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今年はコロナウィルスの影響でメジャーリーグや日本プロ野球のシーズン開始が遅れたため、台湾プロ野球CPBLや韓国プロ野球KBOなど日米以外のプロ野球を目にする機会が増えたのではないかと思います。筆者の場合、特にCPBLの動画がYoutubeのお勧めに良く出てくるのでそれをよく見ているのですが、CPBLのハイライト動画は割と長めなので、失策シーンも結構流されます。エラーが多いのは前から分かっていましたが、ふとした疑問が沸き上がりました。『CPBLは”打高投低”と言われるが、投手じゃなくて守備が悪いんじゃないの?』...。ということで今回は、台湾プロ野球CPBLと日本プロ野球NPBを比較して、CPBLの”打高投低”を深堀していきたいと思います。


中信兄弟ミランダの成績から見る傾向

 まずはミクロな視点で見てみます。昨シーズンまで日本プロ野球でプレイし、今年台湾プロ球団の中信兄弟に加入したアリエル・ミランダ投手(SP/元福岡ソフトバンクホークス)の成績を見ていきましょう。

 ミランダ投手の今季の防御率は4.37(8/21時点)です。これはホークスからリリースされた昨季の日本での成績よりも悪い数値です。奪三振率SO/9や与四球BB/9といったスタッツは、日本時代よりも好成績をマークしていますが、被安打率H/9は日本時代よりも悪化しています。つまり、防御率が悪化した理由は、日本時代よりも”よく打たれている”からということになります。では、日本の打者より台湾の打者の方が打撃力があるのか?というと疑問が残ります。台湾の打者の方がパワーはあって強振してくる印象がありますが、例えば”台湾最強打者”という触れ込みで2018年に日本プロ野球に移籍してきた王柏融(OF/北海道日本ハムファイターズ)が活躍できずにいる事実からすると、そうとも言い切れないだろうと。

 ここでセイバーメトリクスの守備指標DER(守備効率)を見てみます。DERは本塁打以外のインプレーとなった打球の内、どれだけアウトが獲得できたかを表す指標です。成績の良かった2018年シーズンは、DERが0.793でインプレー打球の約8割がアウトになりました。一方で、今シーズンのDERは0.678とインプレー打球でアウトに出来た確率は7割以下。1割以上の差が発生しています。DERはチームの守備力を測る指標なので、もっと正確に分析するにはBatted Ballといった詳細な打球成績データ(例えば、ウェルヒット率などの強い打球が飛んだ割合)を調べないと結論は言えないのですが、数値から見る限り守備の影響は少なからずあったのだろうと思います。


リーグ全体から見る傾向

 次にマクロな視点で見ていきます。アジア各プロ野球リーグの投手スタッツです。今回は台湾CPBLにフォーカスしていますが、参考に韓国KBOのスタッツもついでに加えました。

 対戦打者に対する奪三振(K%)、与四球(BB%)、被本塁打(HR%)の割合を比較しました。台湾や韓国と比べると、日本の投手の方が奪三振K%や与四球BB%の割合が大きいことが分かります。つまり、それだけ日本の方が野手が守備でプレイに関わる機会の割合が少ない、ということになります。逆に言えば、台湾の方が野手が守備でプレイに関わる機会が、割合的に多いことになり、守備の良し悪しが与える影響も大きいということになります。1試合当たりのインプレー打球数も調べてみましたが、NPBよりCPBLの方が2本程度野手に飛んでくるインプレーの打球が多いことになります。(下表参照)


 次に各国のDERを見ていきます。

 CPBLの守備効率DERは、日本のそれよりもかなり低い値になっています。今度はこのDERのリーグ間の差と1試合当たりのインプレー打球数をかけて『日本の野手が守った場合に1試合あたりにヒットが何本減らせるか』を計算してみます。

 この結果から、日本の平均的な野手が守備についた場合ヒットが1本以上減る、という結果になりました。あくまで計算上の結果ですので、前述の通り打球の強さ等は考慮されていません。


 ここからはちょっとした遊びです。今度は②の結果を防御率に換算してみます。アウトの得点価値はリーグやシーズンによって異なるのですが、ここでは簡易的に計算できれば良いので、こちらのサイトに記載されているNPBの0.78としました。

Baseball Lab「Archives」 DERでチーム守備力を計測する ― 蛭川皓平http://archive.baseball-lab.jp/column_detail/&blog_id=8&id=32

 ③に対して、各国の1試合当たりの投球回数が微妙に違うので、それを補正したのが上記④の表です。④は『日本の野手が守った場合防御率がどの位減るか?』を表していて、ざっと平均して約0.9点程度変わってくることがわかりました。

 最後に④を実際の防御率に加えた結果が下の表⑤です。


失点率と防御率の差

 防御率は1試合当たりの自責点(投手の責任での失点)を計算した結果ですから、エラーによる出塁も含めた失点率との差も、守備力を表す指標として見ることはできます。

 結果は見ての通り、CPBLは失点率と防御率の差が非常に大きいことが分かります。それだけ失策が失点につながっているということです。イレギュラーが多いと言われる台湾の球場のグラウンドの問題とかもあると思いますが、CPBLのハイライト動画を見る感じでは送球捕球のエラーも多い印象なので、環境を言い訳には出来ない気がします…。


ちょっと中途半端な検証結果ではありますが、こんな感じでまとめたいと思います。

・台湾の方が野手の守備が試合に与える影響が大きい。1試合あたり2本程度 飛んでくる打球の数が違う。

・台湾の方が1試合にインプレー打球がヒットになる数が1本多い。防御率にして約0.9点分違っている。

・Batted Ballなどの打球データまで検証していないのでまだ正確ではないかもしれないが、CPBLの失点率と防御率の差を見る限り、やっぱり台湾の野手の守備がいいとは言い切れない。

 今回の検証をしてみての感想ですが、NPBよりCPBLの方が守備の重要性が高いのだとしたら、CPBLこそ打撃よりも守備指標を高く評価していく動きがあっても良いよいな気がします。または、日本以上に守備シフトを大胆に取り入れてもいいでしょうし、もっと守備面で工夫を凝らしていいように感じます。

~以上~

 コアなスポーツファンには『これからブレイクしそうな若手を発掘したい』という想いというか、楽しみ方があると思いますが、今回の企画はそんな感じのきっかけの話です。自分は専門家でないため、体の動かし方だとかメカニズム関係は詳しくないのですが、そんな眼が節穴な自分でもスタッツから何か分かることは多少見つかるのではないかな、と考えています。とくに2軍3軍のファームの個人成績は、1軍とは違ってスタッドキャスト系のデータは入手が困難なため、ファンが手に入れられるデータは、伝統的な打撃/投球成績かYoutube動画くらいしかありません。その限られた情報から何とか新たな情報を得ようと創意工夫をこらす必要がでてきます。


今回はパワーに注目してみた

 セイバーメトリクスでは、打者を評価する指標として、三振の多さ(K%)や選球眼(BB%やIsoD)などが使われますが、長打力を表す指標にIsoP(Isolated Power)があります。このIsoPは、長打率から打率を引いたものです。長打率には、単打が増えると長打率も増える構造になっているので、長打率から打率を引くことで”純粋な長打力”を評価しようという狙いがあります。(参照:SPAIA 「長打率とIsoPは何が違う?いまさら聞けない野球の指標」)

 そこでこのIsoPを使って、どの球団のファンも期待したくなる未来の”和製大砲”を発掘してみよう…と思ったのですが、このIsoPも構造をよく理解する必要があります。例えば”2塁打が多い中距離ヒッター”と”あたれば飛ぶホームランバッター”が同じIsoPの値になることが予想されます。例えば、去年のIsoPのランキングを見てみると、山田哲人選手(2B/東京ヤクルト)が2位に入っています。山田選手も本塁打35本も打っているので大砲と言えば大砲なのですが、2塁打も35本打っていて、いま発掘してみたい”とにかくパワーが凄い”ような選手像とはちょっと違うんですよね。

 そこで、長打の中で本塁打数の割合を見てみることにしました。この狙いは、『2塁打が多いのはパワーが足りなくて、外野フェンスを超えない打球が多いからだろう』という前提で割り切って、本当のパワーバッターならば打球はフェンスを越えるはずだ、という考えです。さらに本塁打数÷長打数だけでなく、分母に犠牲フライも加えてみます。犠牲フライもパワー不足で外野フェンスを超えなかった打球だと割り切ってしまおう、ということです。つまりは、、、 本塁打数÷(長打+犠牲フライ)という指標で評価してみました。結果は以下の通り。

 IsoPのランキングと比べると、よりパワーヒッター感が高まったように見えます。

 因みに2017~19年までのNPB1軍で、300打席以上の打者を対象に年度相関を確認してみました。尚、パークファクターの影響がでないよう、移籍していない選手のデータが対象です。結果、相関係数が0.82 と高い相関関係が確認できました。

 因みに今回はNPBが対象ですが、同様にMLBで2018→2019シーズンのデータを比較して見たところ、相関係数が0.59とNPBと比べると、年度相関が弱まわることが分かりました。同様に韓国プロ野球で年度相関は0.77でした。日本と韓国の場合は、外国人選手にパワーが必要な役割を任せているので、相関係数が高くなり易いのだろうと思います。メジャーの場合は、どのポジションでもパワーのあるバッターだらけなので、相関係数が少し低くなるのかなと思います。


HR/(XBH+SF)ランキング(ファーム)

 上記で考案した指標を使って、昨シーズンの2,3軍の選手のランキングを見てみます。

安田尚憲(IF/千葉ロッテ)は、今季主力として活躍している選手ですね。次に今季8月8日時点までのファーム成績を見てます。まだ試合数が消化してないので参考程度に見てください。

 1位は東北楽天で2019年ドラフト2位の黒川史陽選手(2B/東北楽天)。バットコントロールが巧い感じの選手で、Deltaのプロスペクトランキングではシンシナティレッズの秋山翔吾選手のようなタイプと評されていました。確かにヒットのほとんどが単打ですが、打った長打2本は2本とも本塁打。長打のサンプル数自体が少ないのでまだ何とも言えませんが、打球速度も速そうですし、実はこれから長打が打てるようになってくるのではないかと密に注目しています。

 個人的に注目したいのは、2018年ドラフト4位濱田太貴選手(OF/東京ヤクルト)でしょうか。球団からも将来の”右の大砲”候補と呼ばれている選手ですね。ヤクルトの外野はバレンティンが抜け、今後ベテランの青木宣親選手がいつまで活躍するか気になりますが、その後は結構チャンスが出てくると思いますので、競争が激しいと思いますが逆にチャンスは十分あるように見えます。

 とりあえず、今回はここまでです・・・。

~以上~

 前回の記事を書いていて『そもそもマイナーリーグってどうして出来たのだろう?』という疑問が出てきました。現在のマイナーリーグは、メジャー球団のために選手を育成し育てるという目的を持っています。1930年代にその様子をセントルイス・カーディナルスのGMが「トウモロコシのように農場で選手を育てていた」と表現したことから、今もマイナーリーグは『ファーム』と呼ばれています。


マイナーリーグの歴史

 現在のマイナーリーグの体制になるまでは色々段階的な経緯があったため、その起源が具体的にいつなのか言及するのは難しい所ですが、少なくともマイナーリーグ球団の前身組織は、今のメジャーリーグを形成するアメリカン・リーグとナショナル・リーグとほぼ同時期に誕生しています。つまり、メジャーリーグが先に発生してから、彼らが選手育成を目的にマイナーリーグ球団を作ったのではなく、元々リーグや球団が存在したところにメジャーとマイナーという上下関係が生まれたという流れなのです。アメリカのマイナーリーグのことを調べると必ず出てくる言葉が『独立採算制』ですが、上記の歴史的な流れを知るとこの言葉はマイナーリーグの特徴を表す言葉としてあまり適切ではないな、と感じます。と言うのは、『独立採算』という言葉はマイナーリーグ球団の会計的な側面をとらえたに過ぎず、もともと最初から組織として独立している訳ですから、わざわざ採算面だけを取り上げる必要はないということです。『独立採算制』という表現は、親球団が2軍3軍チームを含めて運営している日本やアジアのプロ野球の組織構造からみた見方であって、マイナーリーグ球団の関係者やファン辺りからすれば、(確かにMLBに依存した関係ではあるものの)あまりピンと来ない言葉なのではないかなと想像します。

 今日のマイナーリーグは、既出のセントルイス・カーディナルスGMであるブランチ・リッキーが、この選手育成システムを開発し成功したことで、他のメジャー球団も追随し一気に発展していきました。他の4大スポーツでも、アメフトNFLにはマイナーリーグはありませんし、バスケNBAも最近Gリーグが人気が出てきましたが、MLBのマイナーリーグのすそ野の広さは特徴的と言えます。では、何故これ程マイナーリーグ球団がたくさん生まれ発展したのでしょうか?


