当サイトで、世界のプロ野球の観客動員数の特集をしました。昨シーズン、日本のプロ野球の1試合平均観客動員数は、メジャーリーグのそれを上回るような観客数を集めました。今回特集するのは、代表戦・国際試合の観客動員数です。侍ジャパンの常設化によって、シーズン前の強化試合やポストシーズン前後の国際大会など、野球の代表戦自体が定着してきています。一昔前は馴染みの無かった代表戦ですが、最近は東京ドームでの代表戦の座席はかなり埋まっている印象です。
一方で他の国の代表戦はどうなのでしょうか?野球の代表チームの強さとその観客動員数は、必ずしも比例しません。例えば、アジアの雄であるチャイニーズ・タイペイ代表は、過去のWBCでは2次ラウンド4位が最高成績ですが、WBCやPremier12などの国際大会を地元で開催し、スタジアムはほとんど地元のファンで埋め尽くされています。
代表戦の観客動員数は、地元の代表チームに対する関心の表れだろうと思います。それは単に国際大会を運営する側にとってマーケティング的なデータという意味だけでなく、野球競技の国際的な普及の面で新たな情報が得られるかもしれません。
侍JAPANの観客動員数は約3~4万人
下のグラフは2017年以降の侍ジャパンの代表戦の平均観客動員数です。
大会別に見てみると、やはりWBCが最も観客を多く集めています。東京ドームの座席数が43,338台ですから毎試合ほぼ満員です。日米野球‘18では平均観客数は36,749人ですが、これは動員数が少なかったナゴヤドームやキャパの少ないマツダスタジアムを含んでおり、東京ドームでの試合はほぼWBCを上回りました。野球という国際試合があまり定着していない競技において、これだけ集客できる国は中々ありません。
関心が高い台湾、微妙な韓国
一方でアジアの強豪、台湾と韓国はどうでしょうか?両国ともWBCの第1次ラウンドを開催した経験があります。特に台湾は、アマチュアの大会含め多くの国際大会を開催した経験があります。
まず台湾ですが、台湾プロ野球リーグ(CPBL)の2018年平均観客動員数が5,457人と、世界のプロ野球の中でも比較的少ない規模なのですが、第3回WBCでは2万人を超える集客を記録しています。CPBL平均観客動員数に対し約4倍に相当します。第3回WBCでは王建民(元NYヤンキース)や陽岱鋼(北海道日本ハム)など、普段台湾国内では見られないスター選手が集まりましたので、それが集客に繋がったこともあると思います。ただ、それだけでなく国際大会開催回数が多い台湾では、地元代表チームを応援することに慣れているので、お客が集まり易い土壌もあるのだろうと思います。
一方、韓国も第4回WBC1次ラウンドを、ソウル高尺スカイドームで開催しています。WBC準優勝の経験のある韓国も、WBCに対する熱は高いものと思いましたが、平均観客動員数は14,218人と台湾よりも少ない規模に・・・。もっとも、高尺スカイドームの収容キャパが16,833人分しかないので、元々2万人は超えません。ただ、第3回WBC 1次ラウンド、台湾vsオランダ戦では、会場の台中インターコンチネンタル野球場の外野席までびっしりと観客で埋まっていたのに対し、第4回WBC1次ラウンド、韓国vsオランダ戦の映像を見るとソウル高尺スカイドームの外野席には空席がかなりありました。
韓国プロ野球(KBO)の2018年平均観客動員数は11,214人。ソウル開催のWBC1次ラウンドは、KBOの1.26倍に留まります。KBOを代表するメンバーが揃っているのにも関わらず、日本や台湾と比較してイマイチ伸びが少ない印象です。何故か韓国代表チームに対する関心は日本や台湾程高くないようです。昨年は、アジア大会でも金メダルを獲得した韓国代表に対し、選手選考をきっかけに批判が殺到。監督の宣銅烈(ソン・ドンヨル)が辞任に追い込まれました。このエピソードを取っても、(何故か分かりませんが)韓国では代表チームへの風当たりは厳しいように思えます。
世界の代表チーム観客動員数
他の地域も見てみましょう。
日本や台湾に続くのは、野球の盛んなプエルトリコ、メキシコといった中南米カリブ地域です。ただ、それでも観客動員数は2万人超えてはいません。どうしても、中南米カリブ地域は1つ1つの国の経済規模が大きくないスモールマーケットの集まりですから、収容人数の多い会場が少ないという事情もあります。ヨーロッパやオセアニア地域に至っては、3,000人程度の集客に留まります。
“集客”という興行的な視点で見ると、日本や台湾で開催が多くなる事はやむを得ないのかなと思います。
マイアミに注目すべし!
