注目チーム特集~急上昇中のコロンビア~

 ここ20年近くの間で、野球が著しく発展してきた国の1つにコロンビアがあげられます。昔は国際大会への出場することも稀だった同国の代表チームですが、2017年の第4回WBCでは1次ラウンドで中堅国カナダを破り、強豪アメリカやドミニカ共和国とも接戦を演じるなど、急激に競技レベルが上がってきています。


コロンビア人メジャーリーガーの増加

メジャーリーグで活躍するコロンビア人選手の数の推移をみると、昨年2019年には最多となる10人がプレイしています。

 2000年代は、エドガー・レンテリア(SS/元セントルイス・カーディナルス)、オーランド・カブレラ(SS/元モントリオール・エクスポズ)の名遊撃手が活躍した時代でした。今のコロンビア人選手は、ちょうど野球少年だった頃にレンテリアやカブレラの活躍を見て育った世代になります。コロンビア人のメジャーリーガーも、野手は外野より内野の方が人材が多めです。(昨シーズン外野手として115試合に出場したメジャーリーガーオスカー・メルカド(CF/クリーブランド・インディアンズ)も、ルーキーリーグ時代はショートでした。)

 2010年代前半になると、フリオ・テヘラン(SP/ロサンゼルス・エンジェルス)とホセ・キンターナ(SP/シカゴ・カブス)という2人の先発投手が活躍します。第4回WBCでコロンビアが躍進したのも、メジャーで活躍する先発ローテーション投手が『1人ではなく2人いた』ことは大変大きなアドバンテージになったと思います。勝利が確実に求められる3番手のカナダにテヘランを当て、アップセットを狙いたいアメリカ相手にキンターナを当てられました。上手くいけば2次ラウンド進出の可能性もありました。

 更に近年は、キャッチャー、外野手と徐々にショートや先発投手以外のポジションにも、メジャーリーガーを輩出し始め、今はポジションに大きな偏りがなく、バランスよく良い選手が生まれ始めてきています。隣国の強豪ベネズエラがショートストップから徐々に他のポジションのメジャーリーガーが増えてきた過程と同じように、コロンビアも同じような発展の仕方をしつつあります。


 先ほどのグラフはメジャーリーガーの数でしたが、これを1人ずつのWAR(=選手の活躍具合を示す総合指標)にまとめてみました。

 グラフを見ると、2010年代以降は投手(青色)を中心に活躍していることが分かります。一方で、野手(黄色)はそれほど目立っていません。つまり、メジャーリーガーの数自体は増えているものの、その中でチームの中心となって活躍できているのはテヘランとキンターナの二枚看板だけで、野手はレギュラーとして活躍している選手はまだまだ少ないということを表しています。ただ、昨シーズン2019年はジオバニ・ウルシェラ(3B/NYヤンキース、fWAR=3.1)やオスカー・メルカド(fWAR=1.7)の活躍もあって、野手もレギュラークラスが一気に増えました。もし、フルメンバーのコロンビア代表が結成されたとして、依然として先発投手を中心とした守りのチームになるでしょうけれども、戦力的な偏りは徐々に解消されつつあります。次の第5回WBCでは、更にパワーアップした史上最強のコロンビア代表が見られることは間違いなさそうです。


コロンビア代表Depth Chart ~野手~

 当サイトの独断と偏見により選出したコロンビア代表を見ていきます。メンバーはメジャーリーガーがレギュラーの中心で、残りをプロスペクトのマイナーリーガーで補う形になります。前回WBCのコロンビア代表メンバーと比べて、打線の厚みが増した感じがあります。前回大会で四番を担ったスプレーヒッターホルヘ・アルファロ(C/マイアミ・マーリンズ)、コロンビアのWBC初出場の立役者ディルソン・ヘレーラ(2B,LF/ボルティモア・オリオールズNRI)に加え、上述のG・ウルシェラは昨季24本塁打、ハロルド・ラミレス(OF/マイアミ・マーリンズ)も昨季11本塁打をマークしています。その威力は、ドミニカ共和国程でないとしても前回WBCで日本と死闘を繰り広げたオランダ代表並みの重量感は感じられます。もし、侍ジャパンが東京ドーム辺りで対戦し失投でもしようものなら、簡単に柵越えされそうなパワーを感じます。問題としてあげるならば、左打者がほとんどいないことでしょうか。


守備はメジャーリーガーのスタッツのみですが、守備防御点(以下、DRS)を見ていきましょう。オスカー・メルカドがセンターでDRS+10点と優秀な成績をマークしています。ただ、それ以外の選手のDRSは可も無く不可もなく(若干マイナス気味か?)といった感じで、大きな穴にはなりそうにありません。

コロンビア代表Depth Chart~投手~

 次に投手です。次回WBCは参加国が16→20カ国に増えたことで大会フォーマットが変わっています。それまで4組×各4チームの総当たり戦だった1次ラウンドが、4組×各5チーム総当たりで、上位2チームが決勝トーナメントに進出する仕組みに変わりました。(ちょうどラグビーワールド杯と同じ形式ですね。)コロンビア代表にとって、前回大会を超える成績は、ずばり1次ラウンド突破となります。そうすると1次ラウンドはマストWINの試合が3勝となるため、テヘラン・キンターナの二枚看板だけでは1枚足りない状況となります。候補としては、昨季韓国で13勝を挙げたウィリアム・クエバス(SP/KTウィズ)か、プロスペクトのルイス・パティーノ(SP/サンディエゴ・パドレス2A)辺りにると思いますが、強豪国に当てるにはちょっと荷が重い感じもします。

救援には、100マイルピッチャーのタイロン・ゲレーロ(CL/シカゴ・ホワイトソックスNRI)がいますが、続くルイス・エスコバー(RP/ピッツバーグパイレーツNRI)は絶対的ではありませんし、それ以外も2A~1Aレベルで後ろの層が薄い感じがします。前回大会もそうでしたが、球数制限があるWBCでは先発投手以降をいかに頑張るか、それに全てかかっています。


まだまだ成長しそうなコロンビア野球

 サッカーが国技であるコロンビアにおいて、野球が盛んな地域はカタルヘナやバランキージャ―というカリブ海に面した都市が中心です。実際、今のコロンビア人メジャーリーガーの多くがカリブ海周辺都市出身者になります。レンテリアやカブレラといったパイオニアの活躍が、カリブ周辺都市のコロンビア野球少年に与えた影響は大きいと思いますが、近年は更に、隣国ベネズエラからの人口流入が拍車をかけるものと思われます。

 ご存知の通り、ベネズエラは政情不安のため、コロンビアやブラジルなどに難民が流出する動きが続いています。野球”狂”国であるベネズエラから流出した人材は、野球IQが高くコロンビア人野球少年によって良いお手本にもなります。また、ベネズエラ出身ながらコロンビア代表選択する選手も増えていくでしょうし、ベネズエラの情勢が今後もコロンビア野球に大きな影響を与えることは間違いありません。


~以上~


 

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