他競技との比較で見えたきたもの

 ここで、他の競技と比較してみると理解が深まるかもしれません。例えば、サッカーの場合「サテライトリーグ」や「リザーブチーム」といったチームがあります。これらも選手の育成が目的なので、野球で言うファームと同じ位置づけですね。これらのチームは、同国の3部リーグ辺りで試合をしていますが、全てのクラブチームにこのような「リザーブチーム」がある訳ではありません。サッカーの場合は、リザーブチーム以外にも「期限付き移籍」(いわゆるレンタル移籍)という選択肢もあって、他のクラブチームに選手を貸し出すことができます。身近な例でいうと、日本代表の久保建英選手が本所属のR・マドリ―ドから、同じスペイン1部リーグのマジョルカに期限付きで移籍したケースがあげられます。R・マドリ―もスペイン3部にリザーブチームを保有していますが、よりレベルの高い1部リーグでプレイした方が久保選手によって良いだろうということで、同じラ・リーガの下位クラブであるマジョルカへのレンタル移籍となったそうです。対して、久保選手の移籍先マジョルカからすると、移籍金を払わず戦力を補強できるといった利点があります。また、野球のマイナーリーグやサッカーのリザーブチームが専ら『選手育成』という目的を有して存在しているのに対して、サッカーの場合は、選手のレンタル移籍先のチームは『選手育成』のために存在している訳ではなく、他のチームとの勝敗を競う存在であるということは重要なポイントです。久保選手の例からすれば、移籍元のR・マドリ―からすればマジョルカで経験を積ませて成長してもらいたいという狙いがあるにしても、移籍先のマジョルカからしてみればラ・リーガで戦う上での”戦力”として久保選手を見ている訳です。久保選手の例は同じリーグ内でのレンタル移籍ですが、最近の日本人選手はビッククラブと契約した後に、ポルトガルなどの欧州中堅リーグにレンタル移籍となるケースが多く、レンタル先のクラブもステップアップした選手の移籍金で生業をしていることから、より育成に比重がかかった形になります。

 ところで、張本勲氏が何年か前に「J2は野球でいうと2軍」という誤った発言をし炎上しましたが、そう誤解した原因として考えられるのは「その国のトップリーグではない」という点のみであって、根本的に戦力の編成権限があるJ2のクラブと、メジャー球団が契約した選手を起用しより育成という立場が明確なアメリカのマイナーリーグ球団とでは決定的に存在意義が異なります。

 更にもう少し言葉を整理すると、厳密には『マイナーリーグ=ファーム』ではない、ということも触れておかなければなりません。メジャーかマイナーかは1900年前後の頃は、そのリーグや球団に資金力があるか無いかの違いでしかありませんでした。そこに選手育成契約(PDC)という関係が加わったことで、『マイナーリーグ=”選手を育成する”ファーム』という見方が一般的になった訳です。なので、例えば野球のメキシカンリーグは、MLBと選手育成契約(PDC)を結んでおらず、戦力編成権限も独自に持っています。その意味ではメキシカンリーグもメジャーリーグから3A相当のカテゴリーに分類されてしまっていますから、マイナーリーグではあるもののメジャーリーグのファームではありません。

 野球の場合、サッカーのように同じ同国トップリーグの球団や海外のクラブチームに育成したい選手を貸し出するようなことはありません。球団自体は別組織ですが、専らマイナー球団と選手育成契約を結んで、自前で選手を育てています。では、それは一体なぜなのでしょうか?


欧州型(オープンリーグ)と米国型(クローズリーグ)の話

  その答えを考える上で、この話は避けて通れないでしょう。いわゆる欧州サッカーに代表される欧州型(オープンリーグ)と、アメリカ4大スポーツに代表される米国型(クローズリーグ)には大きな違いがあります。

 欧州型は「自由競争」を志向しています。ある程度ルールはあるものの、基本的に球団は選手を自由に獲得できます。リーグもそれに対してあまり介入しません。当然、同じリーグの中でも戦力差が発生するので、毎年のように優勝争いをするビッククラブや昇降格を繰り返すエレベータークラブのようなチームも存在するという状態です。そして、自由に競争をさせる分、「昇格降格」が制度に組み込まれているおかげで、新陳代謝が発生する仕組みになっています。

 一方、米国型は「戦力均衡」を志向しています。これはリーグがチーム間の戦力差を是正することで”どちらが勝つか分からないぞ!”という魅力的な展開を生み出すことで、リーグ全体としての集客向上や価値を高めていこうという考え方に基づいています。「ドラフト制度」もこの考え方がベースとなっているます。ドラフト制度はリーグ/球団側に主導権がある訳ですが、欧州ではこれは独禁法に抵触する等の理由のため、基本的にドラフト制度が禁止されています。これは、リーグを1つの運営母体として見るか、チームを1つの運営母体として見るかの違いで、どちらが良い悪いという話でもないのだろうと思います。また、良い悪いという話以前に、「自由競争」と「戦力均衡」の2択ではない、ということです。例えば、サッカーJリーグでは欧州サッカー同様に選手獲得は自由で昇格降格もありますが、放映権などはリーグから分配されますし、うまく「戦力均衡」とのバランスを取ろうという試みが取り入れられています。また本来欧州型のラグビーフランスリーグ”TOP14”では、プロ化以降にサラリーキャップ制が取り入れられています。結局の所、どっちかに偏った結果は良くないということですね。因みに、サッカーの場合裾野が世界中に広がっているため、例えばクラブチームが国際大会で活躍するにはある程度ビッククラブを作り出していかないと、リーグとしての価値が下がってきてしまう、というまた別の事情があることも踏まえておかなければなりません。


マイナーリーグで選手を育てる理由

 話を元に戻すとして、なぜサッカーにはレンタル移籍という選択肢があるのに対し、野球は自前で選手を育てるのが主流なのでしょうか?答えは『借り手がつかないだろう』ということ。サッカーの場合、移籍先のクラブは戦力としてレンタルしている選手を見ています。戦力均衡策がとられている野球において、弱い球団と言ってもメジャー球団であることに変わりはありません。育成型レンタル移籍の場合、貸し出そうとする選手はまだメジャーレベルに届かないマイナーレベルの選手であって、戦力が均衡しているメジャーやプロ野球の舞台において戦えるクラスの選手は中々稀な存在です。当然、レンタル移籍先もまだメジャーレベルで通用しない選手を戦力として借りる理由は無い訳です。また、野球は基本的にサッカーのような降格の心配がないので、「タンキング」に代表されるように成績が不振であれば翌年のドラフト指名権を得るために大胆に戦力を落とす、ということも出来てしまうのです。レンタル移籍は移籍元に帰ってしまう可能性が高い訳ですから、それならばドラフトで獲得した自軍の若手選手をメジャーに昇格させて経験を積ませた方がよっぽど長期的なメリットがあるのです。仮にレンタル移籍が実現した場合、プレーオフや優勝を狙う「コンテンダー」球団が借りて回ることは考えられますが、彼らが欲しいのは実績のない若手選手ではなく、戦力として計算ができる実績おなるメジャーリーガーですから、育成段階の選手でレンタル移籍は成立し難いのです。やはり、レンタル移籍は選手の自由競争・自由獲得を前提としている欧州型のスポーツであるからこそ成立しているのであって、米国型の野球の場合、戦力均衡策としてほとんどの選手をドラフト経由で選手を獲得しなければならない以上は、彼らに試合経験を積ませる必要であって、選手を借りてくれる球団が中々無いなら自分たちで試合をする環境を作り選手を育ていくしかない、ということのなのでしょう。


すごく広いアメリカ野球の裾野

 同じ米国型のスポーツでも、アメフトNFLやバスケットボールNBAは、MLBと比べるとファーム組織は広くありません。NBAには『Gリーグ(ゲータレード・リーグ)』がありますが、Gリーグ所属の選手は2Way契約の選手を除くと直接NBA球団に契約が結ばれている訳ではありませんから、野球のマイナーリーグとはちょっと違います。野球には20世紀前半から存在する歴史のあるマイナー球団がたくさんあります。これらのマイナー球団は、メジャー球団がよく地元自治体から球場の建設費や使用料の優遇の受けているのと同様のバックアップを受けていることが珍しくありません。例えば、3Aクラスに属するシャーロット・ナイツという球団は、1試合平均9,000人近い集客を誇っています。2014年に公的資金が投入され立地の良いBB&Tボールパークに拠点を移してから、観客数が増加したそうです。やっぱり立地は大事ですね。(因みに扉絵の球場はこのBB&Tボールパークです。これだけの球場がファームというは驚きです。)ファーム球団にも関わらず、その観客数は台湾プロ野球球団は大きく上回り、韓国プロ野球球団並みの集客を記録しています。しかしまぁ、よくスポーツの1つに過ぎない野球のマイナー球団に対し地元自治体がここまで協力しているなぁと思います。日本や他の国であったら中々考えられないことですね。アメリカの地元自治体がこれほどいちプロスポーツ組織(しかもトップではない)をバックアップするのも、それだけ潜在的なファン層からの声や後押しが存在するからこそ、これほど有利な条件を地元自治体から引き出せたのでしょう。


マイナー球団間の競争

 選手年俸はメジャー球団が負担、球場使用料も地元バックアップを受けている。日本の独立リーグ関係者からすれば、球団の運営費用の中でも割合の大きい2費目で有利な状況な訳ですから、非常に羨ましい環境かと思います。ただ、ここで忘れていけないのは、マイナー球団間でも”競争原理が働いている”という点です。マイナーリーグの球団は、提携先のメジャー球団が頻繁に変わります。メジャー球団からすれば、育成環境に優れた球団体制や経営手腕、地理的条件など、自らのニーズに合致した球団の方が望ましい訳です。

 下のグラフは所属するマイナーリーグのレベル(3A、2A、1A+・・・)と平均観客動員数との関係を表したものです。必ずしも絶対的な関係ではありませんが、1A+より2A、2Aより3Aの方が観客が多い傾向が見られます(相関係数=0.448)。つまり、リーグのレベルが高い方が集客し易いということです。参考までに、フランチャイズしている地元の都市人口が集客に影響を与える影響を調べました(相関係数=0.535)が、これに匹敵するくらい所属リーグレベルというのは重要だと分かりました。高いリーグレベルの方が、メジャーリーガーの予備軍やメジャー経験のあって比較的名前の知れた選手が多くなるわけで、そういった選手を見たいために球場を足を運ぶ。なので、この関係は理屈的にも理解できます。