上のグラフを見てお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、野球の母国アメリカがまだ出てきていません。第4回WBCで初優勝を勝ち取ったアメリカ合衆国代表ですが、WBC1次ラウンドはマイアミ、2次ラウンドはサンディエゴが会場でした。その内、アメリカ代表が出た試合と出ていない試合の観客動員数を分けると、下の表のようになります。
2次ラウンド会場のサンディエゴでは、アメリカ代表戦とアメリカ代表戦以外で1万2,000人近く差が観客動員数に差がありました。やはり、地元アメリカ代表を応援するファンの方が多いということです。
一方で1次ラウンドのマイアミでは、アメリカ代表戦もアメリカ代表戦以外も2万7,000人近い集客を記録しています。サンディエゴでは明確にあった地元代表戦とそれ以外の観客数差が、マイアミではほとんどありません。これは何故でしょうか?
マイアミもサンディエゴもどちらもアメリカ南部の都市ですが、マイアミには中南米カリブ海地域をルーツとするアメリカ在住の野球ファンや移民が多く住んでいるのではないかと思います。マイアミの南方には、キューバやドミニカ共和国、プエルトリコといったメジャーリーガーを何人も輩出している島々があります。普段バラバラのチームでプレイしている彼らと同じ地元出身のメジャーリーガーたちが代表チームを結成するならば、“一目見たい”という気持ちになるのは必然な気がします。実際WBCマイアミラウンドの映像は、メジャーリーグの会場の雰囲気ではなく、まるでカリブ海の球場の雰囲気でした。
何が言いたいかと言うと、アメリカ開催なのに対戦国のファンが非常に多く観戦に訪れているということです。マイアミラウンドの観客動員は、対戦相手のドミニカ共和国やコロンビアのファンがかなり含まれていると思います。
(更に言うと、マイアミ程でないですが、サンディエゴにもアメリカ以外のファンがかなり含まれています。開催国以外の試合で17,935人もの観客動員を記録しているのは、他の地域では考えられない規模です。アメリカが“人種の坩堝(るつぼ)”であることを感じさせます。)
そこで、マイアミ(及びサンディエゴ)にどのくらい、アメリカ以外のファンが観戦に訪れたのか、推定してみました(推定の方法は後述します。)。結果は以下の通り。
マイアミラウンドでは、地元アメリカ代表のファン13,851人(推定)よりも、ドミニカ共和国代表のファン23,580人(推定)の方が多いという結果になりました。また、意外にもWBC初出場だったコロンビア代表のファンも1万人近く来場していたという結果になりました。実際、アメリカ代表が関係しないドミニカ共和国とコロンビアの試合で、36,952人もの観客が集まったことから、アメリカ代表以外を見に来たファンがいたことは間違いありません。会場のマーリンズ・パークの収容人数は37,000人なので満員です。
野球の国際大会で、地元代表チーム抜きでこれだけのキャパのスタジアムを埋められるということは大きな気づきだと思います。例えば、ウィンターリーグのチャンピオンシップ『カリビアンシリーズ』をマイアミで開催するなどすれば、大会規模や集客力をより大きなものに出来るかもしれません。時期的には難しいですが、侍ジャパンが海外遠征としてカリビアンシリーズに参戦するなんてことも面白いかもしれません。マイアミの方が日本人選手にとってプレイし易いでしょうし、アメリカ以外の国に対して日本プロ野球の認知度向上に繋がるかもしれません。
以上、今回も当サイトをご覧頂きありがとうございました。
{推定方法について}
ある試合の対戦国Aと対戦国Bが、それぞれに一定の人数のファンが存在し、彼らが球場に見に来たとします。A国のファンの数X(A)とB国のファンX(B)が、その試合の観客動員数を構成していると仮定します。同様に、対戦国Aと別の対戦国Cの試合では、X(A)とX(C)が次の試合の観客動員数とイコールになるとして、それぞれX(A)、X(B)、X(C)・・・、によって計算される仮の観客動員数と、実際の観客動員数を比較し、この差が最少となるようなX(A)、X(B)、X(C)・・・の数値を探していきます。各国のファンの数Xは、無数の組合せが考えられるので、Excelのソルバー機能を使って、もっとも差が少なくなる組合せを自動で計算し探し出します。
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