|ドリームチーム結成が困難な現実
第5回WBCから亡命したメジャーリーガーの参加が認められたキューバ代表だが、成績だけ見れば第1回以来のベスト4進出を果たしたものの、準決勝アメリカ戦ではキューバ代表が抱える様々な現実が突き付けられた形となった。1つは『ドリームチームでなければ強豪には勝てない』ということ。数人の亡命メジャー/マイナーリーガー選手を加えた程度では優勝候補クラスの強豪には太刀打ち出来なかった。そしてもう1つは『ドリームチーム結成の道のりが遠い』という現実だ。キューバ野球連盟(FCB)はキューバ政府との結び付きが強い。それ故に今回メジャーリーガーの参加解禁にも関わらず、多くのメジャーリーガーはFCBの声掛けに応じなかった。また、アメリカ戦での観客乱入,選手への罵声等は、FCBの招集に応じたキューバ代表に対する過度な抗議ではあるが、両者の対立の激しさ表す一幕だった。
’23WBC出場の亡命選手や派遣組,国内組の範疇で次回WBCの編成を考えると、A・デスパイネ、Y・グラシアルといったベテラン勢が抜ける野手勢はかなり深刻になりそうだ。亡命選手は山のようにるが、彼らがL・ロバートJrやY・モンカダのように次回WBCに参加してくれる保証はないため戦力として計算は出来ない。キューバ代表の戦力は大会参加国の中で最も流動的だ。
リバン・モイネロ(SP/福岡ソフトバンクホークス)Baseball-Reference
NPB最高峰の奪三振マシン。'19年Premier12、'21年東京五輪アメリカ予選では計6回4失点と実は国際大会は相性が悪い。'23年WBCでも1試合目のイタリア戦こそ撃ち込まれたが、その後は立て直し徐々に国際大会でも本来の実力を発揮しつつある。2024年から先発に転向。
ミゲル・ロメロ(SP/コンスピラドレス・デ・ケレタロ(MEX))Baseball-Reference Fangraphs
’23WBCではイタリア戦以外の全試合に登板し8回 防御率 2.08とチーム1の活躍を見せた。しかし、2023年シーズンでは長年所属したオークランド傘下から遂にリリース。2024年からメキシカンリーグのケレタロと契約。変化球投手でゴロを量産する投球が持ち味。
ロエニス・エリアス(SP/SSGランダース(KBO))Baseball-Reference Fangraphs Baseball-Savant
2010年に亡命。'14年から'19年までの6年間メジャーでプレイし、以降はトミー・ジョン手術でプレイがなかったが2022年に3年振りのメジャー復帰。速球の他にチェンジアップとカーブを投げる。2023年シーズンは5月に韓国SSGに加入。21先発で8勝6敗 防御率3.70とまずまずの成績をマークした。
ロナルド・ボラーニョス(SP/アルゴドネロス・デ・ウニオン・ラグーナ(MEX))Baseball-Reference Fangraphs Baseball-Savant
’21年にメジャーデビュー。’22年にメジャーで8試合に登板したが、通算でも11試合しかなく、メジャーリーガーの1歩手前な状態。平均球速は93-94マイルで決して速い方ではないが、シンカー、スライダーの割合が多く、ゴロで打たせて取るタイプ。'23WBCではパナマ戦の先発を任されるも1回1/3を4失点とノックアウト。その後はアメリカ戦でリリーフ登板も1/3回2失点と活躍できなかった。
ナイケル・クルーズ(SP/マタンサス)Baseball-Reference
キューバ国内組の中での有望株。ストレートとカーブが武器だが、四球が多く制球力が課題。’23WBCではイタリア戦のみに登板。1アウト満塁のピンチを犠牲フライの1失点で切り抜けた。※ 亡命報道あり、後日修正予定。
ライデル・マルティネス(RP/中日ドラゴンズ)Baseball-Reference