 となると、マイナーリーグ所属球団としては、マイナー最高峰の3A球団を目指したいと考えるのは自然な話です。アメリカの地元自治体としても、”おらが街の球団”がより多く集客できる2Aや3Aの球団になってもらった方が、経済効果が望めてありがたい訳ですから、費用対効果が成り立つならばマイナー球団に協力し易くなります。この関係は、ファーム組織が親球団と独立した関係にないアジアのプロ野球球団には無いものです。例えば、鎌ヶ谷を拠点とする北海道日本ハムファイターズの2軍が、翌年から埼玉西武や千葉ロッテの2軍と交換するようなことはありえない訳です。例えば、本拠地移転を交渉材料により良い条件を引き出す手法は少しネガティブなアプローチであって、前提として集客力がないと武器になりませんが、より高いレベルのリーグを目指すという姿勢はポジティブは交渉材料になります。そして、ある程度地元でエンターテインメントコンテンツとして成り立つ所まで成長してしまえば、この競争原理はメジャー球団⇔マイナー球団⇔地元自治体の間でうまく好循環方向に働いてくれるのだろうと思います。


日本のファーム組織の課題と提言

 今回マイナーリーグを研究していく中で、アメリカの野球のすそ野の広さや仕組み,集客力に改めて感嘆したのですが、では彼らを真似すれば同じことが出来るかというとそうでない、事もよくわかりました。

 まず、日本ではこれほど自治体が協力してくれることは考えられません。野球以外にも様々なスポーツがある日本において、特定のスポーツに集中するような投資は、公平性が欠けるという指摘が地元住民から来る恐れがあるからです。よほど確定的な費用対効果でもない限り自治体も動けないことでしょう。また一番最初に書いた通り、組織が全然違います。マイナー球団とは言え、もともと独立した組織として100年近い歴史を持ち、ずっと地元に根差してきたチームと同じことをやって同じ結果が得られるとは考えにくいでしょう。


 そこで私の意見ですが、もう少しイースタン・リーグ/ウェスタン・リーグをブランディングしてもいいのではないかと思います。やっぱり、アメリカ程の集客は無理にしても、どう考えても今のファームの観客動員数が少なすぎますね。例えば、福岡ソフトバンクホークスなどはアメリカ流の独立採算制を志向し、『タマホーム スタジアム筑後』のファンとの距離が近さに代表されるように1軍との差別化を図った結果、観客動員数もファームの中では1番集客しています。それでも平均2,000強。これはサッカーJ3の中でも真ん中位と同じ人数です。

 ホークスはまだファームに力を入れている方ですが、一方でファームにあまり投資をしない(とうより出来ない)球団もある訳です。東京ヤクルトの戸田球場などはプロ野球選手のプレイする球場というには寂しい感じがします。河川敷にあるという立地といい、ヤクルトファンである筆者からすると、タマスタ筑後とまでいかなくとももう少し何とかならないかなと思います。そして、同じファームとは言え、親球団の資金力やファームに対する考え方で、12球団の中でも大きなバラつきがあります。12球団の中でも、ファームの試合でイベントを多く行う球団もあれば、そうでない球団もあります。後者は「ファームは育成が仕事」と考えれば、確かにその方が正論です。ただ、米国型のリーグを1つの運営母体と考えたときに、このバラつきが果たしてどうなのか?と考えると、私はマイナスだと思います。


 そこで具体的な提案に移りますが、プロ野球のファーム組織を「欧州型のオープンリーグ」にしてしまってはどうかと考えました。プロ野球の2軍と、3軍&独立リーグのチームを上位リーグ/下位リーグに分けてリーグ戦を行い、そこに昇格&降格をつけてしまうという発想です。2軍(イ・リーグ/ウ・リーグ)で最下位だったチームが3軍リーグに降格します。(現在はイ・リーグ/ウ・リーグどちらもチーム数が奇数なので、初年度の2軍リーグは降格なし、代わりに3軍リーグから昇格をつけるとします。)更に、2軍と3軍両方を有している球団の場合は、この昇格降格の対象外になります。また、ここがポイントなのですが、Jリーグのクラブライセンスのように、昇格に際して球場施設にも一定の条件を課します。

 なぜ、このような奇天烈な提案を思いついたかと言うと、1つは独立リーグ再編の意図があります。野球選手がプロ入りするパターンは超ざっくり言うと、最初のチャンスが高卒、次に大卒か社会人、最後に社会人出身、というように20代半ばになってもまだ可能性は残されています。しかし、社会人の野球部が減少する中、それを補完する受け皿として独立リーグの球団がどんどん各地で拡大してきています。しかし、少子化&野球人口の減少で、最後の受け皿である独立リーグのタレント確保がより難しくなっていくことが予想されます。野球人口の減少に歯止めがかからない限り、恐らくどこかで独立リーグのチームの淘汰や再編が避けられないのではないかと考えています。そうなったときに、欧州型のオープンリーグにし競争原理のまま進めてしまった方が、再編の流れに対して早目に資本が集中できるのではないかと考えた次第です。例えば、四国ILの香川やBCリーグの栃木などは、集客の面で比較的良い結果をだしていますし、こういったチームにお金が集まった方が、入団する選手の側からしてもアピールの機会が多いことがよくわかりプラスなのではないかと思います。もちろん、こんなことを書くと現在集客に苦労している球団の関係者やファンから怒られそうですが、これだけ競技人口の減少に歯止めがかからないとなると…、と何事もなく今後も続くとは考えづらいかなぁと・・・。

 プロ野球側の視点で見ると、本来ファームでは勝敗を気にせず育成重視の起用ができるはずなのに、もし降格してしまったらレベルの落ちる相手としか対戦ができなくなってしまう訳で、(自分で言っておいて何ですが)無茶苦茶な提案だと思います。でも、勝敗を気にしない起用を続けられるやり方が1つあって、それが3軍チームの創設です。ある意味3軍制導入を推進させるような制度です。3軍が導入されれば、3軍で成長したタレントが2軍に召集されるので、2軍のプレイレベルの維持に繋がります。さらに「昇格に際して球場施設にも一定の条件を課す」という所が問題になるだろうと思いますが、もうこれは強引すぎるやり方だとは分かっていて『2軍とは言えプロなのだから、プロに見合った環境を用意してあげてよ』っていう話です。いやならば3軍リーグに降格です。

 現実的ではない提案ではないことは重々承知ですが、感覚的にはプロ野球の2軍って言ったら、サッカーのJ3を少し上回る3~4千人程度の平均観客動員数があっても不思議じゃないはずだと思いますので、今回あえて奇想天外な提案を考えてみました。いずれにしても、集客の意識だったり選手のプレイ環境を揃えてあげたり、NPBの球団が何かしらどこかでお金をかけないと、明るい将来は見えてこないのではないかと思います。

~以上~


[参考文献]

小林至:プロ野球ビジネスのダイバーシティ戦略、PHP研究所、2019年

鈴木透:スポーツ国家アメリカ、中公新書、2018年

 コロナの影響で開幕が延期されていた世界各国の野球リーグが、徐々に再開される動きが本格化してきました。日本のプロ野球もようやく再開し、無観客の寂しさはあるものの漸く3か月遅れの球春(?)が到来となりました。一方で、海を超えたメジャーリーグの方は、球団と選手の折り合いが中々ついていないようで、開催が不透明な状態が続いています。

 一方、メジャー傘下マイナーリーグの球団数を削減するという話が去年話題になり、今年4月になって、MLBとマイナーリーグの間で現在のマイナー球団数160チームから120チームへの削減に合意されるという報道がありました。背景には、マイナーリーガーの待遇の改善、長距離移動の負担低減といった目的があるようですが、これはアメリカのマイナーリーグが独立採算であるが故に起きている問題とも言えます。


マイナー球団削減

 そもそも「MLBとマイナーリーグの間で」と書きましたが、マイナー球団は地元の独立資本のチームなので、MLBとは別々の組織になります。なので、マイナー球団が提携先のメジャー球団を変更するケースもよくあります。メジャー球団は放映権という莫大な収入源を持っていますが、独立採算のマイナー球団では、彼らの収入の多くがチケット代やグッズや物品販売などスタジアムでの消費されるものの売上が多くを占めています。そうすると、観客数の少ない球団ほどマイナーリーガーの待遇は厳しくなる訳で、観客動員数はレベルが下がる程少なくなっていきますから、今回のマイナーリーグの球団数削減の対象も、底辺となる1Aショートシーズン以下になっています。以前特集した『世界の平均観客動員数ランキング~2019~』を見ていただければわかる通り、やはりマイナーリーグのレベルによって観客動員数にも差が出てきます。3Aでは1試合平均7千人弱、2Aでは平均4~5千人程度を集客しているのに対し、1Aショート以下では1~3千人くらいです。その分球団の売上も少なくなる訳で、球団経営を成り立たせるにはコストを抑えるため選手の待遇も抑えざるを得なくなります。日本のプロ野球のように、トップの球団が2軍3軍ファーム組織を丸抱えしてくれる場合、球団トータルで収支が取れていれば、このような問題が起こることはなくなります。なので、メジャー球団がサポートを入れるというのも手段な一つのように思いますが、”言うは易し”で実際やろうとすると色々と難しい課題が出てくるのかもしれません。


世界の野球への影響考えてみた

 では1A-やルーキーリーグ球団が無くなるとどうなるか?考えてみました。(因みに、あくまでメジャー球団との提携が無くなる、という意味であって、チームによっては独立リーグのような形で存続するチームも出てくるかもしれませんが、ルーキーリーグには球団直営の所もありますし、選手の受け皿(枠)は明らかに少なくなるでしょう。)今回解雇される選手というのは、年齢が20代後半に差し掛かっていて将来性が望みにくい3A/2Aクラスの選手とか、元々削減対象の球団に所属していて伸び悩みの傾向が出ている20歳前後の若手選手だろうと思われます。”エイジングカーブ”という形で年齢に伴う成績の落ち込みが数値化されてしまっていますから、元々年齢にシビアなメジャー球団らは兎に角将来性が低いと思った瞬間にばっさりクビにします。そうすると、残ることが出来た選手が上のレベルで空いたポジションを埋める形で昇格することになります。それまで、3Aからルーキーリーグまで6つのプレイレベルに階層分けされていたものが、4つ(3A/2A/1A+/1A)に減るので、1つのレベルの選手のプレイレベルのバラつきが若干大きくなるのではないか?と思われます。なので例えば、削減前だったら1A-やルーキーリーグでプレイするレベルの選手が1Aというステージで戦うことになる訳ですから、削減前だったら対戦することの無い相手と戦う機会が出てくることになりますので、ここから上のレベルに昇格することが以前より難しくなるだろう、と予想されます。もちろん、メジャーに昇格するには、いずれRk→1A-→1A→1A+、、、と昇格していかないといけないので、結局後で対戦しなければならないのですが、育成の段階を踏むステップが荒くなります。この結果、1Aに入団したての選手にとっては成績を出し難くなるのではないかと思います。

 そうすると、大変なのが野球後進国出身のプロスペクト(若手有望株)選手でしょう。メジャーのスカウト網は世界中に広がっているので、欧州などの野球後進国にいるプロスペクトもメジャー球団とマイナー契約を結んだ後は、ルーキーリーグからキャリアをスタートします。野球後進国出身の選手は、アメリカという異なる環境への適応というハンデも抱えているので、同国出身の選手と比べて超えるべきハードルが多くあります。更に、野球強豪国のドミニカ共和国やベネズエラといった国ならば、その辺のノウハウは先輩メジャーリーガーから色々聞かされているでしょうからまだ有利ですが、後進国はそもそも選手数が少ないのでよりハンデの大きい環境にあります。なので、ここにマイナー球団数の再編で昇格のハードルが高くなれば、削減前よりも野球後進国からスタープレイヤーが誕生する可能性が低くなるのではないか?と思うのです。


