を変更するケースもよくあります。メジャー球団は放映権という莫大な収入源を持っていますが、独立採算のマイナー球団では、彼らの収入の多くがチケット代やグッズや物品販売などスタジアムでの消費されるものの売上が多くを占めています。そうすると、観客数の少ない球団ほどマイナーリーガーの待遇は厳しくなる訳で、観客動員数はレベルが下がる程少なくなっていきますから、今回のマイナーリーグの球団数削減の対象も、底辺となる1Aショートシーズン以下になっています。以前特集した『世界の平均観客動員数ランキング~2019~』を見ていただければわかる通り、やはりマイナーリーグのレベルによって観客動員数にも差が出てきます。3Aでは1試合平均7千人弱、2Aでは平均4~5千人程度を集客しているのに対し、1Aショート以下では1~3千人くらいです。その分球団の売上も少なくなる訳で、球団経営を成り立たせるにはコストを抑えるため選手の待遇も抑えざるを得なくなります。日本のプロ野球のように、トップの球団が2軍3軍ファーム組織を丸抱えしてくれる場合、球団トータルで収支が取れていれば、このような問題が起こることはなくなります。なので、メジャー球団がサポートを入れるというのも手段な一つのように思いますが、”言うは易し”で実際やろうとすると色々と難しい課題が出てくるのかもしれません。


世界の野球への影響考えてみた

 では1A-やルーキーリーグ球団が無くなるとどうなるか?考えてみました。(因みに、あくまでメジャー球団との提携が無くなる、という意味であって、チームによっては独立リーグのような形で存続するチームも出てくるかもしれませんが、ルーキーリーグには球団直営の所もありますし、選手の受け皿(枠)は明らかに少なくなるでしょう。)今回解雇される選手というのは、年齢が20代後半に差し掛かっていて将来性が望みにくい3A/2Aクラスの選手とか、元々削減対象の球団に所属していて伸び悩みの傾向が出ている20歳前後の若手選手だろうと思われます。”エイジングカーブ”という形で年齢に伴う成績の落ち込みが数値化されてしまっていますから、元々年齢にシビアなメジャー球団らは兎に角将来性が低いと思った瞬間にばっさりクビにします。そうすると、残ることが出来た選手が上のレベルで空いたポジションを埋める形で昇格することになります。それまで、3Aからルーキーリーグまで6つのプレイレベルに階層分けされていたものが、4つ(3A/2A/1A+/1A)に減るので、1つのレベルの選手のプレイレベルのバラつきが若干大きくなるのではないか?と思われます。なので例えば、削減前だったら1A-やルーキーリーグでプレイするレベルの選手が1Aというステージで戦うことになる訳ですから、削減前だったら対戦することの無い相手と戦う機会が出てくることになりますので、ここから上のレベルに昇格することが以前より難しくなるだろう、と予想されます。もちろん、メジャーに昇格するには、いずれRk→1A-→1A→1A+、、、と昇格していかないといけないので、結局後で対戦しなければならないのですが、育成の段階を踏むステップが荒くなります。この結果、1Aに入団したての選手にとっては成績を出し難くなるのではないかと思います。

 そうすると、大変なのが野球後進国出身のプロスペクト(若手有望株)選手でしょう。メジャーのスカウト網は世界中に広がっているので、欧州などの野球後進国にいるプロスペクトもメジャー球団とマイナー契約を結んだ後は、ルーキーリーグからキャリアをスタートします。野球後進国出身の選手は、アメリカという異なる環境への適応というハンデも抱えているので、同国出身の選手と比べて超えるべきハードルが多くあります。更に、野球強豪国のドミニカ共和国やベネズエラといった国ならば、その辺のノウハウは先輩メジャーリーガーから色々聞かされているでしょうからまだ有利ですが、後進国はそもそも選手数が少ないのでよりハンデの大きい環境にあります。なので、ここにマイナー球団数の再編で昇格のハードルが高くなれば、削減前よりも野球後進国からスタープレイヤーが誕生する可能性が低くなるのではないか?と思うのです。


日本野球への影響

 マイナー球団の削減により、1Aショート以下の選手の見切りが早まるでしょうから、中にはまだ才能を残しているダイヤの原石もいるだろう、と。そうすると日本のプロ野球球団との契約を目指して、来日してトライアウトを受けたいというラテン系の選手も増え、中には掘出しモノがいる確率も増えてくるような気がします。メジャーリーグとプロ野球では外国人選手に求められる基準が違いますから、日本の野球なら合う選手はいるでしょうし、プロ野球球団にとってもこの流れは若干プラスに働くはずです。(あくまで”掘出しものが見つかる”可能性なので、影響は”若干”でしょうけど。)

 一方、野球後進国の選手からすると、強豪国出身の野球選手がアメリカだけでなく日本野球も流れるので、日本もより狭き門になるかもしれませんが、それでも日本でプレイしたいと思う選手は増えるような気がします。というのも、野球後進国の選手からしたら、今まで野球のキャリアを積むならばアメリカか、アメリカがダメなら母国に戻るか、という選択肢が大半で、文化の大きく違うアジアの野球への関心はそこまで高くないのではないかと思います。でも、今コロナの影響でMLBの試合が開催されていないため、アジアのプロ野球のプレゼンス,存在感が高まっています。これは今年に限った話だけでないですが、近年のFA市場の停滞により、オリックスにアダム・ジョーンズという大物が来日したようにメジャーでも実績のある選手が獲得されるようになっていますし、カーター・スチュワートJr(SP/福岡ソフトバンク)のようなプロスペクトが日本を選択したことは大きな意味があります。一方、韓国ではアディソン・ラッセル(SS/前シカゴ・カブス)がキウム・ヒーローズと契約しましたが、裾野の小さな韓国と比べれば、自分の実力を証明するチャンスや舞台が沢山あるのは日本なので、まだこれからキャリアが望める選手からすればアジア野球の中での選択肢は日本ということになるでしょう。特に投手ならば、マイルズ・マイコラス(SP/元読売)やトニー・バーネット(RP/元東京ヤクルト)のように、メジャー球団と契約するチャンスもあるかもしれません。彼らからすれば、アメリカへのキャリアが閉じてしまう訳ではないということですね。

 なので、例えば野球後進国の若手有望の投手が、四国ILやBCLなどの日本の独立リーグに来てもらってそこで活躍し、日本のプロ野球球団と契約なんかしたりしたら、(ちょっと妄想始まっていますが)これは新たな成功モデルになるのではないでしょうか?さらにその選手の活躍が、母国での野球発展に繋がると嬉しいですね(妄想出来上がり)。


韓国や台湾は影響あまり無い?

 韓国はメジャー~3Aの外国人選手を獲得するのが主なので、マイナー球団の削減よりもFA市場の動向の方が、外国人選手の獲得に影響が大きく出るような気がします。

 気になるのは台湾の方です。まず、マイナー球団削減前の状態を振り返ります。日本や韓国と比べると球団の予算が少なく外国人選手に払える給与が少ないので、日韓のようにバリバリのメジャーリーガーをすぐ獲得する、という現象はまだ起きていませんが、いち早く台湾プロ野球(CPBL)を再開したことでアメリカでの認知度は高まりました。マイナー球団の削減の影響は、台湾出身の野球選手(いわゆる”海外組”)に影響が出ているのでるのではないか、つまりアメリカから台湾に戻ってくる海外組が増えるのではないか?と思います。これがCPBLに良い影響となって出てくれれば良いのですが…。

 一方でメキシカンリーグ(LMB)は、買い手(球団)が強くなるので選手獲得がし易くなるのではないでしょうか?カンナムリーグの消滅で、アメリカ独立リーグも再編の動きを出している中、観客動員が停滞するメキシカンリーグでも同じ流れが出てくるかもしれませんが、そもそもメキシカンリーグの方がメジャーリーガーの受け皿っぽいイメージがありますし、実際そうなっていると思います。メジャーリーグの再開の道筋が見えないなかで、メキシカンリーグが彼らより早く開催できれば、その立場を利用して更により良い選手を獲得できると思います。メキシカンリーグの球団は、メキシコ出身以外の選手に対し”育成”という視点でみることはあまり無いだろうと思いますから、低いクラスのマイナーリーガーにとってはメキシカンリーグへの道はちょっと厳しいのかもしれません。

 なので他の国と比べると、独立リーグなど裾野が広い日本の野球界が一番の受け皿になり得るのではないかと思います。


マイナー球団削減はやっぱりマイナス

 でも結局の所、この1A-やルーキーリーグのマイナー球団の削減は、アメリカの野球マーケットの縮小を意味しているので、必ずしも野球にとっていいことかと考えると、マイナスの方が大きいように思えてなりません。既述の通り、1Aショート以下の1試合平均観客動員数が1~3千人程度と書きましたが、実はサッカーJリーグの3部J3の平均観客動員に近い数値です。1Aショートはサッカー風に言えば『5部リーグ』に該当しますから、野球の方が試合数も多い中でこれだけの観客を集めているということは、かなり凄いことだと思います。日本のプロ野球の2軍でも、観客動員はこれより少ない所も普通にありますからね。

 なので、マイナー球団の世界の野球への影響というテーマで考察してみましたが、選手のプレイ機会という意味では、アメリカ国外に受け皿はそれなりにあるのかもしれません。しかし、経済的な観点で見ると、アメリカで集めていた程の観客が集めることははっきり言って難しいしょうから、マーケットとしての縮小にはなるでしょう。5部リーグ相当で、ここまで集客が出来ているのは、月並みの言葉ですが、”地元密着”の経営の元『オラが街の球団』として築かれた土壌があるからこそ成り立っているのでしょう。これが1年くらいで消滅の危機に瀕してしまうのはあまりに勿体ない気がします。なので、延命という形でもいいので、やっぱりメジャー球団のサポートをしてでも球団運営を維持すべきだと思います。


まとめ

長文になってしまったので、以下まとめです。

・球団数が減る分、3A2Aへの昇格への道のりは厳しくなる。

・コロナ影響も相まって(特に野球後進国出身の)選手にとって、裾野の広い日本野球のプレゼンスは高まる。日本発の野球後進国への発展に期待したい。

・日本も凄いけどアメリカのマイナーリーグのマーケットの裾野はさらに凄い。これを短期間のうちに無くしてしまのは非常に勿体ない!