’17、'23WBC、’19プレミア12キューバ代表。。NPB最強クローザーの1人にして常にメジャー流出がが心配される投手。2023年シーズンは防御率は0.39という驚異的なスタッツをマークした。4シーム、スプリットだけでなく、投球割合の少ないスライダー、チェンジアップと全ての球種のPithc Valueでプラスを叩き出した。
オネルキ・ガルシア(SP/オルメカス・デ・タバスコ(MEX))Baseball-Reference Fangraphs Baseball-Savant
元中日、阪神。’21年台湾CPBL中信と契約する予定だったが、開幕前のメディカルチェックで、肩と肘の故障が見つかり解雇。2023年シーズンはメキシカンリーグで10先発で防御率2.31。低地のユカタン所属ではあるが、それを差し引いても上場の出来だった。
カルロス・ビエイラ(SP/コンスピラドレス・デ・ケレタロ(MEX))Baseball-Reference
キューバ野球連盟から派遣されメキシカンリーグでプレイ。奪三振率はあまり高くなく、他の海外組と比べると序列は落ちそう。カナダとは相性が悪く、’19年第2回Premier12ではカナダ戦に先発し、5回1/3を1失点と好投も負け投手となり、'21年の東京五輪でもカナダ戦に先発し2/3回3失点と攻略され負け投手に。'23WBCではオランダ戦,パナマ戦,アメリカ戦にリリーフ登板し4回3失点。
ヨエニス・イエラ(SP/タバスコ・キャトルメン(MEX))Baseball-Reference
キューバ連盟からの派遣され、メキシコを中心にプレイする左腕投手。ホームは標高の高くないタバスコだとは言え、超打高のメキシカンリーグにおいて、3点前後の防御率は相当優秀な部類に入る。2023年WBCでは代表入りも出番は無し。次回大会は年齢的に厳しい時期だろうと考えると戦力的には勿体なかった。
ヨアン・ロペス(RP/アルゴドネロス・デ・ウニオン・ラグーナ(MEX))Baseball-Reference Fangraphs Baseball-Savant
メジャー歴5年のリリーバー。2023年WBCにはシーズンに集中するために辞退。しかし読売でも活躍できず1年で退団。メジャーでは50%程度だった4シームの割合を、日本では力で押そうとしたのか60%程に増やしたが、Pitch Valueはマイナスと逆効果。メキシコで再帰を図る。
フランク・アルバレス(RP/中日ドラゴンズ(育成))Baseball-Reference
中日所属のキューバ代表プロスペクト。2軍での出場機会もまだ少ないが、2023年シーズンは成績が悪化。4シームの平均球速は145キロで2022年から+2キロアップ。フライボール率の高さからすると高い回転数でノビがありそうだが、投球の7割近くをこの4シームが占めているためか、現状武器にはなっていなさそう。スプリットを強化して相乗効果を測りたい。
パべル・ヘルナンデス(SP/インドゥストリアレス)Baseball-Reference
キューバ国内ではインドゥストリアレスでプレイし徐々に成績を上げてきた中、2023年はメキシカンリーグに派遣。内容的には三振が増々取れなくなったものの、防御率は5.31と標高の高さもあってか苦戦。今後に期待したいが何か武器が欲しい所。2024年は国内リーグでノーヒットノーランを達成。
ホセ・ロドリゲス(SP/サマネス・デ・アラグア(LMBP))Baseball-Reference
キューバ国内で長らくプレイする中堅投手。三振が取れるタイプではなく、味方の守備に左右される要素が多分にありそう。'23WBCではイタリア戦とアメリカ戦に登板したが、防御率7.71と苦戦。
アリエル・マルティネス(C/北海道日本ハムファイターズ)Baseball-Reference
NPB所属では珍しい外国人捕手。2023年シーズンは中日から北海道日本ハムに移籍し、過去最多の114試合に出場。WAR 1.8はチーム内3位の活躍。奥さんはモデル。
ロレンゾ・キンターナ(C/デルフィネス・デ・ラグイラ(LMBP))Baseball-Reference Fangraphs