日本野球への影響

 マイナー球団の削減により、1Aショート以下の選手の見切りが早まるでしょうから、中にはまだ才能を残しているダイヤの原石もいるだろう、と。そうすると日本のプロ野球球団との契約を目指して、来日してトライアウトを受けたいというラテン系の選手も増え、中には掘出しモノがいる確率も増えてくるような気がします。メジャーリーグとプロ野球では外国人選手に求められる基準が違いますから、日本の野球なら合う選手はいるでしょうし、プロ野球球団にとってもこの流れは若干プラスに働くはずです。(あくまで”掘出しものが見つかる”可能性なので、影響は”若干”でしょうけど。)

 一方、野球後進国の選手からすると、強豪国出身の野球選手がアメリカだけでなく日本野球も流れるので、日本もより狭き門になるかもしれませんが、それでも日本でプレイしたいと思う選手は増えるような気がします。というのも、野球後進国の選手からしたら、今まで野球のキャリアを積むならばアメリカか、アメリカがダメなら母国に戻るか、という選択肢が大半で、文化の大きく違うアジアの野球への関心はそこまで高くないのではないかと思います。でも、今コロナの影響でMLBの試合が開催されていないため、アジアのプロ野球のプレゼンス,存在感が高まっています。これは今年に限った話だけでないですが、近年のFA市場の停滞により、オリックスにアダム・ジョーンズという大物が来日したようにメジャーでも実績のある選手が獲得されるようになっていますし、カーター・スチュワートJr(SP/福岡ソフトバンク)のようなプロスペクトが日本を選択したことは大きな意味があります。一方、韓国ではアディソン・ラッセル(SS/前シカゴ・カブス)がキウム・ヒーローズと契約しましたが、裾野の小さな韓国と比べれば、自分の実力を証明するチャンスや舞台が沢山あるのは日本なので、まだこれからキャリアが望める選手からすればアジア野球の中での選択肢は日本ということになるでしょう。特に投手ならば、マイルズ・マイコラス(SP/元読売)やトニー・バーネット(RP/元東京ヤクルト)のように、メジャー球団と契約するチャンスもあるかもしれません。彼らからすれば、アメリカへのキャリアが閉じてしまう訳ではないということですね。

 なので、例えば野球後進国の若手有望の投手が、四国ILやBCLなどの日本の独立リーグに来てもらってそこで活躍し、日本のプロ野球球団と契約なんかしたりしたら、(ちょっと妄想始まっていますが)これは新たな成功モデルになるのではないでしょうか?さらにその選手の活躍が、母国での野球発展に繋がると嬉しいですね(妄想出来上がり)。


韓国や台湾は影響あまり無い?

 韓国はメジャー~3Aの外国人選手を獲得するのが主なので、マイナー球団の削減よりもFA市場の動向の方が、外国人選手の獲得に影響が大きく出るような気がします。

 気になるのは台湾の方です。まず、マイナー球団削減前の状態を振り返ります。日本や韓国と比べると球団の予算が少なく外国人選手に払える給与が少ないので、日韓のようにバリバリのメジャーリーガーをすぐ獲得する、という現象はまだ起きていませんが、いち早く台湾プロ野球(CPBL)を再開したことでアメリカでの認知度は高まりました。マイナー球団の削減の影響は、台湾出身の野球選手(いわゆる”海外組”)に影響が出ているのでるのではないか、つまりアメリカから台湾に戻ってくる海外組が増えるのではないか?と思います。これがCPBLに良い影響となって出てくれれば良いのですが…。

 一方でメキシカンリーグ(LMB)は、買い手(球団)が強くなるので選手獲得がし易くなるのではないでしょうか?カンナムリーグの消滅で、アメリカ独立リーグも再編の動きを出している中、観客動員が停滞するメキシカンリーグでも同じ流れが出てくるかもしれませんが、そもそもメキシカンリーグの方がメジャーリーガーの受け皿っぽいイメージがありますし、実際そうなっていると思います。メジャーリーグの再開の道筋が見えないなかで、メキシカンリーグが彼らより早く開催できれば、その立場を利用して更により良い選手を獲得できると思います。メキシカンリーグの球団は、メキシコ出身以外の選手に対し”育成”という視点でみることはあまり無いだろうと思いますから、低いクラスのマイナーリーガーにとってはメキシカンリーグへの道はちょっと厳しいのかもしれません。

 なので他の国と比べると、独立リーグなど裾野が広い日本の野球界が一番の受け皿になり得るのではないかと思います。


マイナー球団削減はやっぱりマイナス

 でも結局の所、この1A-やルーキーリーグのマイナー球団の削減は、アメリカの野球マーケットの縮小を意味しているので、必ずしも野球にとっていいことかと考えると、マイナスの方が大きいように思えてなりません。既述の通り、1Aショート以下の1試合平均観客動員数が1~3千人程度と書きましたが、実はサッカーJリーグの3部J3の平均観客動員に近い数値です。1Aショートはサッカー風に言えば『5部リーグ』に該当しますから、野球の方が試合数も多い中でこれだけの観客を集めているということは、かなり凄いことだと思います。日本のプロ野球の2軍でも、観客動員はこれより少ない所も普通にありますからね。

 なので、マイナー球団の世界の野球への影響というテーマで考察してみましたが、選手のプレイ機会という意味では、アメリカ国外に受け皿はそれなりにあるのかもしれません。しかし、経済的な観点で見ると、アメリカで集めていた程の観客が集めることははっきり言って難しいしょうから、マーケットとしての縮小にはなるでしょう。5部リーグ相当で、ここまで集客が出来ているのは、月並みの言葉ですが、”地元密着”の経営の元『オラが街の球団』として築かれた土壌があるからこそ成り立っているのでしょう。これが1年くらいで消滅の危機に瀕してしまうのはあまりに勿体ない気がします。なので、延命という形でもいいので、やっぱりメジャー球団のサポートをしてでも球団運営を維持すべきだと思います。


まとめ

長文になってしまったので、以下まとめです。

・球団数が減る分、3A2Aへの昇格への道のりは厳しくなる。

・コロナ影響も相まって(特に野球後進国出身の)選手にとって、裾野の広い日本野球のプレゼンスは高まる。日本発の野球後進国への発展に期待したい。

・日本も凄いけどアメリカのマイナーリーグのマーケットの裾野はさらに凄い。これを短期間のうちに無くしてしまのは非常に勿体ない!

~以上~




 4回に渡りオランダ国内リーグ『Honkbal Hoofdklasse』の特集をしてきましたが、最終回はこれまでの攻撃・投球・守備の評価をまとめた総合力を評価したプレイヤーズランキングを見ていきたいと思います。プレイヤーズランキングの基準は、攻撃はwRAAとwSB、投球はRSAA(FIPベース)、守備はRRF守備得点というセイバー系の得点指標を用いました。各指標の合計値は、その選手が同リーグの平均的な選手に対して何点分の得点貢献をしたのかを表します。


PLYAER's RANKING'19!

 早速ベスト3から見ていきましょう。


1位 ギルマー・レジナード・ランぺ Total 22.8 pt

(打撃 +22.3/盗塁+1.3/守備▲0.8)

 wRAAでリーグトップの+22.3ptをマークしリーグMVPも獲得したレジナード・ランぺ(OF/L&Dアムステルダムパイレーツ/アルバ出身)が、プレイヤーズランキングのNo.1を獲得しました。守備は平均的なスタッツですが、打撃による得点貢献が大きくランキングNo.1の要因となりました。


2位 デンゼル・リチャードソン Total 21.1pt

 (打撃 +19.7/盗塁+1.6/守備▲0.2)

 ランキング2位は、ランぺと同じく打撃による貢献度の大きかったデンゼル・リチャードソン(CF/L&Dアムステルダムパイレーツ/シント・マールテン島)です。ランぺよりも年齢が若く、盗塁による得点貢献もランぺより高いですが、打撃系スタッツが僅かに届かず2位となりました。ランぺ以上の打席数を与えられていたら、1位と2位が入れ替わっていたかもしれません。


3位 ラース・ハイヤー Total 20.0pt

 (投球 +19.8/守備∔0.2)

 3位にランクインしたのは2019年シーズンのリーグ最優秀投手に選ばれたラース・ハイヤー(SP/ホーフトドルプ・パイオニアーズ/オランダ本国)です。シアトル・マリナーズのプロスペクトだったハイヤ―は現在25歳。2位のリチャードソンも同じく25歳で、本人にその気があるかわかりませんが、年齢的にはまだ上位のリーグで活躍するチャンスがあってもいい年齢かなと思います。昨年のプレミア12では、将来のメジャーリーガー候補だらけのアメリカ代表と対戦。最後は一発を浴びてしまいましたが、トッププロスペクトのジョー・アデル(CF/ロサンゼルスエンジェルス)から三振を奪っています。


続いて、4位以下含めたランキングトップ20は以下の通りです。

4位にはオランダ代表の常連で高い三振率をマークしたオーランド・イェンテマ(SP/キュラソー・ネプチューンズ/ドミニカ共和国)。守備指標でNo.1に輝いたルエンドリック・ピテルネッラ(RF/HCAW)は打撃スタッツはリーグ平均レベルで、ほぼ守備の貢献だけで11位にランクインしています。

 ポジションで見ていくと、捕手のNo.1はロドニー・ダール(C/HCAW)が攻撃と守備両方の面で高い得点貢献値をマークしていました。また、オランダ代表のメジャーリーガーがポジションかぶりして交通渋滞を起こしている二遊間ですが、セカンドでNo.1のベンジャミン・ディール(2B/キュラソー・ネプチューンズ)は全体で6位。またWBC’17オランダ代表のスティン・ファンデル・ミール(SS/キュラソー・ネプチューンズ)がショートでNo.1を獲得し、全体では17位でした。彼らがメジャーリーガーだらけのWBCオランダ代表に割って入るのは至難の業ですが、東京オリンピックの予選や次回プレミア12などではチャンスがあると思いますので、何とか頑張ってもらいたいものです。

 個人的に一番注目したい選手はピテルネッラですね。年齢的にも若くアメリカ進出を希望しているようですので、ディディ・グレゴリアス(SS/フィラデルフィアフィリーズ)のように、オランダ国内リーグ出身の選手として、アメリカで活躍していってもらいたいものです。


最後に20以下の注目選手をピックアップしてみました。

 日本の独立リーグ琉球ブルーオーシャンズに復帰した吉村裕基は全体33位。打撃よりも守備での貢献度が高かったという結果でした。また、オランダ代表の常連で、昨シーズの最優秀投手だったディエゴマー・マークウェルは全体32位でした。同じくオランダ代表常連のシャーロン・スコープ(ジョナサン・スコープの兄)は全体38位でした。