~以上~




 4回に渡りオランダ国内リーグ『Honkbal Hoofdklasse』の特集をしてきましたが、最終回はこれまでの攻撃・投球・守備の評価をまとめた総合力を評価したプレイヤーズランキングを見ていきたいと思います。プレイヤーズランキングの基準は、攻撃はwRAAとwSB、投球はRSAA(FIPベース)、守備はRRF守備得点というセイバー系の得点指標を用いました。各指標の合計値は、その選手が同リーグの平均的な選手に対して何点分の得点貢献をしたのかを表します。


PLYAER's RANKING'19!

 早速ベスト3から見ていきましょう。


1位 ギルマー・レジナード・ランぺ Total 22.8 pt

(打撃 +22.3/盗塁+1.3/守備▲0.8)

 wRAAでリーグトップの+22.3ptをマークしリーグMVPも獲得したレジナード・ランぺ(OF/L&Dアムステルダムパイレーツ/アルバ出身)が、プレイヤーズランキングのNo.1を獲得しました。守備は平均的なスタッツですが、打撃による得点貢献が大きくランキングNo.1の要因となりました。


2位 デンゼル・リチャードソン Total 21.1pt

 (打撃 +19.7/盗塁+1.6/守備▲0.2)

 ランキング2位は、ランぺと同じく打撃による貢献度の大きかったデンゼル・リチャードソン(CF/L&Dアムステルダムパイレーツ/シント・マールテン島)です。ランぺよりも年齢が若く、盗塁による得点貢献もランぺより高いですが、打撃系スタッツが僅かに届かず2位となりました。ランぺ以上の打席数を与えられていたら、1位と2位が入れ替わっていたかもしれません。


3位 ラース・ハイヤー Total 20.0pt

 (投球 +19.8/守備∔0.2)

 3位にランクインしたのは2019年シーズンのリーグ最優秀投手に選ばれたラース・ハイヤー(SP/ホーフトドルプ・パイオニアーズ/オランダ本国)です。シアトル・マリナーズのプロスペクトだったハイヤ―は現在25歳。2位のリチャードソンも同じく25歳で、本人にその気があるかわかりませんが、年齢的にはまだ上位のリーグで活躍するチャンスがあってもいい年齢かなと思います。昨年のプレミア12では、将来のメジャーリーガー候補だらけのアメリカ代表と対戦。最後は一発を浴びてしまいましたが、トッププロスペクトのジョー・アデル(CF/ロサンゼルスエンジェルス)から三振を奪っています。


続いて、4位以下含めたランキングトップ20は以下の通りです。

4位にはオランダ代表の常連で高い三振率をマークしたオーランド・イェンテマ(SP/キュラソー・ネプチューンズ/ドミニカ共和国)。守備指標でNo.1に輝いたルエンドリック・ピテルネッラ(RF/HCAW)は打撃スタッツはリーグ平均レベルで、ほぼ守備の貢献だけで11位にランクインしています。

 ポジションで見ていくと、捕手のNo.1はロドニー・ダール(C/HCAW)が攻撃と守備両方の面で高い得点貢献値をマークしていました。また、オランダ代表のメジャーリーガーがポジションかぶりして交通渋滞を起こしている二遊間ですが、セカンドでNo.1のベンジャミン・ディール(2B/キュラソー・ネプチューンズ)は全体で6位。またWBC’17オランダ代表のスティン・ファンデル・ミール(SS/キュラソー・ネプチューンズ)がショートでNo.1を獲得し、全体では17位でした。彼らがメジャーリーガーだらけのWBCオランダ代表に割って入るのは至難の業ですが、東京オリンピックの予選や次回プレミア12などではチャンスがあると思いますので、何とか頑張ってもらいたいものです。

 個人的に一番注目したい選手はピテルネッラですね。年齢的にも若くアメリカ進出を希望しているようですので、ディディ・グレゴリアス(SS/フィラデルフィアフィリーズ)のように、オランダ国内リーグ出身の選手として、アメリカで活躍していってもらいたいものです。


最後に20以下の注目選手をピックアップしてみました。

 日本の独立リーグ琉球ブルーオーシャンズに復帰した吉村裕基は全体33位。打撃よりも守備での貢献度が高かったという結果でした。また、オランダ代表の常連で、昨シーズの最優秀投手だったディエゴマー・マークウェルは全体32位でした。同じくオランダ代表常連のシャーロン・スコープ(ジョナサン・スコープの兄)は全体38位でした。


と言う訳でフーフトクラッセ特集完結です!ありがとうございました。

~以上~


 オランダ国内リーグ”フーフトクラッセ”特集の第3弾は打撃スタッツです。WBCオランダ代表の打線は、アメリカで活躍するバリバリのメジャーリーガーだらけではありますが、彼らに割って代表入りするような打者が果たしているのか?早速Batting Statsを見ていきましょう。打撃評価として用いるのはwRAA(=Weighted Runs Above Average) です。wRAAは『同リーグの平均的な打者が同じ打席数立った場合と比べてどれだけ得点を増やしたか?』を表す指標です。このwRAAは、wOBA(=Weighted On-Base Average/加重出塁率)という『打者が1打席あたりにどれだけチームの得点増に貢献したか?』を表す指標で、出塁率と同じ位のスケールになるような計算式になっています。そしてwRAAは、その選手のwOBAがリーグ全体のwOBAに対してプラスかマイナスか?と、どれだけ打席数に立ったかで計算されています。(計算式の詳細はこちらを参照ください。)


wRAAランキングNo.1はP12代表選手

 第1位はレジナード・ランぺ(OF/L&Dアムステルダムパイレーツ)でwRAAは+22.3ポイントでした。プレミア12ではオランダ代表に選出されていますが、その時は”ギルマー・ランペ”とも紹介されています。プレミア12ではチームと同様に目立った活躍は出来ませんでしたが、国内リーグでは打率.382/OPS 1.097 という素晴らしい成績でした。ランぺに続いたのは、同じアムステルダムのチームメイトのデンゼル・リチャードソン(CF/L&Dアムステルダムパイレーツ)です。珍しいシント・マールテン島出身の選手で、打率.388/OPS1.078と首位のランぺに遜色ない成績を残しています。ランぺと比べてwRAAが若干少ないのは、打席数の差だけで”率”系はほとんど同じと言えるでしょう。3位にはオランダ代表の常連ドウェイン・ケンプ(3B/キュラソー・ネプチューンズ)が入っています。また、12位にはWBCオランダ代表のスティン・ファンデル・ミール(SS/キュラソー・ネプチューンズ)、16位にこれもWBCオランダ代表のシャーロン・スコープ(SS/L&Dアムステルダムパイレーツ)がランクインしています。

 投手のセイバー指標RSAAのランキングでは、中堅~下位チームからもランキング上位に入ってくる選手が割といましたが、打撃のwRAAランキングでは、キュラソー・ネプチューンズとアムステルダムパイレーツの2強の選手の占める割合が多いようです。また、リーグ全体に言えることですが、本塁打の数が少ない。42試合で最多HRが6本ですから、NPBの144試合に換算してもHR20本程度にしかなりません。

 次に各打者の特徴を示すスタッツを見ていきます。全体的にランキング上位の選手はBB%(四球率)が高いですね。そんな中、ドウェイン・ケンプ選手のスタッツは目立ちます。三振が少ないが四球も少ないタイプで、上位の選手の中では異質な感じがします。それにしてもSO%が2.1%というのは異常です。(データ間違っているのではないか?と思いましたが合ってました。)また、1位のレジナード・ランぺ選手と2位のデンゼル・リチャードソン選手はBABIPがなんと4割越え。BABIPは3割前後で落ち着く傾向がありますので、昨シーズンの成績は”出来すぎ”の可能性が高いです。ただ、そんなBABIPの結果は関係なく今後も活躍して、メジャーリーガーひしめく層の厚いオランダ野手陣に割って入っていってもらいたいものです。


ついでにwSB(SPEED)ランキング

 おまけに盗塁能力のランキングも見ていきましょう。盗塁はwSB(=Weighted Stolen Base Runs)というセイバー系指標を見てきます。wSBは『リーグ平均的な盗塁能力をもった走者と比べて何得点分貢献したか?』を表す指標です。計算内容を超ざっくり説明すると、盗塁1に対し盗塁死を▲2の割合で評価したものです。結果は以下の通り。

 盗塁力キングはオリバー・ファン・デ・ワイス(2B/HCAW)で盗塁23でした。盗塁数自体もリーグトップですが、その成功率も非常に高いものでした。打撃スタッツ3位のドウェイン・ケンプが盗塁力ランキングでも2位に入っています。首位ワイスとの差は盗塁1つだけでした。


次回はこれまでの総集編ということで「フーフトクラッセ2019 プレイヤーズランキング」です。

~以上~

 前回(オランダ野球 Hoofdklasse 守備指標ランキング)に続き、今回は投手指標のランキングです。投手の評価は、奪三振、与四球、被本塁打などの野手の守備が関与しないスタッツから計算する疑似防御率 FIP (Fielding Independent Pitching)を使います。そして、このFIPをRSAARuns Saved Above Average)という指標も掛け合わせた『RSAA(FIP)』を最終的な投手評価として採用します。RSAAとは、ある投手が登板した時に同リーグの平均的な投手が同じイニング数を投げた場合と比べてどの程度失点を防いでいるかを示す指標です。RSAAは本来失点率を使うのが一般的ですが、失点率の代わりに防御率ベースのFIPを用いることで、守備の影響を除いた失点抑制の貢献度を測ります。

 RSAA(FIP) = (リーグ平均防御率-FIP) ✕ 投球回 ÷ 9


No.1はHuijer,注目は3位 Robberse

早速ランキングを見ていきましょう。

 トップはラース・ハイヤー(SP/ホーフトドルプ・パイオニアーズ)でした。パイオニアーズ所属ということで、キュラソー・ネプチューンズとL&Dアムステルダムパイレーツの2強を相手にしなければならない状況で見事な成績と言えます。2位はオランダ代表のベテランオーランド・イェンテマ(SP/キュラソー・ネプチューンズ)。そして3位はなんと昨年17歳だったセム・ロバース(SP/クイック・アメルスフォールト)。最年長はご存知オランダ代表のレジェンドロブ・コルデマンス(SP/L&Dアムステルダムパイレーツ)で6位。ロバースとの年齢差は実に27歳差でした。3位のセム・ロバースは、同じく17歳のジオルジェニー・カシミリ投手と共にトロントブルージェイズとマイナー契約を結んでいます。この成績を見るとメジャー球団のスカウトから声がかかるのも納得がいきます。