キューバから亡命後、2018年からMLB傘下でプレイ。2023年シーズンはプレイ歴が見つからず。’23WBCではオランダ戦とイタリア戦でスタメンマスクも、その後はA・マルティネスにマスクを譲る形となった。
アンドリス・ペレス(C/マタンサス)Baseball-Reference
22歳の若手有望株。’23WBCではL・キンタナ、A・マルティネスがいるため控えに回った。2023年パンアメリカン競技大会では正捕手を務め、守備面では3回盗塁を刺したが、攻撃面では1本もヒットが出ず課題を残した。
ギジェルモ・ガルシア(1B/ケベック・キャピタルズ(米独Frontier League))Baseball-Reference
祖父はキューバ革命軍司令官。2022年から中日ドラゴンズでプレイ。2022年には一度支配下登録されたがオフに育成契約に戻された。2023年シーズンは1軍での出場こそなかったが、アウトコースに手を出さなくなり、BB%,K%が大きく改善。出塁率が向上した。
ヤディエル・ドレイク(1B・RF/ユカタン・ライオンズ(MEX))Baseball-Reference Fangraphs
2017年には北海道日本ハムファイターズでプレイ。日本を去ってからはメキシコしている。2023年はメキシカンリーグで打率上位にランク。長打力は下がったが出塁はここ数年でベストな状態。2023年WBCでは全試合ファーストでスタメン出場。打順は下位ながら、打率.381/OPS .935と存在感を放った。
シアン・ベガ(1B,3B,OF/シエンフエゴス)Baseball-Reference
キューバ国内の若手有望株。2023年シーズンは打率.276/OPS .749とまずまずな活躍。ファースト以外にサード外野を守れるため、使い勝手も良い。
アンディ・イバニェス(2B、3B、LF/デトロイト・タイガーズ)Baseball-Reference Fangraphs Baseball-Savant
亡命前の2013年にWBCキューバ代表として出場。翌年亡命しレンジャースと契約。'21年にメジャーデビューを果たした。'23WBCでの出場は準決勝のアメリカ戦のみだったが1安打1打点。同年シーズンはメジャー過去最多の114試合に出場し、セカンドのレギュラーを務めた。
ミゲル・バルガス(2B,3B/シカゴ・ホワイトソックス)Baseball-Reference Fangraphs Baseball-Savant
父は元キューバ五輪代表ラザロ・バルガス。ドジャースのプロスペクトで打撃センスは同国を代表する打者Y・グリエルと比較されるほど。2023年WBCの時も代表からの声掛けに対し「シーズンへの集中」を理由に辞退していることから、現在のキューバ体制へのアンチテーゼは余り無さそう。是非ともリクルートしたいタレント。
ヨアン・モンカダ(3B/シカゴ・ホワイトソックス)Baseball-Reference Fangraphs Baseball-Savant
’23WBCではL・ロバートJrと共にWBCキューバ代表の主軸となったメジャーリーガー。同大会では全試合サードでスタメン出場。大会序盤は不振だったが徐々に調子があがり、最終的には打率 .435/OPS 1.258の大活躍。守備範囲が広く、UZRの守備範囲を示すRngRは毎年プラスをマーク。音楽好きで楽曲もリリースしている。
ロベルト・サリバン・バルドキン(3B,SS/ラストゥナス)Baseball-Reference Fangraphs
2023年パンアメリカン競技大会キューバ代表、同大会の主軸を務めた。2014年に亡命しエンゼルスと契約。マイナーでは打率はそこまで悪くなかったものの、パワーレスな部分がネックだったためか最高で3A止まり。2023年シーズンからキューバ国内に復帰し、打率 .398/長打率.648と別人となったような活躍を見せた。
ダヤン・ガルシア(3B,2B/アルテミサ)Baseball-Reference