と言う訳でフーフトクラッセ特集完結です!ありがとうございました。

~以上~


 オランダ国内リーグ”フーフトクラッセ”特集の第3弾は打撃スタッツです。WBCオランダ代表の打線は、アメリカで活躍するバリバリのメジャーリーガーだらけではありますが、彼らに割って代表入りするような打者が果たしているのか?早速Batting Statsを見ていきましょう。打撃評価として用いるのはwRAA(=Weighted Runs Above Average) です。wRAAは『同リーグの平均的な打者が同じ打席数立った場合と比べてどれだけ得点を増やしたか?』を表す指標です。このwRAAは、wOBA(=Weighted On-Base Average/加重出塁率)という『打者が1打席あたりにどれだけチームの得点増に貢献したか?』を表す指標で、出塁率と同じ位のスケールになるような計算式になっています。そしてwRAAは、その選手のwOBAがリーグ全体のwOBAに対してプラスかマイナスか?と、どれだけ打席数に立ったかで計算されています。(計算式の詳細はこちらを参照ください。)


wRAAランキングNo.1はP12代表選手

 第1位はレジナード・ランぺ(OF/L&Dアムステルダムパイレーツ)でwRAAは+22.3ポイントでした。プレミア12ではオランダ代表に選出されていますが、その時は”ギルマー・ランペ”とも紹介されています。プレミア12ではチームと同様に目立った活躍は出来ませんでしたが、国内リーグでは打率.382/OPS 1.097 という素晴らしい成績でした。ランぺに続いたのは、同じアムステルダムのチームメイトのデンゼル・リチャードソン(CF/L&Dアムステルダムパイレーツ)です。珍しいシント・マールテン島出身の選手で、打率.388/OPS1.078と首位のランぺに遜色ない成績を残しています。ランぺと比べてwRAAが若干少ないのは、打席数の差だけで”率”系はほとんど同じと言えるでしょう。3位にはオランダ代表の常連ドウェイン・ケンプ(3B/キュラソー・ネプチューンズ)が入っています。また、12位にはWBCオランダ代表のスティン・ファンデル・ミール(SS/キュラソー・ネプチューンズ)、16位にこれもWBCオランダ代表のシャーロン・スコープ(SS/L&Dアムステルダムパイレーツ)がランクインしています。

 投手のセイバー指標RSAAのランキングでは、中堅~下位チームからもランキング上位に入ってくる選手が割といましたが、打撃のwRAAランキングでは、キュラソー・ネプチューンズとアムステルダムパイレーツの2強の選手の占める割合が多いようです。また、リーグ全体に言えることですが、本塁打の数が少ない。42試合で最多HRが6本ですから、NPBの144試合に換算してもHR20本程度にしかなりません。

 次に各打者の特徴を示すスタッツを見ていきます。全体的にランキング上位の選手はBB%(四球率)が高いですね。そんな中、ドウェイン・ケンプ選手のスタッツは目立ちます。三振が少ないが四球も少ないタイプで、上位の選手の中では異質な感じがします。それにしてもSO%が2.1%というのは異常です。(データ間違っているのではないか?と思いましたが合ってました。)また、1位のレジナード・ランぺ選手と2位のデンゼル・リチャードソン選手はBABIPがなんと4割越え。BABIPは3割前後で落ち着く傾向がありますので、昨シーズンの成績は”出来すぎ”の可能性が高いです。ただ、そんなBABIPの結果は関係なく今後も活躍して、メジャーリーガーひしめく層の厚いオランダ野手陣に割って入っていってもらいたいものです。


ついでにwSB(SPEED)ランキング

 おまけに盗塁能力のランキングも見ていきましょう。盗塁はwSB(=Weighted Stolen Base Runs)というセイバー系指標を見てきます。wSBは『リーグ平均的な盗塁能力をもった走者と比べて何得点分貢献したか?』を表す指標です。計算内容を超ざっくり説明すると、盗塁1に対し盗塁死を▲2の割合で評価したものです。結果は以下の通り。

 盗塁力キングはオリバー・ファン・デ・ワイス(2B/HCAW)で盗塁23でした。盗塁数自体もリーグトップですが、その成功率も非常に高いものでした。打撃スタッツ3位のドウェイン・ケンプが盗塁力ランキングでも2位に入っています。首位ワイスとの差は盗塁1つだけでした。


次回はこれまでの総集編ということで「フーフトクラッセ2019 プレイヤーズランキング」です。

~以上~

 前回(オランダ野球 Hoofdklasse 守備指標ランキング)に続き、今回は投手指標のランキングです。投手の評価は、奪三振、与四球、被本塁打などの野手の守備が関与しないスタッツから計算する疑似防御率 FIP (Fielding Independent Pitching)を使います。そして、このFIPをRSAARuns Saved Above Average)という指標も掛け合わせた『RSAA(FIP)』を最終的な投手評価として採用します。RSAAとは、ある投手が登板した時に同リーグの平均的な投手が同じイニング数を投げた場合と比べてどの程度失点を防いでいるかを示す指標です。RSAAは本来失点率を使うのが一般的ですが、失点率の代わりに防御率ベースのFIPを用いることで、守備の影響を除いた失点抑制の貢献度を測ります。

 RSAA(FIP) = (リーグ平均防御率-FIP) ✕ 投球回 ÷ 9


No.1はHuijer,注目は3位 Robberse

早速ランキングを見ていきましょう。

 トップはラース・ハイヤー(SP/ホーフトドルプ・パイオニアーズ)でした。パイオニアーズ所属ということで、キュラソー・ネプチューンズとL&Dアムステルダムパイレーツの2強を相手にしなければならない状況で見事な成績と言えます。2位はオランダ代表のベテランオーランド・イェンテマ(SP/キュラソー・ネプチューンズ)。そして3位はなんと昨年17歳だったセム・ロバース(SP/クイック・アメルスフォールト)。最年長はご存知オランダ代表のレジェンドロブ・コルデマンス(SP/L&Dアムステルダムパイレーツ)で6位。ロバースとの年齢差は実に27歳差でした。3位のセム・ロバースは、同じく17歳のジオルジェニー・カシミリ投手と共にトロントブルージェイズとマイナー契約を結んでいます。この成績を見るとメジャー球団のスカウトから声がかかるのも納得がいきます。

 一方で、イェンテマやコルデマンスだけでなく、7位ジム・プローガー(SP/L&Dアムステルダムパイレーツ)、8位J.C.スルバラン(SP/DSS)、12位ディエゴマー・マークウェル(SP/キュラソー・ネプチューンズ)ら、WBCオランダ代表メンバーも上位に入ってきていますが、もう少し20代の選手が入ってきてもいいような気がします。

 次に各投手の特徴を表すスタッツを集めてみました。

 首位のハイヤー投手は、投球数の少なさを表すP/IPでも1位を獲得しています。2位のイェンテマ投手は、奪三振率SO/9でトップの11.0をマークしています。そして先ほどのセム・ロバース投手は、与四球の少なさも優秀ですがGO/AO(ゴロアウト/フライアウト率)の値が2.64と非常に高く、国内リーグではグラウンドボールピッチャー化していたことが分かります。いかにも安定化のありそうなスタッツですね。

 次回は打者編です。

~以上~

 毎年オフシーズンに、世界中で多くのプロ野球選手が戦力外の通告を受けますが、特にアメリカマイナーリーグの首切りはえげつなく、まだまだ20歳前半の歳の若い選手でも容赦なくバシバシ見切りをつけています。その光景を見ては『まだもうちょっと様子見てみないと華が開くか分からないのではないの?』と思ったりします。例えば、NPBで育成契約を結ぶドミニカ共和国などのラテン系外国人選手の中には、一度マイナーリーグをクビされている選手がたくさんいます。彼らがプロ野球の1軍でもそこそこ活躍している様子を見ると、マイナーを解雇されたような選手の中にも、まだまだ才能が発揮できていない選手が結構いるのではないかと思えて仕方がありません。特に最近はマイナーリーグの球団数を削減するなんて話も出てきていますので、もし実際にそうなると解雇される選手が大量に発生し、彼らがアメリカ独立リーグや世界各地のリーグに散らばっていき、その中には隠れたダイヤの原石がいるのではないかと妄想したりします。


オランダ国内にも原石がいるのでは?

 そして、ヨーロッパからも多くのマイナーリーガーが輩出されていますが、彼らも容赦なくまだ若い年齢で見切られるケースが多いように思います。昨シーズン、オランダの国内リーグ『Honkbal Hoofdklasse(フーフトクラッセ)』で、圧倒的な成績をマークしたラース・ハイヤー投手(SP/ホーフトドルプ・パイオニアーズ)も、彼が21歳の時にリリースされています。解雇される前のマイナーリーグ時代の成績を見れば、1A以上の防御率が4点以上なので、まぁリリースされても仕方がないスタッツに見えますが、オランダ帰国後は防御率が2点前後。昨シーズンに至ってはなんと0.77!圧倒的な成績でした。奪三振率SO/9 はマイナー時代 5.5⇒オランダ国内 10前後。与四球率BB/9はマイナー時代 4前後⇒オランダ国内 2点台と、このようにアメリカとオランダでは別人の成績になっています。このフーフトクラッセの成績を見る限り、オランダリーグよりも1つ上のレベルでプレイしどこまで通用するのか見てみたい気がします。

 ということで、少し話は逸れましたが、フーフトクラッセの中にも埋もれた才能がいないか調べるため、昨年のオランダ国内リーグのスタッツをセイバーメトリクスを使い倒して分析してみました。


ボックススコアだけでもこれだけ出来た

 フーフトクラッセでは、野球先進国のアメリカやアジアのプロ野球とは違って入手できるデータ量は当然少ないです。ただ、ボックスコアのデータはありますから最低限 古典的なセイバー系指標は入手し計算できます。また、オランダリーグの場合、欧州野球連盟(CEB)のフォーマット形式でのボックススコアが全試合記録がありますので、刺殺や補殺といった守備関連の基本データも頑張れば入手することもできます(相当”頑張り”ましたが・・・)。今回は、折角苦労して守備関連のデータを集めたので、守備系のセイバー指標から見ていきたいと思います。


RRF守備得点ランク

 守備の評価は、"日本プロ野球RCAA&PitchingRunまとめblog"さん(https://ranzankeikoku.blog.fc2.com)の Relative Range Factor(以下、RRF)を使った守備得点による評価方法を使いました(注1)。数値の意味は『同じポジションの平均的な選手と比べて何点分失点を防いだか?』を表しています。早速、各ポジションのベスト3を見ていきましょう。

 オランダ人選手は、代表クラスの選手ぐらいしか詳しく知らない筆者からすると、守備指標のランキングは聞いたことの無い選手のオンパレードでした。Youtubeで選手の動画を調べてみようとしてもほとんど検索に引っ掛からないので、このRRF守備得点の結果が正しいのか分かりませんが、あくまで”客観的に計算してみた結果こうなりました”という風に捉えて頂ければと思います。もっとも、"日本プロ野球RCAA&PitchingRunまとめblog"さんのサイトに出ているNPBのRRF守備得点の結果を見る限り、「守備の上手い」と言われる選手がちゃんと上位に来ていますので、イメージと合う計算結果は出ているはずです。多分。

 ということで、素人なりに中身を見ていきます。まず、目につくのは昨シーズンオランダリーグでプレイした元横浜&ソフトバンクの吉村裕基選手(3B/現 琉球ブルーオーシャンズ)でしょう。所属したデ・フラスコニンフ・ツインズでは、サード以外にショート、レフト、ライトを守り、ユーティリティっぷりを発揮しています。同じくデ・フラスコニンフに所属した小野寺祐人投手は、東北学院大学出身の投手で今季から東北楽天ゴールデンイーグルスの打撃投手を務めています。