 一方で、イェンテマやコルデマンスだけでなく、7位ジム・プローガー(SP/L&Dアムステルダムパイレーツ)、8位J.C.スルバラン(SP/DSS)、12位ディエゴマー・マークウェル(SP/キュラソー・ネプチューンズ)ら、WBCオランダ代表メンバーも上位に入ってきていますが、もう少し20代の選手が入ってきてもいいような気がします。

 次に各投手の特徴を表すスタッツを集めてみました。

 首位のハイヤー投手は、投球数の少なさを表すP/IPでも1位を獲得しています。2位のイェンテマ投手は、奪三振率SO/9でトップの11.0をマークしています。そして先ほどのセム・ロバース投手は、与四球の少なさも優秀ですがGO/AO(ゴロアウト/フライアウト率)の値が2.64と非常に高く、国内リーグではグラウンドボールピッチャー化していたことが分かります。いかにも安定化のありそうなスタッツですね。

 次回は打者編です。

~以上~

 毎年オフシーズンに、世界中で多くのプロ野球選手が戦力外の通告を受けますが、特にアメリカマイナーリーグの首切りはえげつなく、まだまだ20歳前半の歳の若い選手でも容赦なくバシバシ見切りをつけています。その光景を見ては『まだもうちょっと様子見てみないと華が開くか分からないのではないの?』と思ったりします。例えば、NPBで育成契約を結ぶドミニカ共和国などのラテン系外国人選手の中には、一度マイナーリーグをクビされている選手がたくさんいます。彼らがプロ野球の1軍でもそこそこ活躍している様子を見ると、マイナーを解雇されたような選手の中にも、まだまだ才能が発揮できていない選手が結構いるのではないかと思えて仕方がありません。特に最近はマイナーリーグの球団数を削減するなんて話も出てきていますので、もし実際にそうなると解雇される選手が大量に発生し、彼らがアメリカ独立リーグや世界各地のリーグに散らばっていき、その中には隠れたダイヤの原石がいるのではないかと妄想したりします。


オランダ国内にも原石がいるのでは?

 そして、ヨーロッパからも多くのマイナーリーガーが輩出されていますが、彼らも容赦なくまだ若い年齢で見切られるケースが多いように思います。昨シーズン、オランダの国内リーグ『Honkbal Hoofdklasse(フーフトクラッセ)』で、圧倒的な成績をマークしたラース・ハイヤー投手(SP/ホーフトドルプ・パイオニアーズ)も、彼が21歳の時にリリースされています。解雇される前のマイナーリーグ時代の成績を見れば、1A以上の防御率が4点以上なので、まぁリリースされても仕方がないスタッツに見えますが、オランダ帰国後は防御率が2点前後。昨シーズンに至ってはなんと0.77!圧倒的な成績でした。奪三振率SO/9 はマイナー時代 5.5⇒オランダ国内 10前後。与四球率BB/9はマイナー時代 4前後⇒オランダ国内 2点台と、このようにアメリカとオランダでは別人の成績になっています。このフーフトクラッセの成績を見る限り、オランダリーグよりも1つ上のレベルでプレイしどこまで通用するのか見てみたい気がします。

 ということで、少し話は逸れましたが、フーフトクラッセの中にも埋もれた才能がいないか調べるため、昨年のオランダ国内リーグのスタッツをセイバーメトリクスを使い倒して分析してみました。


ボックススコアだけでもこれだけ出来た

 フーフトクラッセでは、野球先進国のアメリカやアジアのプロ野球とは違って入手できるデータ量は当然少ないです。ただ、ボックスコアのデータはありますから最低限 古典的なセイバー系指標は入手し計算できます。また、オランダリーグの場合、欧州野球連盟(CEB)のフォーマット形式でのボックススコアが全試合記録がありますので、刺殺や補殺といった守備関連の基本データも頑張れば入手することもできます(相当”頑張り”ましたが・・・)。今回は、折角苦労して守備関連のデータを集めたので、守備系のセイバー指標から見ていきたいと思います。


RRF守備得点ランク

 守備の評価は、"日本プロ野球RCAA&PitchingRunまとめblog"さん(https://ranzankeikoku.blog.fc2.com)の Relative Range Factor(以下、RRF)を使った守備得点による評価方法を使いました(注1)。数値の意味は『同じポジションの平均的な選手と比べて何点分失点を防いだか?』を表しています。早速、各ポジションのベスト3を見ていきましょう。

 オランダ人選手は、代表クラスの選手ぐらいしか詳しく知らない筆者からすると、守備指標のランキングは聞いたことの無い選手のオンパレードでした。Youtubeで選手の動画を調べてみようとしてもほとんど検索に引っ掛からないので、このRRF守備得点の結果が正しいのか分かりませんが、あくまで”客観的に計算してみた結果こうなりました”という風に捉えて頂ければと思います。もっとも、"日本プロ野球RCAA&PitchingRunまとめblog"さんのサイトに出ているNPBのRRF守備得点の結果を見る限り、「守備の上手い」と言われる選手がちゃんと上位に来ていますので、イメージと合う計算結果は出ているはずです。多分。

 ということで、素人なりに中身を見ていきます。まず、目につくのは昨シーズンオランダリーグでプレイした元横浜&ソフトバンクの吉村裕基選手(3B/現 琉球ブルーオーシャンズ)でしょう。所属したデ・フラスコニンフ・ツインズでは、サード以外にショート、レフト、ライトを守り、ユーティリティっぷりを発揮しています。同じくデ・フラスコニンフに所属した小野寺祐人投手は、東北学院大学出身の投手で今季から東北楽天ゴールデンイーグルスの打撃投手を務めています。

 名字から気になった選手をピックアップすると兄弟ネタが結構ありました。Tyriq Kemp(2B/キュラソー・ネプチューンズ)は、オランダ代表のドウェイン・ケンプ(3B/キュラソー・ネプチューンズ)の弟です。兄のドゥウェインが、サードでリーグワーストのRRF守備得点▲4.7ポイントをマークしているのに対し、弟はセカンドでリーグ3位の+3.6ポイントなので実に対照的です。しかも、兄が全42試合出場しているのに対し、弟はわずか9試合で+3.6ポイント。各ポジションのベスト3入りした全選手の中で、出場試合数が1桁なのはこのケンプ弟だけです。もちろんサンプル数の少なさが故に出来すぎたスタッツになっている可能性もありますが、少なくともこのデータは非常にポジティブな結果です。他に兄弟ネタでは、ショートでNo.1となったBob van der Meer(SS/HCAW)は、WBCオランダ代表スティン・ファンデルメール.(SS/キュラソー・ネプチューンズ)の弟です。兄スティンのRRF守備得点が+3.3ポイントに対し、弟ボブは+9.6ポイントなので守備では兄貴越えを果たしています。打撃スタッツは兄の方が上ですが、兄弟そろって長打力はないのであまり大差はないように見えます。

 最後に全ポジションの守備得点合計値のランキングを見ていきます。

ライトでNo.1だったRuendrick Piternella(RF/HCAW)が、フーフトクラッセのNo.1を獲得しました。佐々木朗希(SP/千葉ロッテ)や奥川恭伸(SP/東京ヤクルト)らが参加した2019年のU18 野球W杯で、オランダ代表の四番を務めた選手です。(因みに既述のKemp弟も同じチームメイトでした。)U18野球W杯ではセンターを守っていましたが、18歳にしては凄いガタイをしていてセンターのイメージには似つかわしくない体つきでした。なのでライトというのは納得です。また、Piternellaは、刺殺評価(≒守備範囲)でもリーグ1位、補殺評価(≒肩)でもリーグ1位を獲得しており、外野でNo.1の結果でした。オランダのプロスペクトってところでしょうね。

 ということで、次回以降オランダリーグ フーフトクラッセの打撃スタッツと、投球スタッツを分析していきます。最終的にはプレイヤーズランキングも作られれば、、、と思います。


(注釈1)

尚、得点係数などは計算できないので、日本の係数をそのまま使用しました。また、めちゃくちゃマニアックな話になりますが、係数の話以外にも①守備イニング数が分からない、②1試合の中で複数のポジションを守った場合のデータが分けられていない、など、細かい所でデータが無いという課題があったのですが、そこは割り切りということで次のように対応しました。①守備イニングの件は守備機会で代用。②1試合中の複数ポジションの件は、単独の守備位置データから刺殺数や補殺数の比率を計算し、強引に各ポジションに割り振りしました。まぁ、複数ポジションのデータは全体の1割以下なのであまり大きな影響はないと思います。

 今回の代表チーム特集は、すっかり野球強豪国の印象が定着してきましたオランダ代表を分析してみたいと思います。オランダ代表と言えば、第2回と第4回のWBCでの活躍が印象的です。第2回WBCでは、優勝候補のドミニカ共和国代表を2度に渡り破り、WBC史上最大とも言えるジャイアントキリングを達成しました。また、第4回WBCでは2次ラウンドで小久保監督率いる侍ジャパンと対戦。試合後の指揮官が「死闘」と評する程、野球日本代表の歴史の中でも名勝負に数えられるような試合、そのの対戦相手こそがオランダ代表でした。バリバリのメジャーリーガーが何人もいるオランダ代表の重量級打線は、侍ジャパンの投手陣だけでなく、世界の強豪国にとっても脅威となっています。

 

オランダ領アンティルの存在

 国際野球に詳しい方ならば、オランダ代表と言えば「オランダ領アンティル」出身選手の話を今更取り上げる必要もないと思いますが、一応触れておきましょう。オランダ領アンティル(~2010)は、カリブ海の小アンティル諸島にあったオランダを構成する自治領です。現在はキュラソー島、アルバ、ボネール島、シント・マールテン島といった自治領又はオランダの構成国に分かれていますが、キュラソー島やアルバでは他のカリブ諸国同様に野球が盛んなことで知られています。しかし、キュラソー島の人口が約15万人、アルバが約10万人と人口が非常に少ないのにも関わらず同地域からは何人ものメジャーリーガーを輩出しており、その”輩出率”は最も多く”外国人”メジャーリーガーを輩出しているドミニカ共和国を上回り、『世界一のメジャーリーガー輩出率』を誇る地域として知られています。

 

