『短期決戦でも三振を恐れず長打を狙うべきか?』

安打数で下回ったWBC準決勝

2017年3月22日、第4回WBC準決勝で侍ジャパンはアメリカ代表に1-2で敗れました。日本代表が奪った三振の数は12個。高めの球を上手く使った結果、アメリカ代表の6個に対し日本代表はその2倍の三振を奪いました。また、与四死球の数はアメリカ代表が3個なのに対し、日本代表は1個のみ。三振と四死球の結果だけ見れば、日本代表が負けた試合には見えません。

勝負を分けたのは、安打と失策絡みの失点で、安打数は日本が4つに対してアメリカが6。これにセカンド菊池のエラーと、松田のサードゴロのハンブルが加わりました。試合全体を通して、アメリカ代表の打線の方が、アウトになった球も含めて強い打球を打てていました。


侍ジャパン大学代表でも同じ現象が起きている

投手陣は三振を多く奪い、四死球も与えないが、安打を多く打たれる。WBC準決勝と同じ現象が、先月行われた日米大学野球選手権(7/3~7/9@アメリカ)でも表れました。

侍ジャパンの投手陣は、アメリカ大学代表よりも奪三振で11個上回り、四死球は6個少なかったにも関わらず、防御率は2.40でアメリカ代表よりも0.53悪い数値でした。理由は『打たれた』から。

アメリカ大学代表の打撃陣は、ヒットの数で侍ジャパンを15本上回りました。しかも、アメリカの方が長打(特に2塁打)で差がついていて、長打率はアメリカが.365に対し日本は.228に留まりました。これだけ打撃成績に差があると、苦しい展開になることは容易に想像できます。

このシリーズで、日本代表の取った作戦は、典型的な『スモールベースボール』でした。5試合で犠打数10とバントを多用しました。日本とアメリカで打数の差が大きい一番の理由は、スモールベースボールを採用したためです。前回WBCでも小久保前代表監督が1試合平均1.3回バントを使用し、これは大会参加国中1番多いものでした。しかし、今回の大学代表はそれを上回る1試合平均2.0回バントを使いました。1点差の試合が多かったためバントが増えることは自然なことですが、一方でアメリカ大学代表の方は、同じ僅差での試合ですがバントは日本ほど用いることはせずヒッティングを選択しました。

なお、日米野球選手権の後のハーレム・ベースボールウィークでも、日本代表はバントを多用していて、1試合平均2.6回にむしろ増えていました。日本がアウト1つを犠牲に2塁まで進塁するのに対し、アメリカの方は2塁打によってアウトを犠牲にせず進塁しているため、どうしても得点機会はアメリカの方が多くなります。


では、日本代表は戦い方を変えるべきでしょうか?アメリカのように三振が増えたとしても、ヒット(長打)を狙いにいくべきでしょうか?

フライボール革命への対策

アメリカでは、昨季ヒューストン・アストロズが採用してワールドシリーズ優勝のカギとなったフライボール革命が全盛を迎えています。ピッツバーグ・パイレーツなどが多用した大胆なシフト戦略により、一時ゴロボールが内野を抜けにくくなりましたが、フライボール革命によって内野を超えるボールが増加。飛距離が伸びる“バレルゾーン”の存在が明らかとなったことで、ボールの飛距離が伸ばせるようになりました。この傾向は、当然アメリカのアマチュア野球界にも情報として入っており、ましてや東京オリンピックに出場してくるであろうマイナーリーガーの選手たちは当然その指導を受けている選手が多数出場すると予想されます。ヒューストン・アストロズは、フライボール戦略を真似してくる他球団に対し、本塁打となる確率が最も少ない“カーブ”を持つ投手を多く集め対応しました。カーブ以外にもメジャーの各球団は、フライボール対策を考え、その技術の攻防はいたちごっこです。


個人的な見解

ここからは個人的な見解ですが、私は必要以上にわざわざ長打を狙いに行く必要はないと思っています。それは、アメリカで浸透するフライボールの打法を取り入れるべきではない、ということでは無く、プロ野球のシーズン中であればどんどん打法を取り入れてもいいと思います。ただ、使用球の影響などで環境的になかなか『動くボール』への対応が中々進まない現状を踏まえると、それが国際試合になって急に改善されるとは思い難く、バントをヒッティングに切り替えたところで長打は簡単に出ないと思います。

そこで、とりあえずの対策としては「守備重視の外野手」選考が良いのではないかと考えています。“どう攻撃するか?”とは逆の発想で、相手の打率,長打率を低くする手段を取ろうということです。日本の外野には、柳田(福岡ソフトバンク)、鈴木誠也(広島カープ)など、非常に高い攻撃力を持った選手が数多くいますが、外野守備を考え上林誠知(福岡ソフトバンク)や、もっとサプライズで大田泰示(北海道日本ハム)を起用するなども面白いと思います。

今後メジャーの風潮として、長打になりやすい外野へのフライを、多くアウトに繋げられる選手が評価されると予想しています。日本でも同じ現象が起きるか分かりませんが、格上の相手との戦いでロースコアに持ち込みたいのならば、徹底的にロースコアを目指すのも面白いかなと思います。


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