 名字から気になった選手をピックアップすると兄弟ネタが結構ありました。Tyriq Kemp(2B/キュラソー・ネプチューンズ)は、オランダ代表のドウェイン・ケンプ(3B/キュラソー・ネプチューンズ)の弟です。兄のドゥウェインが、サードでリーグワーストのRRF守備得点▲4.7ポイントをマークしているのに対し、弟はセカンドでリーグ3位の+3.6ポイントなので実に対照的です。しかも、兄が全42試合出場しているのに対し、弟はわずか9試合で+3.6ポイント。各ポジションのベスト3入りした全選手の中で、出場試合数が1桁なのはこのケンプ弟だけです。もちろんサンプル数の少なさが故に出来すぎたスタッツになっている可能性もありますが、少なくともこのデータは非常にポジティブな結果です。他に兄弟ネタでは、ショートでNo.1となったBob van der Meer(SS/HCAW)は、WBCオランダ代表スティン・ファンデルメール.(SS/キュラソー・ネプチューンズ)の弟です。兄スティンのRRF守備得点が+3.3ポイントに対し、弟ボブは+9.6ポイントなので守備では兄貴越えを果たしています。打撃スタッツは兄の方が上ですが、兄弟そろって長打力はないのであまり大差はないように見えます。

 最後に全ポジションの守備得点合計値のランキングを見ていきます。

ライトでNo.1だったRuendrick Piternella(RF/HCAW)が、フーフトクラッセのNo.1を獲得しました。佐々木朗希(SP/千葉ロッテ)や奥川恭伸(SP/東京ヤクルト)らが参加した2019年のU18 野球W杯で、オランダ代表の四番を務めた選手です。(因みに既述のKemp弟も同じチームメイトでした。)U18野球W杯ではセンターを守っていましたが、18歳にしては凄いガタイをしていてセンターのイメージには似つかわしくない体つきでした。なのでライトというのは納得です。また、Piternellaは、刺殺評価(≒守備範囲)でもリーグ1位、補殺評価(≒肩)でもリーグ1位を獲得しており、外野でNo.1の結果でした。オランダのプロスペクトってところでしょうね。

 ということで、次回以降オランダリーグ フーフトクラッセの打撃スタッツと、投球スタッツを分析していきます。最終的にはプレイヤーズランキングも作られれば、、、と思います。


(注釈1)

尚、得点係数などは計算できないので、日本の係数をそのまま使用しました。また、めちゃくちゃマニアックな話になりますが、係数の話以外にも①守備イニング数が分からない、②1試合の中で複数のポジションを守った場合のデータが分けられていない、など、細かい所でデータが無いという課題があったのですが、そこは割り切りということで次のように対応しました。①守備イニングの件は守備機会で代用。②1試合中の複数ポジションの件は、単独の守備位置データから刺殺数や補殺数の比率を計算し、強引に各ポジションに割り振りしました。まぁ、複数ポジションのデータは全体の1割以下なのであまり大きな影響はないと思います。

 今回の代表チーム特集は、すっかり野球強豪国の印象が定着してきましたオランダ代表を分析してみたいと思います。オランダ代表と言えば、第2回と第4回のWBCでの活躍が印象的です。第2回WBCでは、優勝候補のドミニカ共和国代表を2度に渡り破り、WBC史上最大とも言えるジャイアントキリングを達成しました。また、第4回WBCでは2次ラウンドで小久保監督率いる侍ジャパンと対戦。試合後の指揮官が「死闘」と評する程、野球日本代表の歴史の中でも名勝負に数えられるような試合、そのの対戦相手こそがオランダ代表でした。バリバリのメジャーリーガーが何人もいるオランダ代表の重量級打線は、侍ジャパンの投手陣だけでなく、世界の強豪国にとっても脅威となっています。

 

オランダ領アンティルの存在

 国際野球に詳しい方ならば、オランダ代表と言えば「オランダ領アンティル」出身選手の話を今更取り上げる必要もないと思いますが、一応触れておきましょう。オランダ領アンティル(~2010)は、カリブ海の小アンティル諸島にあったオランダを構成する自治領です。現在はキュラソー島、アルバ、ボネール島、シント・マールテン島といった自治領又はオランダの構成国に分かれていますが、キュラソー島やアルバでは他のカリブ諸国同様に野球が盛んなことで知られています。しかし、キュラソー島の人口が約15万人、アルバが約10万人と人口が非常に少ないのにも関わらず同地域からは何人ものメジャーリーガーを輩出しており、その”輩出率”は最も多く”外国人”メジャーリーガーを輩出しているドミニカ共和国を上回り、『世界一のメジャーリーガー輩出率』を誇る地域として知られています。

 

オランダ代表の戦力構成

 こちらも国際野球通の方ならば良くご存じの話かと思いますが、WBCなどでのオランダ代表の戦力は、野手は主にMLB傘下のメジャーリーガーを中心とした打線、投手はオランダ国内リーグ”Hoofdklasse”のトップ選手により構成されています。ただし、近年投手側の主力だったオランダ国内の選手の世代交代がうまく進まず、戦力の低下が顕著になってきています。1980年代生まれディエゴマー・マルクウェル、トム・スタイフベルヘン、オルランド・インタマ、JC・スルバランなどが未だに代表入りしていますが、昔と比べると衰えが出て踏ん張りが効かなくなっ来ている印象で、ジャイア・ジャージェンス(SP/元アトランタブレーブス)、シャイロン・マルティス(SP/元ワシントン・ナショナルズ)といったメジャー経験組にも限界が見えてきており、今後も彼らに頼る訳にはいきません。

 一方で野手の方は、2018年にブレイクしたオジー・アルビーズ(2B/アトランタブレーブス)のように、まだまだアンティル諸島から有望株が出続きそうな雰囲気もあり、打力に対して投手力の低下が深刻になっていきそうな状況です。


最新のオランダ代表戦力を分析してみた

 次に最新のオランダ代表の戦力を分析するため、現在メジャーリーグ球団に所属している選手を分析してみたいと思います。

 まずは野手です。下のグラフの見方ですが、縦が年齢で、横が各ポジション、そして円の大きさはWARや所属マイナーレベルを参考にした選手の”レベル”を表しています。また、円の色分けは出身地域を表しています。

 見ての通り、セカンドやショートにメジャー級のタレントが集中しています。メジャー随一の守備力を誇るアンドレルトン・シモンズ(SS/ロサンゼルスエンジェルス)、ヤンキースの正遊撃手だったディディ・グレゴリアス(SS/フィラデルフィアフィリーズ)4シーズン連続20本塁打以上をマークしているジョナサン・スコープ(2B/デトロイトタイガース)などのピークを迎えた30歳前後の世代に加え、オジー・アルビーズやカーター・キーブーム(SS/ワシントン・ナショナルズ)といった20代前半の世代も台頭してきており、二遊間が完全に交通渋滞を起こしています。そうなると、メジャーでもトップレベルのザンダー・ボガーツ(SS/ボストン・レッドソックス)を、1つ右の列にずらして代表チームではサードを守ってもらおうという考えは理解できる話ですね。また、マイナーリーグ時代はメジャーでも有数の遊撃手になるだろうと思われていたジュリクソン・プロファー(UT/サンディエゴ・パドレス)が、ユーティリティープレイヤーとして成長したことは当時のテキサスレンジャースからすると誤算だったかもしれませんが、オランダ代表チームにとってはチーム編成上助かったのではないでしょうか。


 しかし、何故ここまで二遊間ばかりに優秀な人材が偏るのでしょうか?その要因は色々あると思いますが、恐らく同国においても”二遊間が花形ポジション”という考えが大きく影響しているからではないでしょうか。野球というスポーツへの捉え方は、国によって様々です。例えば、日本では甲子園に代表されるような1戦必勝のトーナメント形式が割と盛んであったことから、個人の力で試合を決めることができる投手にタレントが集まる傾向にありますし、他にもキューバでは投手よりも打者に人材が集まる傾向にあります。キューバでは「男子はバットとボールを持って生まれてくる」という格言(?)があるらしいですが、野球とは”バットでボールを打つスポーツ”という捉え方がされていて、故にバッターに人材が集まるのではないかと思われます。アンティル諸島に近い野球”狂”国ベネズエラでは、今でこそ各ポジションに万遍なく優秀なタレントを揃える国になりましたが、昔はセカンドやショートのスタープレイヤーが中心にスタープレイヤーを輩出していました。恐らくは、アンティル諸島でも、野球は『内野が花形』という考え方があるのではないかと思います。


 また、メジャーリーガーはまだ出てきていないものの、意外とキャッチャーの選手層が厚いことがわかります。これは、オランダ領アンティル諸島出身の人たちが英語やオランダ語に加えパピアメント語と呼ばれるポルトガル語とスペイン語の影響を受けた混成言語を使っているため、キャッチャーという語学力を中心としたコミュニケーション能力が求められるポジションにフィットするためだろうと思われます。これは、スペイン語と英語を公用語としているプエルトリコが、捕手王国として優秀なキャッチャーを輩出し続けている背景と類似しています。


ネタバレですが投手は…

 次に、ネタバレなので想像はつくと思いますが、投手のグラフを見ていきましょう。

 野手と比べると随分寂しい絵になっています。20歳以下のルーキーリーグの選手も書き加えればもう少し選手はいるのですが、小さな点が増えるだけで大まかな傾向は変わりません。10年くらい前にはJ・ジャージェンスやS・マルティスなど、メジャーリーガーの投手も多少いたのですが、今ではロサンゼルスドジャースの絶対的守護神ケンリー・ジャンセン(CL/LAドジャース)が圧倒的な存在で他にめぼしい投手がいません。ジャンセンも元はキャッチャーで、2009年第2回WBCの後に投手へコンバートしています。


 (余談)因みに、キュラソー島やアルバとは違い、ベネズエラから遠くむしろプエルトリコに近いシント・マールテン島からもマイナーリーガーが出ています。投手はFranklin van Gurp(RP/サンディエゴ・パドレス1A)、野手ではIzzy Wilson(OF/タンパベイレイズ1A+)という選手です。シント・マールテンではサッカーがメジャースポーツらしいので、その島からマイナーリーガーが出てきていることは、野球の国際的普及にとってちょっとしたプラスの話題だなと思います。


”世界一のメジャーリーガー輩出率”の裏

 中島大輔氏著の『中南米野球はなぜ強いのか』によると、キュラソーから多くのメジャーリーガーが輩出できる理由の1つは、人口の少ない小さな島だからこそスカウトが優秀な若手選手を見つけやすく、さらに指導者も1人の選手に対して手厚くコーチングできる育成力があるからだそうです。しかし、キュラソー島やアルバの人口は島全体でせいぜい15万や10万人程度でしかありません。一方で、同じく近年力をつけてきたコロンビアは、野球が盛んな地域はカリブ海付近のバランキージャやカタルヘナといった都市に限られますが、それでも同都市の人口は共に100万人を超えます。(他の野球強豪国,中堅国の都市圏人口も100万人は悠に超えます。)二遊間以外の投手や外野といったポジションでもメジャーリーガーが出始めてきているコロンビアと比べると、二遊間以外に拡大できていないキュラソーやアルバにとっては、この人口の差は今後どこかで障壁となる気がします。人口の少ない島であるが故に出来ること(=育成や人材発掘)の一方で、土台の小ささはいずれ限界を迎える気がしています。

 加えて二遊間にタレントが集中している傾向も踏まえると、オランダ代表がより上を目指す上では、今以上に戦力供給をキュラソー島やアルバに対し期待するのではなく、やはりオランダ本国の選手や国内リーグを底上げする必要があるように思います。


気になるオランダリーグの戦力差

 オランダ国内リーグ『Honkbal Hoofdklasse(フーフトクラッセ)』。イタリアのセリエA1と並び欧州トップクラスのリーグで、8チーム✕42試合+上位4チームによるプレーオフ9試合、プレーオフ上位2チームが決勝のオランダ―シリーズを戦います。中でも、キュラソー・ネプチューンズとL&Dアムステルダム・パイレーツが2強で、ここ20年の優勝回数はネプチューンズが14回で独占状態、たまにパイレーツが一矢報いるようなペースで優勝争いが繰り広げられています。代表チームに選ばれる投手も、この2チーム所属の選手は多いです。昔から、ネプチューンズとパイレーツの2チームが強かった訳ですが、ここ最近は特に2強と他の6チームとの戦力差が広がっているように見えます。2018年、19年のレギュラーシーズンでは、2位チームと3位HCAWとのゲーム差が10まで広がっていますので、ネプチューンズやパイレーツからすると、他のチームとの対戦にはそこまでプレッシャーになっていないのではないでしょうか。

 下のグラフは、アジアの各プロ野球球団の過去3シーズン分のOPSと防御率(ERA)をプロットしたものです。このグラフからは、『投高打低』とか『打高投低』といったリーグの特徴も分かるのですが、今回注目して欲しいのは各リーグ内での成績のバラつきです。

 日本のプロ野球(赤)の場合、チームのOPSが0.650~0.800位で、防御率は3.00~4.30位の範囲で収まっています。また、韓国プロ野球KBO(水色)は、昨シーズン昨シーズン打高投低の傾向にメスを入れたため、少し範囲がばらついていますが、一定の範囲に収まっています。台湾CPBLも同様です。何が言いたいかというと、アジアのプロ野球は球団間の戦力差はあるものの一定の範囲で収まっているということです。なので、同じリーグの最下位チームと対戦するとしても、相手も4割前後くらいの勝率はあるので、どのチームにしても『侮れない相手』になります。また、これはアジアに限りません。参考までに2019年のキューバリーグはこんな感じです。

キューバリーグは参加チームが16もあるので、強いチームと弱いチームでアジア球団よりも成績がばらついているかなと予想していましたが、あまり大差はありませんでした。

 

一方でオランダのフーフトクラッセはどうか?