オランダ代表の戦力構成

 こちらも国際野球通の方ならば良くご存じの話かと思いますが、WBCなどでのオランダ代表の戦力は、野手は主にMLB傘下のメジャーリーガーを中心とした打線、投手はオランダ国内リーグ”Hoofdklasse”のトップ選手により構成されています。ただし、近年投手側の主力だったオランダ国内の選手の世代交代がうまく進まず、戦力の低下が顕著になってきています。1980年代生まれディエゴマー・マルクウェル、トム・スタイフベルヘン、オルランド・インタマ、JC・スルバランなどが未だに代表入りしていますが、昔と比べると衰えが出て踏ん張りが効かなくなっ来ている印象で、ジャイア・ジャージェンス(SP/元アトランタブレーブス)、シャイロン・マルティス(SP/元ワシントン・ナショナルズ)といったメジャー経験組にも限界が見えてきており、今後も彼らに頼る訳にはいきません。

 一方で野手の方は、2018年にブレイクしたオジー・アルビーズ(2B/アトランタブレーブス)のように、まだまだアンティル諸島から有望株が出続きそうな雰囲気もあり、打力に対して投手力の低下が深刻になっていきそうな状況です。


最新のオランダ代表戦力を分析してみた

 次に最新のオランダ代表の戦力を分析するため、現在メジャーリーグ球団に所属している選手を分析してみたいと思います。

 まずは野手です。下のグラフの見方ですが、縦が年齢で、横が各ポジション、そして円の大きさはWARや所属マイナーレベルを参考にした選手の”レベル”を表しています。また、円の色分けは出身地域を表しています。

 見ての通り、セカンドやショートにメジャー級のタレントが集中しています。メジャー随一の守備力を誇るアンドレルトン・シモンズ(SS/ロサンゼルスエンジェルス)、ヤンキースの正遊撃手だったディディ・グレゴリアス(SS/フィラデルフィアフィリーズ)4シーズン連続20本塁打以上をマークしているジョナサン・スコープ(2B/デトロイトタイガース)などのピークを迎えた30歳前後の世代に加え、オジー・アルビーズやカーター・キーブーム(SS/ワシントン・ナショナルズ)といった20代前半の世代も台頭してきており、二遊間が完全に交通渋滞を起こしています。そうなると、メジャーでもトップレベルのザンダー・ボガーツ(SS/ボストン・レッドソックス)を、1つ右の列にずらして代表チームではサードを守ってもらおうという考えは理解できる話ですね。また、マイナーリーグ時代はメジャーでも有数の遊撃手になるだろうと思われていたジュリクソン・プロファー(UT/サンディエゴ・パドレス)が、ユーティリティープレイヤーとして成長したことは当時のテキサスレンジャースからすると誤算だったかもしれませんが、オランダ代表チームにとってはチーム編成上助かったのではないでしょうか。


 しかし、何故ここまで二遊間ばかりに優秀な人材が偏るのでしょうか?その要因は色々あると思いますが、恐らく同国においても”二遊間が花形ポジション”という考えが大きく影響しているからではないでしょうか。野球というスポーツへの捉え方は、国によって様々です。例えば、日本では甲子園に代表されるような1戦必勝のトーナメント形式が割と盛んであったことから、個人の力で試合を決めることができる投手にタレントが集まる傾向にありますし、他にもキューバでは投手よりも打者に人材が集まる傾向にあります。キューバでは「男子はバットとボールを持って生まれてくる」という格言(?)があるらしいですが、野球とは”バットでボールを打つスポーツ”という捉え方がされていて、故にバッターに人材が集まるのではないかと思われます。アンティル諸島に近い野球”狂”国ベネズエラでは、今でこそ各ポジションに万遍なく優秀なタレントを揃える国になりましたが、昔はセカンドやショートのスタープレイヤーが中心にスタープレイヤーを輩出していました。恐らくは、アンティル諸島でも、野球は『内野が花形』という考え方があるのではないかと思います。


 また、メジャーリーガーはまだ出てきていないものの、意外とキャッチャーの選手層が厚いことがわかります。これは、オランダ領アンティル諸島出身の人たちが英語やオランダ語に加えパピアメント語と呼ばれるポルトガル語とスペイン語の影響を受けた混成言語を使っているため、キャッチャーという語学力を中心としたコミュニケーション能力が求められるポジションにフィットするためだろうと思われます。これは、スペイン語と英語を公用語としているプエルトリコが、捕手王国として優秀なキャッチャーを輩出し続けている背景と類似しています。


ネタバレですが投手は…

 次に、ネタバレなので想像はつくと思いますが、投手のグラフを見ていきましょう。

 野手と比べると随分寂しい絵になっています。20歳以下のルーキーリーグの選手も書き加えればもう少し選手はいるのですが、小さな点が増えるだけで大まかな傾向は変わりません。10年くらい前にはJ・ジャージェンスやS・マルティスなど、メジャーリーガーの投手も多少いたのですが、今ではロサンゼルスドジャースの絶対的守護神ケンリー・ジャンセン(CL/LAドジャース)が圧倒的な存在で他にめぼしい投手がいません。ジャンセンも元はキャッチャーで、2009年第2回WBCの後に投手へコンバートしています。


 (余談)因みに、キュラソー島やアルバとは違い、ベネズエラから遠くむしろプエルトリコに近いシント・マールテン島からもマイナーリーガーが出ています。投手はFranklin van Gurp(RP/サンディエゴ・パドレス1A)、野手ではIzzy Wilson(OF/タンパベイレイズ1A+)という選手です。シント・マールテンではサッカーがメジャースポーツらしいので、その島からマイナーリーガーが出てきていることは、野球の国際的普及にとってちょっとしたプラスの話題だなと思います。


”世界一のメジャーリーガー輩出率”の裏

 中島大輔氏著の『中南米野球はなぜ強いのか』によると、キュラソーから多くのメジャーリーガーが輩出できる理由の1つは、人口の少ない小さな島だからこそスカウトが優秀な若手選手を見つけやすく、さらに指導者も1人の選手に対して手厚くコーチングできる育成力があるからだそうです。しかし、キュラソー島やアルバの人口は島全体でせいぜい15万や10万人程度でしかありません。一方で、同じく近年力をつけてきたコロンビアは、野球が盛んな地域はカリブ海付近のバランキージャやカタルヘナといった都市に限られますが、それでも同都市の人口は共に100万人を超えます。(他の野球強豪国,中堅国の都市圏人口も100万人は悠に超えます。)二遊間以外の投手や外野といったポジションでもメジャーリーガーが出始めてきているコロンビアと比べると、二遊間以外に拡大できていないキュラソーやアルバにとっては、この人口の差は今後どこかで障壁となる気がします。人口の少ない島であるが故に出来ること(=育成や人材発掘)の一方で、土台の小ささはいずれ限界を迎える気がしています。

 加えて二遊間にタレントが集中している傾向も踏まえると、オランダ代表がより上を目指す上では、今以上に戦力供給をキュラソー島やアルバに対し期待するのではなく、やはりオランダ本国の選手や国内リーグを底上げする必要があるように思います。


気になるオランダリーグの戦力差

 オランダ国内リーグ『Honkbal Hoofdklasse(フーフトクラッセ)』。イタリアのセリエA1と並び欧州トップクラスのリーグで、8チーム✕42試合+上位4チームによるプレーオフ9試合、プレーオフ上位2チームが決勝のオランダ―シリーズを戦います。中でも、キュラソー・ネプチューンズとL&Dアムステルダム・パイレーツが2強で、ここ20年の優勝回数はネプチューンズが14回で独占状態、たまにパイレーツが一矢報いるようなペースで優勝争いが繰り広げられています。代表チームに選ばれる投手も、この2チーム所属の選手は多いです。昔から、ネプチューンズとパイレーツの2チームが強かった訳ですが、ここ最近は特に2強と他の6チームとの戦力差が広がっているように見えます。2018年、19年のレギュラーシーズンでは、2位チームと3位HCAWとのゲーム差が10まで広がっていますので、ネプチューンズやパイレーツからすると、他のチームとの対戦にはそこまでプレッシャーになっていないのではないでしょうか。

 下のグラフは、アジアの各プロ野球球団の過去3シーズン分のOPSと防御率(ERA)をプロットしたものです。このグラフからは、『投高打低』とか『打高投低』といったリーグの特徴も分かるのですが、今回注目して欲しいのは各リーグ内での成績のバラつきです。

 日本のプロ野球(赤)の場合、チームのOPSが0.650~0.800位で、防御率は3.00~4.30位の範囲で収まっています。また、韓国プロ野球KBO(水色)は、昨シーズン昨シーズン打高投低の傾向にメスを入れたため、少し範囲がばらついていますが、一定の範囲に収まっています。台湾CPBLも同様です。何が言いたいかというと、アジアのプロ野球は球団間の戦力差はあるものの一定の範囲で収まっているということです。なので、同じリーグの最下位チームと対戦するとしても、相手も4割前後くらいの勝率はあるので、どのチームにしても『侮れない相手』になります。また、これはアジアに限りません。参考までに2019年のキューバリーグはこんな感じです。

キューバリーグは参加チームが16もあるので、強いチームと弱いチームでアジア球団よりも成績がばらついているかなと予想していましたが、あまり大差はありませんでした。

 

一方でオランダのフーフトクラッセはどうか?

