台湾と言えば、世間一般では日本や韓国と並び野球が盛んな地域と認識されているかと思いますが、前回特集した『世界のプロ野球 観客動員数ランキング2019~World Baseball Attendance Ranking~』で見ても分かる通り、自国のプロ野球の平均観客動員数はアメリカマイナーリーグ球団よりもお客が集まっていません。もっとも観客の少なかった富邦ガーディアンズはギリギリ100位に入りましたが、アジアの強豪国の1つとしては非常に寂しいものです。
下の表は台湾プロ野球(CPBL)の各チームの平均観客動員数と、スタジアム収容可能人数に対する動員率です。
平均観客数は5,800人程度で、動員率は平均して4割にも満たない数値。日本のプロ野球球団だと平均観客数が約3万人で動員率は80%程度ですから、日本と比べるとだいぶ開きがある状況です。昨季行われたプレミア12の1次ラウンド(台湾開催)では、台湾代表の試合には1万人以上の観客が集まったのでポテンシャルが無い訳ではないと思いますが、この差は一体何なのか?あまりに悲しい状況なので、解決策を妄想してみました。
問題は台湾プロ野球のレベル?
観客が集まらない理由には諸説あるようですが、選手のレベル低下は要因の1つとしてあると思います。特に投手は、成績上位が外国人投手の寡占状態です。打撃戦が多いと試合時間も長くなります。前述の台湾代表チームでは、日本プロ野球や米マイナーリーグ所属の投手を召集したおかげで「地元開催での1次ラウンド敗退」という最悪のシナリオは回避できました。しかし、球団単位ではCPBLの戦力は、台湾国外の球団と比べて大きく劣っています。
近年ラミゴモンキーズを中心に、CPBLの球団はシーズン前後に日本プロ野球(NPB)チームとエキシビジョンマッチを行っています。しかし、その戦績は以下の通り酷いものです。
これらの試合に出ているメンバーは、どちらの球団ともほぼベストメンバーで臨んでいます。色々メンバーを試しているのだとしても、この2勝16敗1分という結果は明らかに戦力が違うことをはっきりと表しています。まして台湾の方のチームは、CPBL優勝常連のラミゴモンキーズですから、CPBLの中でも強い方のチームが戦ってこの結果なのです。(話はそれますが、よく日韓台でメジャーリーグに対抗するアジアリーグを作ろう的な話があがりますが、この結果を見るとはっきりと時期尚早だと思います。)
ラミゴモンキーズの身売りとチケット収入
その強いラミゴモンキーズは、昨年身売りし日本企業の楽天市場に買い取られました。優勝常連にも関わらず、身売りをしなければならない背景には「選手年俸の高騰化」があります。選手の年俸が上昇している一方、チケット代は上がってきていません。CPBLのチケット価格は約1,000円程度だそうです。先ほどの観客動員数から計算すると、3.5億円程度にしかなりません。
NPBのトップ選手の1人分の年俸にしかなりません。そこで何とかチケット代を上げたい訳ですが、チケット代だけ値上げしてしまうと、今度は観客数が減ってしまいます。これが球場の動員率が9割辺りならば、値上げで売上を増やすことは出来ると思いますが、なにせCPBLの場合4割にも見たいない訳ですから、値上げで観客の足が遠のくことは目に見えています。
楽天猿に人気先発投手を獲得して欲しい
観客動員数を増やすには、色々なイベントや企画を行うプロモーションやマーケティング活動も重要だと思います。楽天には日本のプロ野球で培った様々なノウハウがありますから、”楽天モンキーズ”でもそれが活かせると思いますが、それだけでは台湾の野球ファンには日本やアメリカの海外リーグとのレベルの差が頭の中に残ります。
日本や韓国のプロ球団に引けを取らないようにするには、集客的にも戦力的にも改善する手が必要です。そこで楽天モンキーズには、是非資本を投入して”人気先発投手の獲得”を行ってもらいたいと期待しています。
何故、先発投手か?もちろん、”先発投手”は台湾プロ野球全チームのウィークポイントですので、戦力編成という視点でも必要な訳ですが、将来的にチケット代を値上げしていかないといけないことを考えると投手の方が良いだろうと考えた次第です。近年、チケットの価格決定に『ダイナミックプライシング』という手法が用いられています。『ダイナミックプライシング』とは、チケットの売れ行きや天候など需要と供給の関係から、状況に応じてチケット価格を変動させ利益を最大化させる手法です。恐らく楽天モンキーズも構想の中にあるのではないでしょうか。しかし、もしこの方法を今のCPBLに適用すると、ただでさえ座席が空いている訳ですから、チケット安売りの方向に拍車がかかると予想されます。なので、”人気選手を獲得”することで、その選手が出場する試合のチケット代を高くすることが出来、これまで以上に選手の獲得効果がチケット収入に反映され易くなります。ただし、同じ人気選手でも毎日試合に出場できる”野手”を獲得すると希少性が早目に薄れてしまうため、登板間隔の空く先発投手の方がチケットの希少性を保ちつつチケット代を高く設定できるので、先発投手の方がダイナミックプライシングとの相性がいいだろうと思った訳です。
最近アメリカでは、成績予測が発達したことで年齢に対してよりシビアになったため、中堅どころやベテランがFA市場で苦戦しています。その結果、日本や韓国にバリバリのメジャーリーガーが契約するケースが増えていますが、日本も年齢に対してシビアな傾向になりつつある感じがしています。元巨人の村田修一や元阪神の西岡剛などは、所属先が決まらず日本の独立リーグに活路を求めました。BCリーグの成績を見るとまだまだやれそうに見えるのですが、どのチームもチームの若返りの方が優先事項だったのだと思います。
CPBLも元NPBのスター選手を獲得したい所でしょうが、投手でCPBLからNPBに復帰した例があまり多くありません。例えば、元ヤクルトの正田樹は、CPBL経験者で後に東京ヤクルトに復帰しましたが、前年の所属はBCリーグのアルビレックス新潟でした。他では、元楽天のケニー・レイが、2013年シーズンオフに楽天からリリースになった後、2014年にCPBLを経て、2015年に再び楽天に復帰しています。ただこれも、入団テストを経ての結果なので、果たしてCPBLでの活躍がどこまで寄与したかは不透明です。
なので、非常に難しい状況だと思いますが、日本と繋がりのある楽天なのですから、後は兎に角お金を用意して交渉して人気投手を引っ張ってもらうしかないだろうと思います。オリックスが元WBCアメリカ代表のアダム・ジョーンズを獲得したように、ただし川崎宗則のような野手ではなく、投手で元侍ジャパンのような選手を引っ張ってもらいたいなと思います。
~以上~
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