投手編①、打者編①に続き、今回は守備編です。Hoofdklasseの守備成績には、UZRやDRSのようなゾーン系のデータは当然載っていないので、入手可能な従来の守備指標を元に地道に計算するしかありません。まずはチーム毎の守備指標を見ていきましょう。
DER守備得点(チームの守備力)
DER(=Defense Efficiency Ratio)は『HRを除くグラウンド上に飛んできた打球をアウトにに出来た割合』で、計算してみるとだいたい7割前後の数値になります。これを使って、リーグ平均DERと評価対象球団のDERの差、チームの被打球数、得点価値の3つを掛けることで、そのチームがリーグ平均の守備力を持つチームと比べてどれだけ失点を防いだかを計算することが出来ます。
DER守備得点=
得点価値0.78pts✕(DER-リーグDER)✕(打席ー本塁打ー与四死球ー奪三振)
結果は以下の通りです。
投手力(FIP)部門ではアムステルダム,HCAWに続く3番手だったネプチューンズが、守備部門(DER守備得点)では1位となりました。ネプチューンズは、防御率でHCAWよりも上の全体2位に位置していましたから、つまりこれは野手の守備によってHCAW以上に失点を抑えられていたことを示しています。
RRF守備得点(個人の守備力)
チームの守備力に続いて、今度は個人の守備力を見ていくために、レンジ系の守備指標であるRRF(=Relative Range Factor)を使って守備指標を見ていきましょう。RRF具体的な計算方法は非常に複雑なので割愛しますが、『日本プロ野球RCAA&PitchingRunまとめblog』さん(URL:https://ranzankeikoku.blog.fc2.com/)のRRFとほぼ同じやり方・得点係数で計算しました。
(以下は計算方法に関する注意事項のため、読み飛ばして頂いて結構です)
その1)NPBで使われている得点係数をそのまま使用しています。海外のリーグの成績に適用するのはやり方としては正しくないですが、今回の試みはざっくり感触が分かればいいので妥協しています。
その2)それよりも問題なのは、HoofdklasseのFielding Statsには1試合で複数のポジションを務めた場合に、どちらのポジションで発生した刺殺/補殺データなのかが分からないことです。(死ぬ気で調べればわからなくもないですが、死ぬほど時間がかかります。)無理やりにそれぞれのポジションのデータとして割り振りした所で、正確かどうかわからずノイズになるだけなので泣く泣く評価対象から外しました。まぁ、レギュラークラスの選手は1試合の中でポジションが固定されるケースが多いでしょうし『まぁ、いいか』と諦めた感じです。
3)守備イニングの情報もないので、打席数から無理やり推定しました。これも注意事項というか妥協点です。
それではポジション別のベスト3を見ていきましょう
【捕手】
捕手は、被盗塁、盗塁死、捕逸、失策から評価します。
欧州選手権の代表捕手2人が1,2位になりました。捕手評価は、盗塁阻止評価の影響が大きく出やすいのですが、上位の3人は捕逸や失策の少なさの面でも優秀な成績をマークしています。3位のロドニー・ダール(C/HCAW)選手は2019年の特集の時は捕手守備得点1位で、今回も3位でした。
【投手/内野手】
投手と内野手は、『リーグの平均的な守備力の選手と比較して補殺がどの位多かったか』を評価しています。なので守備範囲の広さを評価している指標だと考えてください。
投手評価で圧倒的な1位に輝いたラース・ハイヤー(SP/HCAW)が、投手のフィールディングでも1位に輝きました。因みに、奪三振率K/9が9以上(=1イニングで1つ三振を奪う)の投手に絞ると、守備得点がプラスなのはハイヤー投手と3位のTyson Quolas投手だけでした。ハイヤー投手は、他の投手と比べて明らかに守備に関するデータ数が多く、『投手の守備』を特に意識してプレイしているように思います。ベテラン、D・マークウェル(SP/ネプチューンズ)は奪三振率が低く打たせて取るタイプなので、自然と自ら守備に行く機会が多いのだと思います。
内野のRRF守備得点は以下の通りでした。
U18代表からは、マティス・クローウェル(1B/DDSキンヘイム)がファーストで3位。レイドリー・レヒト(2B/アムステルダム・パイレーツ)がセカンドで首位。U23代表からはシェーディオン・ジャマニカ(1B/シリコン・ストークス)がファイースト2位に入りました。尚、レヒト選手はショートでも守備得点+4.3をマークしており、今回泣く泣く対象外にした1試合に複数ポジションを守る試合も多かったので、それを含めたら相当ポイントを伸ばした可能性があります。
内野全体でみると結構若い選手が多くランキング入りしているなぁという印象です。一方で攻撃面での貢献(wRAA)が決して高いとは言えないのですが、それは追々向上していくと期待したい所で、今後のオランダ代表の世代交代を考えると悪い傾向ではないのではないかと思います。
【外野手】
外野手は刺殺と補殺の2項目を評価しました。外野刺殺は守備範囲、外野補殺は肩の力を評価しているものと思ってください。結果は以下の通り。
欧州選手権代表のロジャー・バーナディーナ(CF,RF/ネプチューンズ)がセンターの3位にランクイン。因みにライトでも守備得点+3.4ptsをマークしています。また、U23代表からはマックス・コップス(OF/オーステルハウト・ツインズ)がライト3位に入りました。因みにコップス選手もレフトでも守備得点+5.6ptsでした。
両翼は若い選手が入ってきていますが、センターがベテラン揃いなのはちょっと危険ですね。本来は足の速い若手がもっと入ってきていいポジションですので。センター4位にU23代表のジアンドロ・トロンプ(CF/HCAW)がいるので彼に期待でしょうか。
次回は打者②編、その後まとめ編をやろうと思います。
=以上=
参考文献)
蛭川晧平 著『セイバーメトリクス入門』水曜社、2019年
岡田友輔 他 著 『デルタ・ベースボール・リポート3』水曜社 2019年
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