 アジアのプロ野球やキューバリーグと比べても、圧倒的にバラつきが大きいのが分かります。因みに、グラフの右下に行く程、OPSも高く防御率が低いので『強豪』ということになります。逆にグラフ左上にいるチームは、OPSが低く防御率も高いので『弱小』ということになります。そして、この『強豪』ゾーンにいるのはネプチューンズとパイレーツです。繰り返しになりますが、彼らと他のチームとの間には大きな戦力差があります。オランダのトップリーグとは言え、参加チームのレベルはピンキリだということですね。同じ欧州の強豪イタリアのリーグもリーグ内の戦力差は大きいですが、オランダ程の寡占状態ではありません。優勝チームももっとバラけています。


国内リーグの底上げ

 ネプチューンズとパイレーツに所属している投手陣からすれば、味方の打線は強力なので勝ちは付きやすいし、味方の打者と対戦しなくて良い分スタッツも良くなります。そう考えると、中堅チームに所属しているラース・ハイヤー(SP/ホーフトドルプ・パイオニアーズ)が今シーズン13先発で防御率0.77という成績をマークしているのは脅威的ですが…。一方で、強豪チームの投手からすれば下位チ―ムと対戦することは、すなわち強いチームの打線との対戦機会を失うことにもなります。個人的には、もっとここをシビアに分けでもいいのではないかと思います。例えば、半分の21試合消化した段階で上位4チームと下位4チームに分け、残りは上位4チーム間での対戦を増やす。つまりはキューバリーグに似た方式でですね。キューバリーグには、都市対抗野球などでも使用されている補強選手の制度がありますが、そこまでしてしまうと国内リーグの意義とかにまで議論が及んでしまいそうなので横に置いておきましょう。まぁ本来ならば、ドラフトとかサラリーキャップだとか戦力均衡化の策が王道なのでしょうが、手っ取り早くリーグの質を上げるには、こんな感じで他の国で適用されている仕組みをさくっと導入してしまうのも”アリ”かなと思います。


~以上~

参考文献:

[1] 『中南米野球はなぜ強いのか――ドミニカ、キュラソー、キューバ、ベネズエラ、MLB、そして日本』中島大輔 (著) 亜紀書房 (2017/4/5)

 雑談中の雑談記事です。サッカーのワールド杯で初戦を落とした場合に、決勝トーナメントに進出する確率は11.7%だそうです。毎回ワールド杯の初戦の前は、試合を放送するNHK辺りが世間を盛り上げようと『初戦に勝ったら8割近い確率で決勝トーナメントに行けます!』という話を何度もして、如何に初戦が大事かということをアピールしていますが、逆に負けたら11.7%しか突破できる可能性がなくなる訳で、初戦を落とした場合は見事なブーメランがやってきます。日本代表の場合、初戦で敗けたドイツ大会やブラジル大会では、第2戦以降を放送するアナウンサーや解説が、「もう無理じゃないか」という言葉を必死に飲み込んで「まだ分かりません」的な言葉を発していますが、その光景は中々つらいものがあります。

 さて、話は変わり野球の場合はどうなのか?WBCの初戦を落とした場合、どのくらいの確率で1次ラウンドを突破できるのか?調べてみました。


結論を言うと約2割なのだが…

 先に結論を言っちゃうと約2割です。ただし、厄介なのがWBCは大会毎に1次ラウンドのフォーマットが違う点です。第1回、第3回、第4回大会は、サッカーワールド杯と同じ総当たり(ラウンドロビン)方式で対戦しています。この3大会の1次ラウンドで初戦を落としたチームが次のラウンドに進出した確率は20%(=25チーム中5チーム)でした。次に第2回大会は、”ダブルエリミネーション方式”という2敗したら負けという変則トーナメント方式でした。2敗したら大会を去る方式なので、初戦を落とした場合はいきなり崖っぷちに立たされますから、総当たり方式以上に初戦の重要度は高くなります。その証拠に第2回大会で初戦を落としたチームの1次ラウンド突破確率は13%(8チーム中1チームのみ)と、総当たり方式の他の大会より、ぐっと率が下がります。まぁ、全大会を平均すると18%と約2割という結果となりました。


2次ラウンドで初戦を落とした場合は?

 サッカーW杯と違い、WBCは1次ラウンド突破した後は2次ラウンドがあり、その2次ラウンドも4チーム総当たり又はダブルエリミネーション方式で行われます。そこで、2次ラウンドで初戦を落としたチームが、次の準決勝に進出する確率を調べてみました。尚、試合方式は、第1回と第4回が総当たり、第2回と第3回はダブルエリミネーション方式です。

 結果は、総当たりの場合が25%(8チーム中2チーム)、ダブルエリミネーション方式でも25%(8チーム中2チーム) と同じでした。2次ラウンドまで行くと強豪国ばかりになりますので実力が拮抗してきます。その分初戦を落としても、そこから挽回するだけの力が各チームにあるということなのでしょう。総当たりとダブルエリミネーション方式で確率が同じなのは、単にサンプル数の少なさはあると思います。

 こう見ると、サッカーW杯と比べてWBCは初戦を落としても、まだまだ可能性が残されているように見えます。しかし、実際に初戦を落とした状態から2次ラウンドに進出したチームは、ベネズエラやメキシコ、キューバなど実力のある国ばかりです。なので、野球の弱小国が初戦を運よく勝てただけでは、1次ラウンド突破は難しいと思われます。


第5回大会はラグビーW杯方式

 次の第5回WBCでは、参加国が16カ国から20カ国に増えるのに伴い、1次ラウンドのフォーマットが各グループ5カ国の総当たり戦に変わります。試合数が増えるため、初戦の重要度が相対的に下がると予想されます。

 因みにラグビーW杯で初戦を落としたチームがどの位なのか調べてみました。1次ラウンドが5チーム制となった2003年大会以降、初戦を落としたチームが決勝トーナメントに進出した確率は11.5%でした。しかし、決勝トーナメントに進出出来た国のほとんどが、ティア1と言われる世界トップクラスの実力国ばかりでした。そもそもラグビーの場合は、南半球4カ国+欧州5カ国でながらく決勝トーナメント8枠の椅子を争ってきました。去年のラグビーワールド杯ではそこに日本が絡んできたのであって、初戦がどうこうというよりも強豪国同士の対戦の方が、大きな注目ポイントになっています。野球は、サッカーよりもラグビーに似て意外と番狂わせって少ないので、初戦の試合結果よりは強豪国同士の対戦がどうなるかの方が注目すべきなのだと思います。


~以上~



 

 


 WBCが開催される度に『WBCに出場するアメリカ代表が本当のフルメンバーでは無い』という類の批判を聞きます。確かに『誰々が参加してない』だの『誰々が辞退した』だの例を上げたらきりがないのですが、アメリカ代表としてWBCに参加してくる選手の中には、前のシーズンに本塁打30~40本打っているような化け物がゴロゴロいる訳ですよ。なので、WBCアメリカ代表メンバーの分析をする度に『このメンバーでも十分反則じゃない?』と思ったりするのですが…。彼らが毎回優勝候補と言われるのも、彼らのスタッツを見れば誰しも納得すると思うのですが、一方でアメリカ代表がWBCのタイトルを獲得出来るまでに第1回WBCから11年かかりました。そして、初優勝を果たした第4回WBCアメリカ代表のメンバーは第1回アメリカ代表の豪華メンバーと比べると、”スター”というよりは”仕事人”タイプの選手が多かった印象が残っています。ただし、第1回WBCの豪華なアメリカ代表選手もそれだけの活躍していた訳であって、決して実力が無かった訳ではないと思います。なのに何故、第1回のWBCアメリカ代表メンバーは優勝できず、第4回のアメリカ代表は優勝できたのか?更に言うと、第4回メンバーと過去3大会のアメリカ代表との違いは何だったのか?今回はそこを考察してみていきたいと思います。


召集メンバーを前年のfWARで振り返る

 セイバーメトリクスの分野でお馴染みともなりましたWAR(Wins Above Replacement)。その選手がどれだけの活躍をし、チームに貢献できたかを表す指標ですが、第1回~4回までのWBCアメリカ代表メンバーが前年どれ程のWARをマークしてきたか振り返ってみましょう。fangraphs方式のfWARでは、6.0以上の数値をマークすれば、その選手はMVP級の活躍に等しいようですので、各大会メンバーからfWAR6.0以上の選手をピックアップしてみましょう。

第1回 5名

A・ロッド=9.1、C・アトリー=7.2、D・リー=7.0、D・ウィリス=6.5、R・クレメンス=6.0

第2回 5名

B・マッキャン=8.2、C・ジョーンズ=7.1、D・ライト=7.0、D・ペドロイア=6.4、K・ユーキリス=6.2

第3回 3名

R・ブラウン=6.8、D・ライト=6.6、J・ルクロイ=6.0

第4回 1名

B・ポウジー=6.7


更にチーム合計値も見ていきましょう。

 2006年第1回大会では出場選手登録が30名まで可能で、第2回以降の28名より+2名多いのですが、その2名分を差し引いてみてもチームfWARは100前後の値になります。このことから、以下に第1回WBCアメリカ代表メンバーが他の大会のアメリカ代表より如何に豪華だったかが分かります。そして、WARという定量的な視点で見ても、WBCアメリカ代表がスケールダウンしていることは間違っていないようです。第2回大会以後、回を経ることにfWARの値は減少してきています。しかし、大会成績を見ると、第1回から3回までの勝敗はずっと五分と苦しんでおり、WARとWBCの結果が全く関係ないことがわかります。


特に投手がスケールダウン

 WBCにメジャーリーガーが参加する際よく言われる説として、「シーズン前の3月に開催されるので、特に投手にとって調整が難しい」という話です。事実、アメリカ代表も野手は割と豪華メンバーが揃いますが、投手の召集には苦労しているようです。そこで、召集された投手の前シーズンのfWARを見ていきましょう。

 野手同様、第1回WBCメンバーが豪華なのは全体の傾向と同じです。先発投手のfWARも大会毎に下がってきています。しかし、失点率を見ると第4回大会が最も良い値をマークしています。まぁ、優勝したのだから失点率が一番低いのは当たり前と言えば当り前ですが、その要因は何なのか?

