毎年オフシーズンに、世界中で多くのプロ野球選手が戦力外の通告を受けますが、特にアメリカマイナーリーグの首切りはえげつなく、まだまだ20歳前半の歳の若い選手でも容赦なくバシバシ見切りをつけています。その光景を見ては『まだもうちょっと様子見てみないと華が開くか分からないのではないの?』と思ったりします。例えば、NPBで育成契約を結ぶドミニカ共和国などのラテン系外国人選手の中には、一度マイナーリーグをクビされている選手がたくさんいます。彼らがプロ野球の1軍でもそこそこ活躍している様子を見ると、マイナーを解雇されたような選手の中にも、まだまだ才能が発揮できていない選手が結構いるのではないかと思えて仕方がありません。特に最近はマイナーリーグの球団数を削減するなんて話も出てきていますので、もし実際にそうなると解雇される選手が大量に発生し、彼らがアメリカ独立リーグや世界各地のリーグに散らばっていき、その中には隠れたダイヤの原石がいるのではないかと妄想したりします。
オランダ国内にも原石がいるのでは?
そして、ヨーロッパからも多くのマイナーリーガーが輩出されていますが、彼らも容赦なくまだ若い年齢で見切られるケースが多いように思います。昨シーズン、オランダの国内リーグ『Honkbal Hoofdklasse(フーフトクラッセ)』で、圧倒的な成績をマークしたラース・ハイヤー投手(SP/ホーフトドルプ・パイオニアーズ)も、彼が21歳の時にリリースされています。解雇される前のマイナーリーグ時代の成績を見れば、1A以上の防御率が4点以上なので、まぁリリースされても仕方がないスタッツに見えますが、オランダ帰国後は防御率が2点前後。昨シーズンに至ってはなんと0.77!圧倒的な成績でした。奪三振率SO/9 はマイナー時代 5.5⇒オランダ国内 10前後。与四球率BB/9はマイナー時代 4前後⇒オランダ国内 2点台と、このようにアメリカとオランダでは別人の成績になっています。このフーフトクラッセの成績を見る限り、オランダリーグよりも1つ上のレベルでプレイしどこまで通用するのか見てみたい気がします。
ということで、少し話は逸れましたが、フーフトクラッセの中にも埋もれた才能がいないか調べるため、昨年のオランダ国内リーグのスタッツをセイバーメトリクスを使い倒して分析してみました。
ボックススコアだけでもこれだけ出来た
フーフトクラッセでは、野球先進国のアメリカやアジアのプロ野球とは違って入手できるデータ量は当然少ないです。ただ、ボックスコアのデータはありますから最低限 古典的なセイバー系指標は入手し計算できます。また、オランダリーグの場合、欧州野球連盟(CEB)のフォーマット形式でのボックススコアが全試合記録がありますので、刺殺や補殺といった守備関連の基本データも頑張れば入手することもできます(相当”頑張り”ましたが・・・)。今回は、折角苦労して守備関連のデータを集めたので、守備系のセイバー指標から見ていきたいと思います。
RRF守備得点ランク
守備の評価は、"日本プロ野球RCAA&PitchingRunまとめblog"さん(https://ranzankeikoku.blog.fc2.com)の Relative Range Factor(以下、RRF)を使った守備得点による評価方法を使いました(注1)。数値の意味は『同じポジションの平均的な選手と比べて何点分失点を防いだか?』を表しています。早速、各ポジションのベスト3を見ていきましょう。
オランダ人選手は、代表クラスの選手ぐらいしか詳しく知らない筆者からすると、守備指標のランキングは聞いたことの無い選手のオンパレードでした。Youtubeで選手の動画を調べてみようとしてもほとんど検索に引っ掛からないので、このRRF守備得点の結果が正しいのか分かりませんが、あくまで”客観的に計算してみた結果こうなりました”という風に捉えて頂ければと思います。もっとも、"日本プロ野球RCAA&PitchingRunまとめblog"さんのサイトに出ているNPBのRRF守備得点の結果を見る限り、「守備の上手い」と言われる選手がちゃんと上位に来ていますので、イメージと合う計算結果は出ているはずです。多分。
ということで、素人なりに中身を見ていきます。まず、目につくのは昨シーズンオランダリーグでプレイした元横浜&ソフトバンクの吉村裕基選手(3B/現 琉球ブルーオーシャンズ)でしょう。所属したデ・フラスコニンフ・ツインズでは、サード以外にショート、レフト、ライトを守り、ユーティリティっぷりを発揮しています。同じくデ・フラスコニンフに所属した小野寺祐人投手は、東北学院大学出身の投手で今季から東北楽天ゴールデンイーグルスの打撃投手を務めています。
名字から気になった選手をピックアップすると兄弟ネタが結構ありました。Tyriq Kemp(2B/キュラソー・ネプチューンズ)は、オランダ代表のドウェイン・ケンプ(3B/キュラソー・ネプチューンズ)の弟です。兄のドゥウェインが、サードでリーグワーストのRRF守備得点▲4.7ポイントをマークしているのに対し、弟はセカンドでリーグ3位の+3.6ポイントなので実に対照的です。しかも、兄が全42試合出場しているのに対し、弟はわずか9試合で+3.6ポイント。各ポジションのベスト3入りした全選手の中で、出場試合数が1桁なのはこのケンプ弟だけです。もちろんサンプル数の少なさが故に出来すぎたスタッツになっている可能性もありますが、少なくともこのデータは非常にポジティブな結果です。他に兄弟ネタでは、ショートでNo.1となったBob van der Meer(SS/HCAW)は、WBCオランダ代表スティン・ファンデルメール.(SS/キュラソー・ネプチューンズ)の弟です。兄スティンのRRF守備得点が+3.3ポイントに対し、弟ボブは+9.6ポイントなので守備では兄貴越えを果たしています。打撃スタッツは兄の方が上ですが、兄弟そろって長打力はないのであまり大差はないように見えます。
最後に全ポジションの守備得点合計値のランキングを見ていきます。
ライトでNo.1だったRuendrick Piternella(RF/HCAW)が、フーフトクラッセのNo.1を獲得しました。佐々木朗希(SP/千葉ロッテ)や奥川恭伸(SP/東京ヤクルト)らが参加した2019年のU18 野球W杯で、オランダ代表の四番を務めた選手です。(因みに既述のKemp弟も同じチームメイトでした。)U18野球W杯ではセンターを守っていましたが、18歳にしては凄いガタイをしていてセンターのイメージには似つかわしくない体つきでした。なのでライトというのは納得です。また、Piternellaは、刺殺評価(≒守備範囲)でもリーグ1位、補殺評価(≒肩)でもリーグ1位を獲得しており、外野でNo.1の結果でした。オランダのプロスペクトってところでしょうね。
ということで、次回以降オランダリーグ フーフトクラッセの打撃スタッツと、投球スタッツを分析していきます。最終的にはプレイヤーズランキングも作られれば、、、と思います。
(注釈1)
尚、得点係数などは計算できないので、日本の係数をそのまま使用しました。また、めちゃくちゃマニアックな話になりますが、係数の話以外にも①守備イニング数が分からない、②1試合の中で複数のポジションを守った場合のデータが分けられていない、など、細かい所でデータが無いという課題があったのですが、そこは割り切りということで次のように対応しました。①守備イニングの件は守備機会で代用。②1試合中の複数ポジションの件は、単独の守備位置データから刺殺数や補殺数の比率を計算し、強引に各ポジションに割り振りしました。まぁ、複数ポジションのデータは全体の1割以下なのであまり大きな影響はないと思います。
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