フライボール革命に続く「オープナー制」とアジアのライバル達

メジャーリーグではすっかり定着した「極端な守備シフト」、そして昨季のヒューストン・アストロズに代表される「フライボール革命」。これに続いて今シーズン話題になっているのが、タンパベイ・レイズが導入した「オープナー制」です。


「オープナー制」とは?

通常、先発投手が5~7回くらいまで投げ、セットアッパー,クローザーが8回9回を抑えるのがセオリー(スターター制)です。しかし、「オープナー制」では従来リリーフをしている投手が1回もしくは2回まで投げ、相手打線が下位打線にまで回ると2番手投手がロングリリーフします。基本的に打順は攻撃力の高い順に並べますので、初回は失点のリスクが高くなります。上位打線が必ず並ぶ初回をショートリリーフで凌ぐことで、長く投げる2番手投手の失点リスクを少なくし、チーム全体の失点リスクを抑えます。先発投手の層が薄かったタンパベイ・レイズは、このオープナー制を導入したことで、チーム防御率を改善しています。強力な先発ローテーションを擁する球団ならば採用する必要はないのでしょうが、戦力の乏しい球団や怪我人続出で投壊しているような球団にとっては目から鱗の戦略だと思います。


WBCでは勝てる先発投手が2枚は必要

ここで国際試合の話に話題を移します。WBCでは1次ラウンド、2次ラウンドとも4チーム総当たり戦で各3試合戦います。各ラウンド2位以上が次のラウンドに進出できますので、最低2勝を挙げることが必要になります。もし、自分の代表チームにメジャーやプロ野球で先発ローテーションを担うような強力な先発投手が2人以上いるならば、同じ組の1番強い相手以外に彼らを当てることで、次のラウンド進出(=2勝以上)の確率を高めることができます。

前回のWBCでは、コロンビア代表がフリオ・テヘラン(アトランタ・ブレーブス)、ホゼ・キンターナ(シカゴ・カブス)といった2枚看板を擁していました。結果的には、同じ組のアメリカ代表、ドミニカ共和国という優勝候補の前に、惜しくも2次ラウンド進出はなりませんでしたが、十分可能性を感じさせる試合内容でした。2枚看板の内、フリオ・テヘランを3番手のカナダに当てて1勝を勝ち取り、もう1枚のホゼ・キンターナはアメリカ戦に先発し5回2/3を1失点に押させる好投を見せました。国際試合(特にWBC)では、投手がいるかどうかが重要なファクターになります。


先発投手不足の韓国、台湾

韓国プロ野球KBO、台湾プロ野球CPBL。侍ジャパンのアジアにおけるライバルである両国のリーグでは、共通して「打高投低」に悩まされています。特に先発投手不足が深刻です。

引用元:KBO、CPBLホームページより

    https://www.koreabaseball.com/  https://www.koreabaseball.com/


上の表はKBOとCPBLの先発投手の防御率ランキング10傑(規定投球回以上、9/16時点)です。韓国の場合、上位10名中韓国人投手は3名だけ。台湾の方は更に苦しく、9名の内台湾人投手は元横浜DeNAの王溢正(Lamigoモンキーズ)1名だけです。両国とも外国人投手への依存度が高く、自国出身の先発投手のタレントが明らかに不足しています。

引用元:KBO、CPBLホームページより


一方で、リリーフ投手は両国とも自国の投手がメインです。この状況は、まさにタンパベイ・レイズが「オープナー制」を始める前の状況と似ています。


侍ジャパンも「オープナー」対策を

韓国も台湾も若手先発投手の発掘に力を注ぐと思いますが、2年後の東京オリンピックまであまり時間がありません。その東京オリンピックの出場権をかけた最初のチャンスが、来年シーズン後に開催される第2回Premier12です。Premier12の1次ラウンドは、参加12チームを3つのグループ(開催地:韓国、台湾、メキシコ)4チーム毎に分けて競います。侍ジャパンはおそらく韓国か台湾の組に割り振られると予想されますが、日本を相手に“奇襲”として「オープナー制」を使ってくる可能性もゼロではありません。国際試合では当然打者にとって初対戦の投手が相手になりますので、味方打線が1巡し球筋が分かった後、如何に早く攻略できるか鍵となります。でも、もし韓国や台湾が「オープナー制」を使ってくるとしたら、打者が一巡してもオープナーの投手がロングリリーフの投手に代わってしまいますので、また球筋を見極める作業が振り出しに戻ってしまいます。得点が取れないと焦りも出てくるでしょうから、前半で1点だけでも先制点が取れるかどうか試合運びの上で重要となります。


メジャーで「オープナー制」がもっと定着し多くの球団で結果が出れば、アジアのライバル国も同じ戦法を使い易くなります。今後の「オープナー制」の動向に注目です。


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