 失点率という指標は、(セイバーメトリクス的に言うと)防御率同様に様々なノイズが含まれています。さらに今回は短期決戦なので、対戦相手や球場の影響がもろに数値として出てきますので、一概にこれという答えは出し難いのですが、こんな切り口で見てみました。ずばり”守備”です。


守備が過去最強だった第4回メンバー

 こちらも毎度毎度お馴染みとなりましたセイバーメトリクスの守備指標”DRS”(=Defensive Runs Saved)です。日本ではUZR(=Ultimate Zone Rating)の方が浸透しているかと思いますが、個人的には月刊スラッガー(日本スポーツ企画社)でも多用されるDRSをよく使います。まぁ、そんな事は置いておいて、各WBCアメリカ代表メンバーが前シーズンにマークしたDRSを見ていきましょう。

見ての通り、fWARが最高だった2006年アメリカ代表のDRSが-37点と、大きなマイナスになっています。これはつまり、第1回WBCアメリカ代表は攻撃重視な選手選考で、守備のマイナスを打撃で上回るスタイルだったということを意味しています。しかし、第2回第3回アメリカ代表チームのDRSも、第4回のDRS+50点には及ばないものの、+20点前後をマークしていてそれほど悪くありません。

 ここで更に見方を変えてみました。各WBCアメリカ代表の大会の最後の試合に先発出場した選手の前年DRSをまとめみました。

 表中に「×」が部分は、最後の試合でそこを守った選手が、前シーズンにメジャーでその守備位置に1回もついてないことを表しています。例えば、第1回大会の最後の試合では、ショート本職のマイケル・ヤングがセカンドを守り、本来センターを守るバーノン・ウェルズがライトを、ライトを守るジェフ・フランコ―ナがレフトを守りました。二遊間とセンターは守備の要となるポジションですが、ショートを守ったディレク・ジーターの2007年DRSは-27点と大きなマイナスでした。もし自分が先発選手を選ぶ立場だったら、外野はV・ウェルズに本来のセンターを守らせ、ケン・グリフィーJrをレフトに回します。ライトは本職のJ・フランコ―ナがDRS+17点と前シーズン非常に優秀でしたから、その通りライトを守らせます。ケン・グリフィーJr以外は前のシーズンに優秀なDRSを記録している本職の選手がいるのですから、その通りに守らせた方が良いと思うのですが、第1回WBCで指揮を執ったバック・マルティネス監督は、何故かリスクが増えるような外野の配置をしています。因みにこの試合は、あのボブ・デービッドソン審判によるホームラン疑惑あったメキシコ戦です。外野守備が直接的な原因ではなかったかもしれませんが、起用にチグハグな面が見られました。

 また第2回大会でも、ディレク・ジーターがショートを守りましたが、前年のDRSは-10点。また、守備の良くないアダム・ダンがライトを守っていましたが、最終戦の日本戦ではライトのアダム・ダンに向けて狙い打ちされているような感じもしました。そして、この試合ではライトのアダム・ダンから力の無い返球を何度も見かけることになります。

 それと比べると、第4回WBCではブライアン・クロフォード(SS/サンフランシスコ・ジャイアンツ)やノーラン・アレナド(3B/コロラド・ロッキーズ)が好守備を連発しています。第4回大会では、他のチームも好守備が印象的な大会でしたが、アメリカ代表の三遊間も負けじと良いプレイを見せていました。この2人であったからこそ獲れたアウトもかなりあったと思います。特に、グラウンドボールピッチャーの多かったアメリカ代表投手陣と、守備の良い内野手陣との相性は抜群でした。日本の打者陣からすると相性が悪そうな相手ですね。一方外野ではアンドリュー・マカッチェンの中堅守備があまり良くなく、前年のDRSは-26点だったのですが、マカッチェンをライトを守らせることで弱点を上手くカバーしました。(その後マカッチェンは、所属チームではライトに定着していますので、WBCでの起用判断は正しかったという証明になりました。)


 ということで、第4回大会のアメリカ代表メンバーは明らかに守備が違った、という結論となりました。超短期決戦だからこそ1つのアウトを取るための守備力の重要度が高まっている、というテキトーなまとめで締めくくりたいと思います。


ちなみに、マーカス・ストローマン(SP/NYメッツ)が呼び掛けた次回WBCアメリカ代表のメンバーを見ると、ノーラン・アレナドとトレバー・ストーリー(SS/コロラドロッキーズ)のロッキーズの三遊間コンビが手を挙げています。アレナドの三塁守備は相変わらずハイレベルですが、ストーリーの守備も高いDRSをマークしていますので、次回WBCアメリカ代表メンバーも攻守にバランスの取れた布陣になりそうです。詳しくは下記の記事で。

~以上~

 ここ20年近くの間で、野球が著しく発展してきた国の1つにコロンビアがあげられます。昔は国際大会への出場することも稀だった同国の代表チームですが、2017年の第4回WBCでは1次ラウンドで中堅国カナダを破り、強豪アメリカやドミニカ共和国とも接戦を演じるなど、急激に競技レベルが上がってきています。


コロンビア人メジャーリーガーの増加

メジャーリーグで活躍するコロンビア人選手の数の推移をみると、昨年2019年には最多となる10人がプレイしています。

 2000年代は、エドガー・レンテリア(SS/元セントルイス・カーディナルス)、オーランド・カブレラ(SS/元モントリオール・エクスポズ)の名遊撃手が活躍した時代でした。今のコロンビア人選手は、ちょうど野球少年だった頃にレンテリアやカブレラの活躍を見て育った世代になります。コロンビア人のメジャーリーガーも、野手は外野より内野の方が人材が多めです。(昨シーズン外野手として115試合に出場したメジャーリーガーオスカー・メルカド(CF/クリーブランド・インディアンズ)も、ルーキーリーグ時代はショートでした。)

 2010年代前半になると、フリオ・テヘラン(SP/ロサンゼルス・エンジェルス)とホセ・キンターナ(SP/シカゴ・カブス)という2人の先発投手が活躍します。第4回WBCでコロンビアが躍進したのも、メジャーで活躍する先発ローテーション投手が『1人ではなく2人いた』ことは大変大きなアドバンテージになったと思います。勝利が確実に求められる3番手のカナダにテヘランを当て、アップセットを狙いたいアメリカ相手にキンターナを当てられました。上手くいけば2次ラウンド進出の可能性もありました。

 更に近年は、キャッチャー、外野手と徐々にショートや先発投手以外のポジションにも、メジャーリーガーを輩出し始め、今はポジションに大きな偏りがなく、バランスよく良い選手が生まれ始めてきています。隣国の強豪ベネズエラがショートストップから徐々に他のポジションのメジャーリーガーが増えてきた過程と同じように、コロンビアも同じような発展の仕方をしつつあります。


 先ほどのグラフはメジャーリーガーの数でしたが、これを1人ずつのWAR(=選手の活躍具合を示す総合指標)にまとめてみました。

 グラフを見ると、2010年代以降は投手(青色)を中心に活躍していることが分かります。一方で、野手(黄色)はそれほど目立っていません。つまり、メジャーリーガーの数自体は増えているものの、その中でチームの中心となって活躍できているのはテヘランとキンターナの二枚看板だけで、野手はレギュラーとして活躍している選手はまだまだ少ないということを表しています。ただ、昨シーズン2019年はジオバニ・ウルシェラ(3B/NYヤンキース、fWAR=3.1)やオスカー・メルカド(fWAR=1.7)の活躍もあって、野手もレギュラークラスが一気に増えました。もし、フルメンバーのコロンビア代表が結成されたとして、依然として先発投手を中心とした守りのチームになるでしょうけれども、戦力的な偏りは徐々に解消されつつあります。次の第5回WBCでは、更にパワーアップした史上最強のコロンビア代表が見られることは間違いなさそうです。


コロンビア代表Depth Chart ~野手~

 当サイトの独断と偏見により選出したコロンビア代表を見ていきます。メンバーはメジャーリーガーがレギュラーの中心で、残りをプロスペクトのマイナーリーガーで補う形になります。前回WBCのコロンビア代表メンバーと比べて、打線の厚みが増した感じがあります。前回大会で四番を担ったスプレーヒッターホルヘ・アルファロ(C/マイアミ・マーリンズ)、コロンビアのWBC初出場の立役者ディルソン・ヘレーラ(2B,LF/ボルティモア・オリオールズNRI)に加え、上述のG・ウルシェラは昨季24本塁打、ハロルド・ラミレス(OF/マイアミ・マーリンズ)も昨季11本塁打をマークしています。その威力は、ドミニカ共和国程でないとしても前回WBCで日本と死闘を繰り広げたオランダ代表並みの重量感は感じられます。もし、侍ジャパンが東京ドーム辺りで対戦し失投でもしようものなら、簡単に柵越えされそうなパワーを感じます。問題としてあげるならば、左打者がほとんどいないことでしょうか。


守備はメジャーリーガーのスタッツのみですが、守備防御点(以下、DRS)を見ていきましょう。オスカー・メルカドがセンターでDRS+10点と優秀な成績をマークしています。ただ、それ以外の選手のDRSは可も無く不可もなく(若干マイナス気味か?)といった感じで、大きな穴にはなりそうにありません。

コロンビア代表Depth Chart~投手~

 次に投手です。次回WBCは参加国が16→20カ国に増えたことで大会フォーマットが変わっています。それまで4組×各4チームの総当たり戦だった1次ラウンドが、4組×各5チーム総当たりで、上位2チームが決勝トーナメントに進出する仕組みに変わりました。(ちょうどラグビーワールド杯と同じ形式ですね。)コロンビア代表にとって、前回大会を超える成績は、ずばり1次ラウンド突破となります。そうすると1次ラウンドはマストWINの試合が3勝となるため、テヘラン・キンターナの二枚看板だけでは1枚足りない状況となります。候補としては、昨季韓国で13勝を挙げたウィリアム・クエバス(SP/KTウィズ)か、プロスペクトのルイス・パティーノ(SP/サンディエゴ・パドレス2A)辺りにると思いますが、強豪国に当てるにはちょっと荷が重い感じもします。

救援には、100マイルピッチャーのタイロン・ゲレーロ(CL/シカゴ・ホワイトソックスNRI)がいますが、続くルイス・エスコバー(RP/ピッツバーグパイレーツNRI)は絶対的ではありませんし、それ以外も2A~1Aレベルで後ろの層が薄い感じがします。前回大会もそうでしたが、球数制限があるWBCでは先発投手以降をいかに頑張るか、それに全てかかっています。


まだまだ成長しそうなコロンビア野球

 サッカーが国技であるコロンビアにおいて、野球が盛んな地域はカタルヘナやバランキージャ―というカリブ海に面した都市が中心です。実際、今のコロンビア人メジャーリーガーの多くがカリブ海周辺都市出身者になります。レンテリアやカブレラといったパイオニアの活躍が、カリブ周辺都市のコロンビア野球少年に与えた影響は大きいと思いますが、近年は更に、隣国ベネズエラからの人口流入が拍車をかけるものと思われます。

 ご存知の通り、ベネズエラは政情不安のため、コロンビアやブラジルなどに難民が流出する動きが続いています。野球”狂”国であるベネズエラから流出した人材は、野球IQが高くコロンビア人野球少年によって良いお手本にもなります。また、ベネズエラ出身ながらコロンビア代表選択する選手も増えていくでしょうし、ベネズエラの情勢が今後もコロンビア野球に大きな影響を与えることは間違いありません。


~以上~


 

