終わりの見えないメキシカンリーグのデータ集計があまりにもつらくなってきたので、気分転換にオランダ国内リーグ『野球フーフトクラッセ』のデータを分析し始めました。現在オランダ国内リーグは、8球団総当たりのレギュラーシーズンが終わり、上位/下位4チームずつで行われるプレーオフの最中です。来週9/12から欧州選手権が始まりシーズンが一時中断しますので、選手権前に前回王者であるオランダのフーフトクラッセをちょっと特集してみよう、という試みでございます。
2強体制と戦力差
以前も特集で書いた通り、オランダ国内野球はキュラソー・ネプチューンズとL&Dアムステルダム・パイレーツが2強体制が続いていて、この2球団から多くのオランダ代表選手が輩出されています。9/4時点の各球団別の成績を見てみると、今年も2強体制は健在で3番手のHCAWが2強を追いかけるような構図となっています。下の図は、縦軸に攻撃(OPS)/横軸に守備(防御率)を置いたもので、各球団の戦力を表したものです。もしこれがNPBであったら、図中の黄色い四角の範囲に12球団がだいたい収まっているのですが、フーフトクラッセではこの範囲を軽くぶっちぎっています。同リーグは『欧州型』で昇降格あり自由競争のスタイルなので、そもそも戦力均衡を図る仕組みはありません。なので各球団は投手/野手のどちらかに強み/弱みがあると言うよりは、強い球団は攻守どちらも強いし弱い球団はどちらも弱い、という構図になります。
さて、このように戦力差を数値化して改めて認識にしてみますと、中堅HCAWに所属しているラース・ハイヤー投手を推している自分としては『2強の所属選手は自分のチームの打者/投手と対戦しないんだから、タイトル争いする上で全然有利だよなぁ。』『同じ防御率でも対戦している相手違うから、2強の選手の数値と同じにしないで欲しいぜ。』とか勝手に思い始めた訳です。ということで、当初はメキシカンリーグからの気分展開のつもりでいましたが、この戦力差の部分なるべく公平に評価したいという想いから、方針変更で『オランダ2強以外の選手に注目しなるべく公平に評価してみよう!』という企画をやりたいと思います。初回は投手編です。
オーソドックスにFIPで評価
さて、ベーシックな投手成績の項目には、チームメイトのパフォーマンスが影響を及ぼすものが多いです。勝利数は言うまでもなく、防御率も味方の守備力が結構影響しています。フーフトクラッセの球団別スタッツを見ると、チームの守備力を示すセイバー系指標DER(=Defensive Efficiency Ratio)は上位球団ほど良く、下位になるほど悪化する傾向が出ていました(因みにエラー数も下位球団になるほど増えています。)。つまり、強い球団に所属している投手ほど味方の守備に恵まれている分、防御率も良くなり易いのです。そこで味方の影響を受けない奪三振/与四球/被本塁打から計算する疑似防御率FIP(=Fielding Independent Pitching)を算出しました。結果は以下の通り。
1位はアムステルダムのJ.C.スルバラン投手。2~5位にラース・ハイヤーはじめHCAW所属の選手が3人も入りました。特に5位のジム・プロエガーのFIPは、防御率と比べて1点近く良くなっていましたので、FIPならではのランキングになったと思います。逆に、防御率1点台なのにFIPは4.18だったのがネプチューンズのディエゴマー・マークウェル投手。奪三振率が低く打たせてとるタイプですが、味方の守備力が良くなければ防御率も変わってたかもしれません。5位以下には、HCAWに続けとツインズ・オーステルハウト(TWI)やホーフトドルプ・パイオニアーズ(PIO)などの投手がランキング入りしています。
次に、その投手が登板した際にリーグ内の平均的な投手と比べてどれだけ失点を防いだかを示すRSAA(=Runs Saved Above Average)を計算していきます。
RSAA=(リーグ平均失点率 ー 失点率)×投球イニング÷9
通常RSAAを計算する場合は失点率を用いるのですが、今回は失点率をFIPに置き換えて計算します。
RSAA(FIP)=(リーグ平均防御率 ー FIP)×投球イニング÷9
結果は以下の通りです。
”推し”のラース・ハイヤー投手が見事に1位に輝きました。FIPの値も優秀だったことに加えて、他の投手よりも多くのイニングを消化している点も評価されました。ここでもHCAWの3本柱が上位を占めています。ただし、逆に言えばHCAWの投手力は、この3人への依存度が高過ぎるように見えます。
RSAA(FIP)を更に補正する
しかし最初に触れた課題(=2強所属の選手は自分たちのチームメイトと対戦せずに済むので有利)は解決されていません。RSAAの算出式を見ると、リーグ平均防御率と対象投手のFIPの差を計算していますが、リーグ平均防御率を”その投手の所属球団を除く対戦結果(防御率)”に置き換えることで、より公平な評価に補正します。評価対象の投手が対戦する相手球団に対し、リーグの平均的な投手が登板したらどのような成績を残したか、がこれにより分かるためです。
参考までに各球団の自球団以外を相手にした場合の防御率を計算してみました。例えば、ネプチューンズの打線が強力なので、リーグ平均防御率は4.71ですがネプチューンズを相手にしなければ平均防御率は4.28で済むということを意味しています。
平均防御率 4.71
NEP 4.28
AMS 4.51
HCA 4.63
TWI 4.70
DKI 4.80
PIO 4.87
STO 4.90
QUI 4.96
これを先ほどのRSAA(FIP)の数式のリーグ平均防御率と置き換えた結果がこちらです。
上位4人は変動がなく期待していた結果とはやや違いましたが、補正前ランキングでは8位だったライアン・ハンティントン(SP/ホーフトドルプ・パイオニアーズ)が補正後では5位まで浮上しました。これは下位球団所属投手の評価が補正によってアップした影響です。また、10位にはBCリーグ茨城から派遣されていた大場駿太(RP/オーステルハウト・ツインズ)投手がランクインしました。FIP2.59という好成績が補正により評価が高まった形です。
さて今回はオランダ特集の第1段ということで”触り”程度したが、これから打者編、守備編、深堀り編、、、、と続けていきたいと思います。
~以上~
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