 アジアのプロ野球やキューバリーグと比べても、圧倒的にバラつきが大きいのが分かります。因みに、グラフの右下に行く程、OPSも高く防御率が低いので『強豪』ということになります。逆にグラフ左上にいるチームは、OPSが低く防御率も高いので『弱小』ということになります。そして、この『強豪』ゾーンにいるのはネプチューンズとパイレーツです。繰り返しになりますが、彼らと他のチームとの間には大きな戦力差があります。オランダのトップリーグとは言え、参加チームのレベルはピンキリだということですね。同じ欧州の強豪イタリアのリーグもリーグ内の戦力差は大きいですが、オランダ程の寡占状態ではありません。優勝チームももっとバラけています。


国内リーグの底上げ

 ネプチューンズとパイレーツに所属している投手陣からすれば、味方の打線は強力なので勝ちは付きやすいし、味方の打者と対戦しなくて良い分スタッツも良くなります。そう考えると、中堅チームに所属しているラース・ハイヤー(SP/ホーフトドルプ・パイオニアーズ)が今シーズン13先発で防御率0.77という成績をマークしているのは脅威的ですが…。一方で、強豪チームの投手からすれば下位チ―ムと対戦することは、すなわち強いチームの打線との対戦機会を失うことにもなります。個人的には、もっとここをシビアに分けでもいいのではないかと思います。例えば、半分の21試合消化した段階で上位4チームと下位4チームに分け、残りは上位4チーム間での対戦を増やす。つまりはキューバリーグに似た方式でですね。キューバリーグには、都市対抗野球などでも使用されている補強選手の制度がありますが、そこまでしてしまうと国内リーグの意義とかにまで議論が及んでしまいそうなので横に置いておきましょう。まぁ本来ならば、ドラフトとかサラリーキャップだとか戦力均衡化の策が王道なのでしょうが、手っ取り早くリーグの質を上げるには、こんな感じで他の国で適用されている仕組みをさくっと導入してしまうのも”アリ”かなと思います。


~以上~

参考文献:

[1] 『中南米野球はなぜ強いのか――ドミニカ、キュラソー、キューバ、ベネズエラ、MLB、そして日本』中島大輔 (著) 亜紀書房 (2017/4/5)

 雑談中の雑談記事です。サッカーのワールド杯で初戦を落とした場合に、決勝トーナメントに進出する確率は11.7%だそうです。毎回ワールド杯の初戦の前は、試合を放送するNHK辺りが世間を盛り上げようと『初戦に勝ったら8割近い確率で決勝トーナメントに行けます!』という話を何度もして、如何に初戦が大事かということをアピールしていますが、逆に負けたら11.7%しか突破できる可能性がなくなる訳で、初戦を落とした場合は見事なブーメランがやってきます。日本代表の場合、初戦で敗けたドイツ大会やブラジル大会では、第2戦以降を放送するアナウンサーや解説が、「もう無理じゃないか」という言葉を必死に飲み込んで「まだ分かりません」的な言葉を発していますが、その光景は中々つらいものがあります。

 さて、話は変わり野球の場合はどうなのか?WBCの初戦を落とした場合、どのくらいの確率で1次ラウンドを突破できるのか?調べてみました。


結論を言うと約2割なのだが…

 先に結論を言っちゃうと約2割です。ただし、厄介なのがWBCは大会毎に1次ラウンドのフォーマットが違う点です。第1回、第3回、第4回大会は、サッカーワールド杯と同じ総当たり(ラウンドロビン)方式で対戦しています。この3大会の1次ラウンドで初戦を落としたチームが次のラウンドに進出した確率は20%(=25チーム中5チーム)でした。次に第2回大会は、”ダブルエリミネーション方式”という2敗したら負けという変則トーナメント方式でした。2敗したら大会を去る方式なので、初戦を落とした場合はいきなり崖っぷちに立たされますから、総当たり方式以上に初戦の重要度は高くなります。その証拠に第2回大会で初戦を落としたチームの1次ラウンド突破確率は13%(8チーム中1チームのみ)と、総当たり方式の他の大会より、ぐっと率が下がります。まぁ、全大会を平均すると18%と約2割という結果となりました。


2次ラウンドで初戦を落とした場合は?

 サッカーW杯と違い、WBCは1次ラウンド突破した後は2次ラウンドがあり、その2次ラウンドも4チーム総当たり又はダブルエリミネーション方式で行われます。そこで、2次ラウンドで初戦を落としたチームが、次の準決勝に進出する確率を調べてみました。尚、試合方式は、第1回と第4回が総当たり、第2回と第3回はダブルエリミネーション方式です。

 結果は、総当たりの場合が25%(8チーム中2チーム)、ダブルエリミネーション方式でも25%(8チーム中2チーム) と同じでした。2次ラウンドまで行くと強豪国ばかりになりますので実力が拮抗してきます。その分初戦を落としても、そこから挽回するだけの力が各チームにあるということなのでしょう。総当たりとダブルエリミネーション方式で確率が同じなのは、単にサンプル数の少なさはあると思います。

 こう見ると、サッカーW杯と比べてWBCは初戦を落としても、まだまだ可能性が残されているように見えます。しかし、実際に初戦を落とした状態から2次ラウンドに進出したチームは、ベネズエラやメキシコ、キューバなど実力のある国ばかりです。なので、野球の弱小国が初戦を運よく勝てただけでは、1次ラウンド突破は難しいと思われます。


第5回大会はラグビーW杯方式

 次の第5回WBCでは、参加国が16カ国から20カ国に増えるのに伴い、1次ラウンドのフォーマットが各グループ5カ国の総当たり戦に変わります。試合数が増えるため、初戦の重要度が相対的に下がると予想されます。

 因みにラグビーW杯で初戦を落としたチームがどの位なのか調べてみました。1次ラウンドが5チーム制となった2003年大会以降、初戦を落としたチームが決勝トーナメントに進出した確率は11.5%でした。しかし、決勝トーナメントに進出出来た国のほとんどが、ティア1と言われる世界トップクラスの実力国ばかりでした。そもそもラグビーの場合は、南半球4カ国+欧州5カ国でながらく決勝トーナメント8枠の椅子を争ってきました。去年のラグビーワールド杯ではそこに日本が絡んできたのであって、初戦がどうこうというよりも強豪国同士の対戦の方が、大きな注目ポイントになっています。野球は、サッカーよりもラグビーに似て意外と番狂わせって少ないので、初戦の試合結果よりは強豪国同士の対戦がどうなるかの方が注目すべきなのだと思います。


~以上~



 

 


 WBCが開催される度に『WBCに出場するアメリカ代表が本当のフルメンバーでは無い』という類の批判を聞きます。確かに『誰々が参加してない』だの『誰々が辞退した』だの例を上げたらきりがないのですが、アメリカ代表としてWBCに参加してくる選手の中には、前のシーズンに本塁打30~40本打っているような化け物がゴロゴロいる訳ですよ。なので、WBCアメリカ代表メンバーの分析をする度に『このメンバーでも十分反則じゃない?』と思ったりするのですが…。彼らが毎回優勝候補と言われるのも、彼らのスタッツを見れば誰しも納得すると思うのですが、一方でアメリカ代表がWBCのタイトルを獲得出来るまでに第1回WBCから11年かかりました。そして、初優勝を果たした第4回WBCアメリカ代表のメンバーは第1回アメリカ代表の豪華メンバーと比べると、”スター”というよりは”仕事人”タイプの選手が多かった印象が残っています。ただし、第1回WBCの豪華なアメリカ代表選手もそれだけの活躍していた訳であって、決して実力が無かった訳ではないと思います。なのに何故、第1回のWBCアメリカ代表メンバーは優勝できず、第4回のアメリカ代表は優勝できたのか?更に言うと、第4回メンバーと過去3大会のアメリカ代表との違いは何だったのか?今回はそこを考察してみていきたいと思います。


召集メンバーを前年のfWARで振り返る

 セイバーメトリクスの分野でお馴染みともなりましたWAR(Wins Above Replacement)。その選手がどれだけの活躍をし、チームに貢献できたかを表す指標ですが、第1回~4回までのWBCアメリカ代表メンバーが前年どれ程のWARをマークしてきたか振り返ってみましょう。fangraphs方式のfWARでは、6.0以上の数値をマークすれば、その選手はMVP級の活躍に等しいようですので、各大会メンバーからfWAR6.0以上の選手をピックアップしてみましょう。

第1回 5名

A・ロッド=9.1、C・アトリー=7.2、D・リー=7.0、D・ウィリス=6.5、R・クレメンス=6.0

第2回 5名

B・マッキャン=8.2、C・ジョーンズ=7.1、D・ライト=7.0、D・ペドロイア=6.4、K・ユーキリス=6.2

第3回 3名

R・ブラウン=6.8、D・ライト=6.6、J・ルクロイ=6.0

第4回 1名

B・ポウジー=6.7


更にチーム合計値も見ていきましょう。

 2006年第1回大会では出場選手登録が30名まで可能で、第2回以降の28名より+2名多いのですが、その2名分を差し引いてみてもチームfWARは100前後の値になります。このことから、以下に第1回WBCアメリカ代表メンバーが他の大会のアメリカ代表より如何に豪華だったかが分かります。そして、WARという定量的な視点で見ても、WBCアメリカ代表がスケールダウンしていることは間違っていないようです。第2回大会以後、回を経ることにfWARの値は減少してきています。しかし、大会成績を見ると、第1回から3回までの勝敗はずっと五分と苦しんでおり、WARとWBCの結果が全く関係ないことがわかります。


特に投手がスケールダウン

 WBCにメジャーリーガーが参加する際よく言われる説として、「シーズン前の3月に開催されるので、特に投手にとって調整が難しい」という話です。事実、アメリカ代表も野手は割と豪華メンバーが揃いますが、投手の召集には苦労しているようです。そこで、召集された投手の前シーズンのfWARを見ていきましょう。

 野手同様、第1回WBCメンバーが豪華なのは全体の傾向と同じです。先発投手のfWARも大会毎に下がってきています。しかし、失点率を見ると第4回大会が最も良い値をマークしています。まぁ、優勝したのだから失点率が一番低いのは当たり前と言えば当り前ですが、その要因は何なのか?