 コロナウィルスの影響で延期が発表された東京オリンピック野球競技。まだ、出場国の枠は2つ残っているのですが、その内の1つの枠が『アメリカ大陸予選』です。この予選は本戦よりも先に開催延期が発表されたのですが、一部の予選参加国からは出場する選手リストが公開されていました。皆さんご存知の通り、東京オリンピックはWBCと違って、メジャー26人枠に入るような、いわゆるバリバリのメジャーリーガー”は参加できません。しかし、40人枠に入っているメジャーリーガーは参加可能で、それは今回延期となったアメリカ大陸予選にも適用されています。一方で、昨年日本が優勝した第2回プレミア12では、40人枠のメジャーリーガーは参加が認められていませんでした。つまり、アメリカ大陸予選に参加するチームはプレミア12以上の戦力を集めることが可能で、更にそこを勝ち抜いて東京にやってくるチームは、プレミア12よりも手強い相手になることが必至なのです。ただし、ここで注意が必要なのは、あくまで40人枠のメジャーリーガーを集めることが可能になっただけで、実際に選手が来てくれるのかは別の話だということです。召集は可能となっても代表チームの編成組織が選手を召集できなければ意味がありません。26人枠外とは言え、メジャー球団のお許しがなければ選手に来てもらうことが出来ない訳で、そういう意味では先ほど話にあがった『代表メンバーのリスト』というのは、代表チームフロントの編成力を表していると言っても過言ではないかと思います。そこで、今回は幻の東京オリンピックアメリカ大陸予選のメンバー表を見ながら、各国がプレミア12からどのように戦力を編成しようとしていたのか分析してみたいと思います。


様変わりのドミニカ共和国

 まずは同予選の優勝候補の1つだったドミニカ共和国代表を見てみたいと思います。代表選手が、どの位のレベルの戦力かはスタッツだけみても難しいので、ここでは昨シーズンその選手がプレイした出場機会で見ていきたいと思います。具体的には、投手ならば投球回、野手ならば打席数を、メジャー、3A、2A、1A+、・・・と各クラスでどの位プレイしたかをグラフ化してみました。尚、メジャー傘下以外でプレイする選手もいるので、例えば、メキシカンリーグや独立リーグのアトランティックリーグは3A相当、カンナムリーグは1A+、といった感じで当サイトの判断で割り当てさせて頂きました。因みに、韓国KBOは3A相当にしました。これはKBOのリーグレベルが3Aということではなくて、同リーグの球団が獲得する外国人選手のレベルが3Aクラスや日本から流れてくる選手が多かったことからの判断です。同じリーグの中でも選手のレベルに結構な幅がありますから一概にはどのクラスだと言えないのですが、まぁあくまでざっくりとして目安だということでご容赦ください。

さらにメジャーでの通算プレイ年数も付け加えています。世界最高峰のレベルをどれだけ経験しているか、というのも1つの指標だと思います。話を戻して、以上の情報をドミニカ共和国代表メンバーについてまとめるとこんな感じです。

 パッと見た感じ3Aや2Aクラスの選手が中心だということがわかります。更には、昨年少ないながらもメジャーでプレイした選手もいます。プレミア12では、1A+や2Aクラスの若手プロスペクトがほとんどでした。(参考:【Premier12】戦力分析~ドミニカ共和国編~)それと比べると、だいぶ経験のある選手が増えています。有名なところだと、アービン・サンタナ(SP/元LAエンジェルス)はプレミア12にも出場しましたが、何といってもホセ・バティスタ(OF/元トロント・ブルージェイズ)でしょう。メジャーで本塁打王2回、前回のWBCにも出場したビックネームです。オリンピック予選が延期になってしまったので、プレイを続けられるか未知数ですが、前回1A,2Aの若手中心だったチーム編成から考えると、対照的なチーム構成に見えます。

 プレミア12でドミニカ共和国代表は、アメリカやメキシコに負けて1次ラウンドで敗退となりました。敗因としては大会最多の9被本塁打だろうと思います。元々、開催地のハリスコは標高が高く打ち取ったフライが本塁打になりやすい環境であることは、事前に予想されていました。それにしても、たった3試合だけで最多の9被本塁打というのは打たれ過ぎで、この辺のリスク管理というか、投手の技術やリスク管理に課題があったように思います。

そうみると、ドミニカ共和国代表はきちんとプレミア12のときと比べて確実に戦力はアップしているのだろうと思います。もっとも、プレミア12のときは同国のウィンターリーグの開催時期と重なりがあったので、実際の所は上手く選手の召集が出来なかったという見方なのだろうと思います。今回のメンバーにはウィンターリーグで活躍している選手もいますし、今回ドミニカ共和国代表のフロントは、結構満足のいく編成ができたのではないでしょうか。

 野手の方は、元楽天のカルロス・ペゲーロ(OF/プエブラ・パロッツ(MEX))などのプレミア12組は同大会でも打ってましたが、それに加えてメジャーNo.1のプロスペクトと言われるワンダー・フランコ(SS/タンパベイレイズ(1A+))が加わりました。来年には、普通にメジャーリーガーとして活躍しているかもしれません。同じプロスペクト全体82位のジェラルド・ぺルドモ(SS/アリゾナ・ダイヤモンドバクス(招待選手))とのプロスペクトコンビの活躍が期待したいところですが、彼も来年は26人枠に入ってしまっているかもしれません。もし、無事開催されていれば、ドミニカ共和国代表はアメリカと優勝争いをしていたでしょう。


プレミア12から上積みのベネズエラ

次はベネズエラ代表を見ていきます。ベネズエラ代表は42名の予備ロースターという形ですが、ここからも色々と情報が見えてきます。

 ドミニカ共和国代表と違い、プレミア12でも3A/2Aクラスやメキシカンリーグの選手を召集できていたベネズエラ代表。(参考:【Premier12】戦力分析~ベネズエラ編~)侍ジャパンの金子誠HCに「アメリカ、メキシコ、ベネズエラは勝てるイメージが出来なかった」と言わせるほど、戦力的には充実していたベネズエラでしたが、結果は日本と台湾に負けて1次ラウンド敗退となりました。格上の日本代表に対しては、途中8回表までリードしていた所、終盤フォアボールを連発し逆転負け。やや戦力の劣る台湾代表に対しては、張奕(SP/オリックスバッファローズ)の快投でお互いスコアレスの状態が続き、7回表に先制点を許し、9回にもダメ押しされて0-3で競り負けました。

ヘンダーソン・アルバレス(SP/元マイアミマーリンズ)やフェリックス・ドゥブロン(SP/元ボストン・レッドソックス)といったメジャー経験豊富なベテランが何とか無失点で凌ぐも、リリーフ陣が失点してしまう展開でした。(どちらも接戦でしたが。)プレミア12に出ていないメンバーで、今回予備ロースター入りしている選手を見ると、メジャー経験がある選手が中心なのが分かります。この辺からすると、ベネズエラ代表のフロントは前回の反省を踏まえて、チームを補強しようとしている意思が見えます。欲を言うと、もっと若手の本格派先発投手がいて、長いイニングを投げられればいいのですが。

 野手の方も、アレクシー・アマリスタ(SS/元サンディエゴ・パドレス)やゴーキース・ヘルナンデス(OF/元サンフランシスコジャイアンツ)など、メジャー経験の豊富な選手がリストに入っています。こちらもプレミア12から変わらず中々手強い打線になりそうです。メキシカンリーグで活躍しているベネズエラ人選手が多いことが、ベネズエラ代表が安定して良い選手を集められている要因のように思います。


コロンビアは2A~1A+、他の国は?

次にコロンビア代表です。プレミア12には出場していませんが、同国のメンバーは全体的に2A~1A+が中心でした。

近年多くのメジャーリーガーを輩出するようになったコロンビア。しかし、マイナーリーガーの数で言うと、ドミニカ共和国の23分の1、ベネズエラの14分の1の数ということで、どうしても両国と比べると選手層の薄さが目立ちます。前回のWBCに出場したメンバーもかなり含まれていますが、MLBプロスペクトランキング全体44位のJeter Downs(SS/ボストン・レッドソックス傘下)のようにメジャーリーガー候補勢も含まれています。予選通過は難しかったと思いますが、結構こういう中堅国がアメリカやドミニカ共和国のような勝利が確実と思われる強豪国相手に土をつけることがありますから、侮れなかったりします。

 他の国でもプエルトリコなどは野球の強豪国ですが、メンバーを見ると国内のアマチュアリーグ所属の選手が中心で、正直これではアメリカやドミニカ共和国、ベネズエラなど強豪国の敵にならなかったと思います。マイナーリーガーの数では両国より全然少ないものの、コロンビアよりは多いので、もうちょっと現役マイナーリーガーを召集できたのではないかと思ったのですが、ちょっと寂しい陣容ですね。また、WBC予選も控えていたニカラグア代表も、チェスラー・カスバート(3B/前サンディエゴ・パドレス)のような普通のメジャーリーガーもいますが、全体的には1Aや国内ウィンターリーグの選手が中心で予選通過は難しかったと思います。コロンビアと比べると更にマイナーリーガーの数は少ないため、ここら辺は致し方ないかなと思います。もっとも、パンアメリカン大会やキューバ代表との対抗戦などに選ばれているニカラグア代表メンバーが今回も多く入ってますから、お馴染みのメンバーと言っていいかと思います。また、U-23ワールドカップでMVPを獲得したJesus Lopez(C/トロント・ブルージェイズ2A)もメンバー入りしてますね。


 このように比較すると、やはりドミニカ共和国、ベネズエラのメンバーは強力です。また、アメリカやカナダは代表メンバーのリストは見つかりませんでしたが、どちらもプレミア12に近いメンバーになっていたのではないかと思います。もし、アメリカ予選が予定通り開催されていたら、この4つの国のどこかが出場権を得ていたと思います。

 バリバリのメジャーリーガーが出場しないことがよく取り上げられるオリンピックですが、かといってフルメンバーの侍ジャパンが普通に勝てるかというと、見ての通りとても簡単に勝てるような相手ではありません。そういった相手を破ったことで得られた金メダルがどれだけ価値があるのか。もし侍ジャパンが東京オリンピックで金メダルを獲得できたとしたら、メジャーリーガーがどうこう言わず、その功績を正しく評価して上げて欲しいものです。


