コアなスポーツファンには『これからブレイクしそうな若手を発掘したい』という想いというか、楽しみ方があると思いますが、今回の企画はそんな感じのきっかけの話です。自分は専門家でないため、体の動かし方だとかメカニズム関係は詳しくないのですが、そんな眼が節穴な自分でもスタッツから何か分かることは多少見つかるのではないかな、と考えています。とくに2軍3軍のファームの個人成績は、1軍とは違ってスタッドキャスト系のデータは入手が困難なため、ファンが手に入れられるデータは、伝統的な打撃/投球成績かYoutube動画くらいしかありません。その限られた情報から何とか新たな情報を得ようと創意工夫をこらす必要がでてきます。
今回はパワーに注目してみた
セイバーメトリクスでは、打者を評価する指標として、三振の多さ(K%)や選球眼(BB%やIsoD)などが使われますが、長打力を表す指標にIsoP(Isolated Power)があります。このIsoPは、長打率から打率を引いたものです。長打率には、単打が増えると長打率も増える構造になっているので、長打率から打率を引くことで”純粋な長打力”を評価しようという狙いがあります。(参照:SPAIA 「長打率とIsoPは何が違う?いまさら聞けない野球の指標」)
そこでこのIsoPを使って、どの球団のファンも期待したくなる未来の”和製大砲”を発掘してみよう…と思ったのですが、このIsoPも構造をよく理解する必要があります。例えば”2塁打が多い中距離ヒッター”と”あたれば飛ぶホームランバッター”が同じIsoPの値になることが予想されます。例えば、去年のIsoPのランキングを見てみると、山田哲人選手(2B/東京ヤクルト)が2位に入っています。山田選手も本塁打35本も打っているので大砲と言えば大砲なのですが、2塁打も35本打っていて、いま発掘してみたい”とにかくパワーが凄い”ような選手像とはちょっと違うんですよね。
そこで、長打の中で本塁打数の割合を見てみることにしました。この狙いは、『2塁打が多いのはパワーが足りなくて、外野フェンスを超えない打球が多いからだろう』という前提で割り切って、本当のパワーバッターならば打球はフェンスを越えるはずだ、という考えです。さらに本塁打数÷長打数だけでなく、分母に犠牲フライも加えてみます。犠牲フライもパワー不足で外野フェンスを超えなかった打球だと割り切ってしまおう、ということです。つまりは、、、 本塁打数÷(長打+犠牲フライ)という指標で評価してみました。結果は以下の通り。
IsoPのランキングと比べると、よりパワーヒッター感が高まったように見えます。
因みに2017~19年までのNPB1軍で、300打席以上の打者を対象に年度相関を確認してみました。尚、パークファクターの影響がでないよう、移籍していない選手のデータが対象です。結果、相関係数が0.82 と高い相関関係が確認できました。
因みに今回はNPBが対象ですが、同様にMLBで2018→2019シーズンのデータを比較して見たところ、相関係数が0.59とNPBと比べると、年度相関が弱まわることが分かりました。同様に韓国プロ野球で年度相関は0.77でした。日本と韓国の場合は、外国人選手にパワーが必要な役割を任せているので、相関係数が高くなり易いのだろうと思います。メジャーの場合は、どのポジションでもパワーのあるバッターだらけなので、相関係数が少し低くなるのかなと思います。
HR/(XBH+SF)ランキング(ファーム)
上記で考案した指標を使って、昨シーズンの2,3軍の選手のランキングを見てみます。
安田尚憲(IF/千葉ロッテ)は、今季主力として活躍している選手ですね。次に今季8月8日時点までのファーム成績を見てます。まだ試合数が消化してないので参考程度に見てください。
1位は東北楽天で2019年ドラフト2位の黒川史陽選手(2B/東北楽天)。バットコントロールが巧い感じの選手で、Deltaのプロスペクトランキングではシンシナティレッズの秋山翔吾選手のようなタイプと評されていました。確かにヒットのほとんどが単打ですが、打った長打2本は2本とも本塁打。長打のサンプル数自体が少ないのでまだ何とも言えませんが、打球速度も速そうですし、実はこれから長打が打てるようになってくるのではないかと密に注目しています。
個人的に注目したいのは、2018年ドラフト4位濱田太貴選手(OF/東京ヤクルト)でしょうか。球団からも将来の”右の大砲”候補と呼ばれている選手ですね。ヤクルトの外野はバレンティンが抜け、今後ベテランの青木宣親選手がいつまで活躍するか気になりますが、その後は結構チャンスが出てくると思いますので、競争が激しいと思いますが逆にチャンスは十分あるように見えます。
とりあえず、今回はここまでです・・・。
~以上~
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