 失点率という指標は、(セイバーメトリクス的に言うと)防御率同様に様々なノイズが含まれています。さらに今回は短期決戦なので、対戦相手や球場の影響がもろに数値として出てきますので、一概にこれという答えは出し難いのですが、こんな切り口で見てみました。ずばり”守備”です。


守備が過去最強だった第4回メンバー

 こちらも毎度毎度お馴染みとなりましたセイバーメトリクスの守備指標”DRS”(=Defensive Runs Saved)です。日本ではUZR(=Ultimate Zone Rating)の方が浸透しているかと思いますが、個人的には月刊スラッガー(日本スポーツ企画社)でも多用されるDRSをよく使います。まぁ、そんな事は置いておいて、各WBCアメリカ代表メンバーが前シーズンにマークしたDRSを見ていきましょう。

見ての通り、fWARが最高だった2006年アメリカ代表のDRSが-37点と、大きなマイナスになっています。これはつまり、第1回WBCアメリカ代表は攻撃重視な選手選考で、守備のマイナスを打撃で上回るスタイルだったということを意味しています。しかし、第2回第3回アメリカ代表チームのDRSも、第4回のDRS+50点には及ばないものの、+20点前後をマークしていてそれほど悪くありません。

 ここで更に見方を変えてみました。各WBCアメリカ代表の大会の最後の試合に先発出場した選手の前年DRSをまとめみました。

 表中に「×」が部分は、最後の試合でそこを守った選手が、前シーズンにメジャーでその守備位置に1回もついてないことを表しています。例えば、第1回大会の最後の試合では、ショート本職のマイケル・ヤングがセカンドを守り、本来センターを守るバーノン・ウェルズがライトを、ライトを守るジェフ・フランコ―ナがレフトを守りました。二遊間とセンターは守備の要となるポジションですが、ショートを守ったディレク・ジーターの2007年DRSは-27点と大きなマイナスでした。もし自分が先発選手を選ぶ立場だったら、外野はV・ウェルズに本来のセンターを守らせ、ケン・グリフィーJrをレフトに回します。ライトは本職のJ・フランコ―ナがDRS+17点と前シーズン非常に優秀でしたから、その通りライトを守らせます。ケン・グリフィーJr以外は前のシーズンに優秀なDRSを記録している本職の選手がいるのですから、その通りに守らせた方が良いと思うのですが、第1回WBCで指揮を執ったバック・マルティネス監督は、何故かリスクが増えるような外野の配置をしています。因みにこの試合は、あのボブ・デービッドソン審判によるホームラン疑惑あったメキシコ戦です。外野守備が直接的な原因ではなかったかもしれませんが、起用にチグハグな面が見られました。

 また第2回大会でも、ディレク・ジーターがショートを守りましたが、前年のDRSは-10点。また、守備の良くないアダム・ダンがライトを守っていましたが、最終戦の日本戦ではライトのアダム・ダンに向けて狙い打ちされているような感じもしました。そして、この試合ではライトのアダム・ダンから力の無い返球を何度も見かけることになります。

 それと比べると、第4回WBCではブライアン・クロフォード(SS/サンフランシスコ・ジャイアンツ)やノーラン・アレナド(3B/コロラド・ロッキーズ)が好守備を連発しています。第4回大会では、他のチームも好守備が印象的な大会でしたが、アメリカ代表の三遊間も負けじと良いプレイを見せていました。この2人であったからこそ獲れたアウトもかなりあったと思います。特に、グラウンドボールピッチャーの多かったアメリカ代表投手陣と、守備の良い内野手陣との相性は抜群でした。日本の打者陣からすると相性が悪そうな相手ですね。一方外野ではアンドリュー・マカッチェンの中堅守備があまり良くなく、前年のDRSは-26点だったのですが、マカッチェンをライトを守らせることで弱点を上手くカバーしました。(その後マカッチェンは、所属チームではライトに定着していますので、WBCでの起用判断は正しかったという証明になりました。)


 ということで、第4回大会のアメリカ代表メンバーは明らかに守備が違った、という結論となりました。超短期決戦だからこそ1つのアウトを取るための守備力の重要度が高まっている、というテキトーなまとめで締めくくりたいと思います。


ちなみに、マーカス・ストローマン(SP/NYメッツ)が呼び掛けた次回WBCアメリカ代表のメンバーを見ると、ノーラン・アレナドとトレバー・ストーリー(SS/コロラドロッキーズ)のロッキーズの三遊間コンビが手を挙げています。アレナドの三塁守備は相変わらずハイレベルですが、ストーリーの守備も高いDRSをマークしていますので、次回WBCアメリカ代表メンバーも攻守にバランスの取れた布陣になりそうです。詳しくは下記の記事で。

~以上~

 ここ20年近くの間で、野球が著しく発展してきた国の1つにコロンビアがあげられます。昔は国際大会への出場することも稀だった同国の代表チームですが、2017年の第4回WBCでは1次ラウンドで中堅国カナダを破り、強豪アメリカやドミニカ共和国とも接戦を演じるなど、急激に競技レベルが上がってきています。


コロンビア人メジャーリーガーの増加

メジャーリーグで活躍するコロンビア人選手の数の推移をみると、昨年2019年には最多となる10人がプレイしています。

 2000年代は、エドガー・レンテリア(SS/元セントルイス・カーディナルス)、オーランド・カブレラ(SS/元モントリオール・エクスポズ)の名遊撃手が活躍した時代でした。今のコロンビア人選手は、ちょうど野球少年だった頃にレンテリアやカブレラの活躍を見て育った世代になります。コロンビア人のメジャーリーガーも、野手は外野より内野の方が人材が多めです。(昨シーズン外野手として115試合に出場したメジャーリーガーオスカー・メルカド(CF/クリーブランド・インディアンズ)も、ルーキーリーグ時代はショートでした。)

 2010年代前半になると、フリオ・テヘラン(SP/ロサンゼルス・エンジェルス)とホセ・キンターナ(SP/シカゴ・カブス)という2人の先発投手が活躍します。第4回WBCでコロンビアが躍進したのも、メジャーで活躍する先発ローテーション投手が『1人ではなく2人いた』ことは大変大きなアドバンテージになったと思います。勝利が確実に求められる3番手のカナダにテヘランを当て、アップセットを狙いたいアメリカ相手にキンターナを当てられました。上手くいけば2次ラウンド進出の可能性もありました。

 更に近年は、キャッチャー、外野手と徐々にショートや先発投手以外のポジションにも、メジャーリーガーを輩出し始め、今はポジションに大きな偏りがなく、バランスよく良い選手が生まれ始めてきています。隣国の強豪ベネズエラがショートストップから徐々に他のポジションのメジャーリーガーが増えてきた過程と同じように、コロンビアも同じような発展の仕方をしつつあります。


 先ほどのグラフはメジャーリーガーの数でしたが、これを1人ずつのWAR(=選手の活躍具合を示す総合指標)にまとめてみました。

 グラフを見ると、2010年代以降は投手(青色)を中心に活躍していることが分かります。一方で、野手(黄色)はそれほど目立っていません。つまり、メジャーリーガーの数自体は増えているものの、その中でチームの中心となって活躍できているのはテヘランとキンターナの二枚看板だけで、野手はレギュラーとして活躍している選手はまだまだ少ないということを表しています。ただ、昨シーズン2019年はジオバニ・ウルシェラ(3B/NYヤンキース、fWAR=3.1)やオスカー・メルカド(fWAR=1.7)の活躍もあって、野手もレギュラークラスが一気に増えました。もし、フルメンバーのコロンビア代表が結成されたとして、依然として先発投手を中心とした守りのチームになるでしょうけれども、戦力的な偏りは徐々に解消されつつあります。次の第5回WBCでは、更にパワーアップした史上最強のコロンビア代表が見られることは間違いなさそうです。


コロンビア代表Depth Chart ~野手~

 当サイトの独断と偏見により選出したコロンビア代表を見ていきます。メンバーはメジャーリーガーがレギュラーの中心で、残りをプロスペクトのマイナーリーガーで補う形になります。前回WBCのコロンビア代表メンバーと比べて、打線の厚みが増した感じがあります。前回大会で四番を担ったスプレーヒッターホルヘ・アルファロ(C/マイアミ・マーリンズ)、コロンビアのWBC初出場の立役者ディルソン・ヘレーラ(2B,LF/ボルティモア・オリオールズNRI)に加え、上述のG・ウルシェラは昨季24本塁打、ハロルド・ラミレス(OF/マイアミ・マーリンズ)も昨季11本塁打をマークしています。その威力は、ドミニカ共和国程でないとしても前回WBCで日本と死闘を繰り広げたオランダ代表並みの重量感は感じられます。もし、侍ジャパンが東京ドーム辺りで対戦し失投でもしようものなら、簡単に柵越えされそうなパワーを感じます。問題としてあげるならば、左打者がほとんどいないことでしょうか。


守備はメジャーリーガーのスタッツのみですが、守備防御点(以下、DRS)を見ていきましょう。オスカー・メルカドがセンターでDRS+10点と優秀な成績をマークしています。ただ、それ以外の選手のDRSは可も無く不可もなく(若干マイナス気味か?)といった感じで、大きな穴にはなりそうにありません。

コロンビア代表Depth Chart~投手~

 次に投手です。次回WBCは参加国が16→20カ国に増えたことで大会フォーマットが変わっています。それまで4組×各4チームの総当たり戦だった1次ラウンドが、4組×各5チーム総当たりで、上位2チームが決勝トーナメントに進出する仕組みに変わりました。(ちょうどラグビーワールド杯と同じ形式ですね。)コロンビア代表にとって、前回大会を超える成績は、ずばり1次ラウンド突破となります。そうすると1次ラウンドはマストWINの試合が3勝となるため、テヘラン・キンターナの二枚看板だけでは1枚足りない状況となります。候補としては、昨季韓国で13勝を挙げたウィリアム・クエバス(SP/KTウィズ)か、プロスペクトのルイス・パティーノ(SP/サンディエゴ・パドレス2A)辺りにると思いますが、強豪国に当てるにはちょっと荷が重い感じもします。

救援には、100マイルピッチャーのタイロン・ゲレーロ(CL/シカゴ・ホワイトソックスNRI)がいますが、続くルイス・エスコバー(RP/ピッツバーグパイレーツNRI)は絶対的ではありませんし、それ以外も2A~1Aレベルで後ろの層が薄い感じがします。前回大会もそうでしたが、球数制限があるWBCでは先発投手以降をいかに頑張るか、それに全てかかっています。


まだまだ成長しそうなコロンビア野球

 サッカーが国技であるコロンビアにおいて、野球が盛んな地域はカタルヘナやバランキージャ―というカリブ海に面した都市が中心です。実際、今のコロンビア人メジャーリーガーの多くがカリブ海周辺都市出身者になります。レンテリアやカブレラといったパイオニアの活躍が、カリブ周辺都市のコロンビア野球少年に与えた影響は大きいと思いますが、近年は更に、隣国ベネズエラからの人口流入が拍車をかけるものと思われます。

 ご存知の通り、ベネズエラは政情不安のため、コロンビアやブラジルなどに難民が流出する動きが続いています。野球”狂”国であるベネズエラから流出した人材は、野球IQが高くコロンビア人野球少年によって良いお手本にもなります。また、ベネズエラ出身ながらコロンビア代表選択する選手も増えていくでしょうし、ベネズエラの情勢が今後もコロンビア野球に大きな影響を与えることは間違いありません。


~以上~