~以上~

 WBCアリゾナ予選と東京オリンピックのアメリカ大陸予選が、新型コロナウィルスの影響で開催延期となり、数少ない野球の国際大会を目にする貴重な機会がなくなってしまいました。そんな中、3年前に行われた第4回WBCでの活躍を回顧したメジャーリーガーがいます。決勝戦で勝利投手となり大会MVPにも選ばれたマーカス・ストローマン投手(SP/ニューヨーク・メッツ)です。今までアメリカ出身の選手が、WBCの前年の段階で自発的に情報発信したなかった気がします。大会のプロモーションなどで会見の場に臨むようなことはありましたが、今回のような”素”での参加表明はこれまで無かったように思います。それも前回アメリカ代表が優勝したことが何よりも大きかったのでしょう。これまでWBCがアメリカにおいて盛り上がりに欠けていた理由として、『アメリカ代表が勝てていない』ことを挙げられることもありました。個人的には、その意見に対して正直懐疑的に思っていましたが、第1回,第2回のWBCで日本が優勝して盛り上がったように、アメリカでも(少なくとも参加した選手は)WBCでまた勝利し感動を味わいたい、という想いが高まったのでしょう。言われてみれば、その前の第3回大会でも同じようなことは起きていて、決勝戦まで進出したドミニカ共和国とプエルトリコは次の第4回大会では1次ラウンドからえらい盛り上がりようでした。

 そのMVP男ストローマンが、3月19日にツイッターにおいて第4回WBCへの参加を呼び掛けるツイートをしたところ、たくさんのメジャーリーガーが反応しました。そのメンバーを見てみると、前回参加メンバーからは、ナ・リーグ首位打者クリスチャン・イエリッチ(OF/ミルウォーキーブルワーズ)、世界最高峰の三塁手ノーラン・アレナード(3B/コロラドロッキーズ)、パドレスの主砲エリック・ホズマー(1B/サンディエゴ・パドレス)が参加表明をしました。投手では、トレーニング施設『ドライブライン』で有名になったトレバー・バウワー(SP/シンシナティ・レッズ)が参加表明しています。これまで名前が上がっているメンバーだけみても結構な戦力に聞こえますが、もう少し参加選手のスタッツを深堀してみたいと思います。


先発投手が手を挙げた投手陣

 今回ストローマンの呼びかけに応じた投手は全部で6人。内、ストローマンも含む5人が先発投手です。しかも、チームでローテーションの1~2番手を担う本物で、内4人が昨シーズン2桁勝利をマークしています。手っ取り早く選手の総合的な貢献度を表す『WAR』を見てみましょう。WARの値は、2~3程度だとチームのレギュラーメンバークラス、つまり3以上のWARの選手は、メジャーの中でも上位に入る選手だとお考え下さい。因みに日本人投手のWARを見ると、ダルビッシュ有投手が2.6、田中将大投手が3.3、前田健太投手が2.5でした。では、今回のメンバーを見ると、ストローマン投手が3.9、バウワー投手が3.3。凄いのがここからで、マイク・クレビンジャー投手(SP/クリーブランド・インディアンズ)が4.5、ウォーカー・ビューラー投手(SP/ロサンゼルスドジャース)が5.0と凄い選手であることが分かるかと思います。

 侍ジャパンのバッターから見て気になるスタッツは、奪三振率の高さです。典型的なグラウンドボールピッチャーであるストローマン以外は、どの投手も奪三振率(K/9)10以上をマークしています。国際大会になると、マスコミが皆揃えて口にするのが「動くボール」ですが、このクラスとなると攻略に必要なのは動くボールだけでありません。クレビンジャー、ビューラー、ブレイク・スネル(SP/タンパベイ・レイズ)は、平均95マイル(≒153km/h)以上の速球を投げ込んできます。そして、速球の球速が速いということは、ツーシームやシンカー系のボールも比較的速いので、WBC以外の国際大会で対戦してきたような軟投派の動くボールとは質が違います。また、フライボール革命対策で注目が高まったトレンドを表すかのように、持ち球にカーブ(特に縦に割れる12-6カーブ)を武器にする選手も多いようです。速球とカーブで球速差がかなりあります。カーブだけならばカーブ打ちを得意とする打者も日本にはたくさんいると思いますが、投球の中心はストレートだと思いますので豪速球にも負けず、カーブにも手を対応できるようにしなければなりません。そうなると中々…。

 速球/変化球という要素以外に、始動からリリースまでのタイミングの取り方や、短い投球間隔に対し、日本とは全く違う適応が求められます。メジャーリーグに移籍したバッターがこれらの適応に何試合も必要とする訳ですから、超短期決戦となる国際試合では適応を待つだけの時間はありません。タイミングが合っていないとなれば、即交代するなど早めの判断が必要になります。さらに、日本代表は開催国の1つとして、大会終盤になるまでメジャーリーガーの多い国との対戦が少なくなることが予想されます。勝ち進む上では有利ですが裏を返せば、本当のトップクラスのメジャーリーガーの対戦は、ぶっつけ本番となるということです。なんとも”ジレンマ”です。

 これまで侍ジャパンは、台湾やメキシカンリーグ、オーストラリアリーグといった格下相手の強化試合が多かったですが、WBCの勝負所を考えたときに、彼らよりもむしろ日本のプロ野球球団に所属する外国人選手を結成して相手にした方が、仮想メジャーリーガーとして良い強化試合ができるように思います。1995年に阪神大震災の復興チャリティーマッチで、キャッチャー以外オール外国人のチームが結成されましたが、似たようなことが出来ないかなと度々思います。

 完全に話がぐだぐだになっていますが、こりゃ厳しいなぁ、という話でした。


打者はもっとえげつない

 打者は投手よりももっとえげつない面子が集まっています。皆昨シーズン2桁本塁打をマークしており、中には40本以上打っている打者が4人もいるのですよ。これだけの面子となりますと、弱点なんぞ簡単に見つかる訳もないのです。打撃だけでなく守備についても見てみましたが、セイバー系守備指標”UZR”には特に大きな穴があることもなく、むしろサードやショート、ライトが鉄壁でお手上げでございます。前回WBC準決勝で侍ジャパンがアメリカ代表と対戦した時は、高めの速球を上手く使って、菅野投手と千賀投手が三振の山を築きましたが、今回もそこを狙って投げ切れる投手を起用して、どうにかロースコアに持ち込むしか勝利の道はないのかなと思います。


 もちろん、これらの選手はストローマンの呼びかけに反応しただけであって、実際に来年のWBCに彼らが参加できるかは、所属球団の許可次第です。しかし、少なくともアメリカ代表にはWBCに参加したいと思っているトップクラスのメジャーリーガーがこれだけ居るというのは事実な訳で、前回大会以上に強力なアメリカ代表メンバーが侍ジャパンの前に立ちはだかる可能性は高そうです。


以上、今回も当サイトをご覧いただきありがとうございました。

 第3回U-23野球ワールド杯のアメリカ大陸予選が、先月2月からニカラグアとホンジュラスの共催で行われました。参加したのは全部で12チーム。野球の強豪国として知られる、ドミニカ共和国、ベネズエラ、キューバや、それに続いてコロンビア、パナマ、ニカラグア、ブラジルといったWBC本戦,予選にも出場経験のある中堅チームが参加。しかし、むしろ注目したいのは、中南米の野球新興国、いわゆる”中南米マイナー国”が多く参加している所です。中米からは、ホンジュラス、グアテマラ、エルサルバドル。南米からはアルゼンチン、ペルーが参加しました。これらの国はWBC予選にも出場経験がないのですが、それでも稀にマイナーリーガーを輩出したりしています。ホンジュラスからはついにメジャーリーガーが誕生しました(マウリシオ・ドュポン/SS/ミルウォーキー・ブルワーズ)。WBCの本大会には来年の第5回大会から参加国が16カ国から20カ国に増えた訳ですが、むしろ国際野球フリークの間ではこういったマイナー国からWBC予選に出場チーム数増を望む声の方が多いように見えます。ただし、やはり野球が盛んな地域とそれ以外の国との間には、明確な実力差が存在します。そこで今回は、このU-23野球ワールド杯アメリカ大陸予選の結果から、中南米の野球強豪国とマイナー国との実力差を、目に見える形で表すとどうなるか?やってみました。


U-23野球ワールド杯アメリカ予選の結果

 まずは同大会の結果を見ていきましょう。

 優勝したのは地元開催のニカラグア。ドミニカ共和国やベネズエラなど同大陸の野球強豪国に勝利し、U-23野球ワールド杯本大会の出場権を手にしました。特に活躍したのは、現役マイナーリーガーのヘスス・ロペス(C/トロントブルージェイズ1A)で、最多打点14と今大会のMVPを獲得しました。

準優勝は、ここ最近国際大会で良い所のなかったキューバ代表。事前の予想では、若手選手の相次ぐ亡命でこの世代の選手層は他の国と比べても薄いかなと思いましたが、セサル・プリエト(SS/オルギン)やヨシマル・コウシン(SP/カマグエイ)といったフル代表でもレギュラーを掴んでいる選手を中心に強豪国と渡り合いました。決勝では、ニカラグアに1点差で敗北してしまったものの、国際大会で不振にあえいでいたキューバ代表にとって久しぶりに明るいニュースとなりました。

そしてコロンビアを破って3位に入ったベネズエラまでが、今年メキシコで行われるU-23ワールド杯への出場権を得ました。 


試合結果から実力差を見える化する

 以上の試合結果から、今度は各国の戦力値を推定してみましょう。それには、当サイトで度々使用している『各チームの攻撃力守備力をざっくり計算する方法』を使いました。では早速結果をみてみましょう。

 攻撃力と守備力の合計値を見ると、優勝したニカラグアよりも準優勝のキューバの方が∔0.2ポイント上回っていました。この2チームは特に戦績がよく、決勝戦でも1-0の接戦でした。3位以下は、ベネズエラ、コロンビア、ドミニカ共和国、パナマ、ブラジル、、、とWBCにも出場経験のある国が続きますが、戦力ポイントの差は僅かでした。しかし、ブラジルに続くアルゼンチン、ここで大きなポイント差が生まれます。ブラジル21.6に対しアルゼンチン16.3と、5ポイント以上の隔たりがあります。特に、アルゼンチン以下のチームになると、守備力のポイントががくっと急落します。つまり、中南米の上位国と対戦した結果、相手の攻撃陣を抑えるだけの投手力や守備力が備わっていないということですね。これを絵にするとこうなります。

 見ての通り、強豪国とマイナー国の壁がはっきりと見えるかと思います。これはU-23代表チームではありますが、WBCにまだ出たことのない中で最強国と言われるアルゼンチンですらWBC経験国との間に大きな差があります。また、ニカラグアとともに開催国となったホンジュラスが、他のマイナー国との対戦を制して9位に入りましたが、他のエルサルバドル、グアテマラ、ぺルーは横一線といった感じです。ここら辺の底上げを期待したい所です。


=以上=