キューバ国内での成績は非常に優秀で、三振も非常に少ない打者だが、’23WBCではサードにY・モンカダがいるためほとんど出場機会はなかった。次回WBCは37歳なのでチャンスは少なそう。
エリスベル・アルエバルエナ(SS/マタンサス)Baseball-Reference Fangraphs
WBCには亡命前の2013年第3回大会にも出場。名前の文字数が多いため、同大会ではユニフォーム背中の名前が話題となった。'19年にキューバリーグ復帰を果たし、亡命した選手のキューバ国内リーグ復帰第1号となった。'23WBCでは全試合ショートでスタメン出場し、打率.364/OPS.917の活躍。ハードヒットはY・ドレイクと並びチーム最多。
クリスチャン・ロドリゲス(SS,2B/中日ドラゴンズ(育成))
U-23W杯キューバ代表。2023年オフに中日ドラゴンズと育成契約。身体能力が高くキューバ国内では、若手No.1ショートとの呼び声が高い。
ルイス・マテオ(SS、2B/シエンフエゴス)Baseball-Reference
小柄ななアベレージヒッター。国内で活躍しており、コンスタントに打率3割をマーク。パワーレスのため、代表では控えに回りがち。
ロエル・サントス(LF/コンスピラドレス・デ・ケレタロ(MEX))Baseball-Reference Fangraphs
元千葉ロッテマリーンズ。ソフトボールのような走り打ちが特徴。野球連盟からの派遣歴が長く、カナダ、メキシコ、コロンビアなど、様々な国でプレイ経験があるが、ここ数年は完全にメキシカンリーガー。’23WBCでは主にリードオフマンとして活躍し、打率.368/OPS.847だった。次回大会を迎える頃は38歳だが、成績に衰えは見えない。
ルイス・ロバートJr.(CF/シカゴ・ホワイトソックス)Baseball-Reference Fangraphs Baseball-Savant
モンカダと並び、WBCキューバ代表の主軸を支えたメジャーリーガー。代表では全試合3番を務める。2023年シーズンは三振こそ多かったものの、シーズンベストを更新する活躍ぶり。走攻守全ての面で活躍を見せた。アニメ好き。
ヨエルキス・ギベルト(CF/セナドレス・デ・カラカス(LMBP))Baseball-Reference
キューバ代表常連の外野手。メキシコWL、フロンティアリーグなどで派遣歴あり。WBC以外の国際試合では上位打線を担っている。2023年WBCではセンターにL・ロバートJr.がいた関係で主にライトに回ったが、全試合スタメンで出場。準決勝アメリカ戦では3安打の活躍。
カルロス・モニエル(RF/中日ドラゴンズ(育成))Baseball-Reference
U-23W杯キューバ代表。2023年オフに中日ドラゴンズと育成契約。体重100kgを超える巨漢で、2023年シーズンはキューバ国内で打率.320/長打率 .456と上々の成績をマーク。
オスカー・コラス(RF/シカゴ・ホワイトソックス)Baseball-Reference Fangraphs Baseball-Savant
2017-20年に福岡ソフトバンクホークスに所属していたが、2020年に失踪しNPB契約下の選手で初めての亡命選手となった。当時「キューバの大谷」とも称されていたが、ホワイトソックス傘下では外野での出場。2023年WBCの際は、「シーズンへの集中」を理由に辞退しているため、現在のキューバ体制へのアンチテーゼは余り無さそう。是非とも招集したいメジャーリーガーの1人。
ヤンキール・フェルナンデス(RF/コロラド・ロッキーズ(2A))Baseball-Reference Fangraphs
コロラド傘下のプロスペクト。パワーに定評があり、キューバ出身のY・アルバレスに比較される。本人の政治思想はわからないが、前回WBCでは代表入りの噂がたったので、火の無い所に煙は立たないだろう、ということで是が非でも招集したい亡命選手リストの1人。
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