先月、7月20日から29日にかけて、中米カリブ選手権というスポーツの大会がコロンビアのバランキージャで行われました。この大会は、『中米カリブ版のオリンピック』と言える大会で、競技種目の中にはこの地域で盛んな野球も含まれています。前回王者のキューバ代表は、この大会を目標に、メキシカンリーグのチームや米国大学選別と対外試合や、国内選抜チーム同士の強化試合を行うなど、本気モード全開で挑みました。今回はその結果をセイバーメトリクス系の指標も交えながら分析してみました。
キューバ代表選手には、アルフレッド・デスパイネ(福岡ソフトバンク)は不在なものの、日本のプロ野球からユリスベル・グラシアル(福岡ソフトバンク)、ライデル・マルティネス(中日)など、ほぼフルメンバーといった布陣で参戦しています。他の参加国も、元メジャー/マイナーリーガーやメキシカンリーグ所属の選手を集めるなど、出来る範囲でベストメンバーを揃えようとしているように見えました。しかし、選手の多くがアメリカでプレーしている国にとって、シーズン真っ只中で選手を集めるのは難しく、逆に自国のリーグから選手を選抜できるメキシコやキューバの方が有利に見えました。
キューバ代表は36年振りの2位・・・
しかし、優勝したのはプエルトリコ代表。キューバ代表は5勝2敗の2位で終わりました。キューバ代表がこの大会で2位に終わったのは、不参加だった2002年2010年を除くと実に36年振りのことになります。キューバのチーム成績は、優勝したプエルトリコ代表と比較して大きな差はありませんでした。大会を通じての防御率は、キューバ代表 2.08、プエルトリコ代表が2.57と、むしろキューバ代表の方が良い成績でした。
キューバ代表が負けた敗因
優勝したプエルトリコも5勝2敗で、勝敗数はキューバと同じでした。ただ、直接対決では1対8の大差で大敗。キューバの攻撃はプエルトリコ先発のAnthony Seise投手の前に7回無失点に抑えられました。
今大会のキューバ代表投手陣はかなり安定していました。プエルトリコ戦以外は、1~3点に相手打線を抑えていました。下の表はキューバ代表の投手陣の成績です。
ERAは防御率、FIPは三振や与四球など守備の影響を除いた疑似防御率です(詳しくはこちら)。そして注目して頂きたいのがRSAAで、平均的な投手よりもどれだけ失点を抑えたかを示す貢献度です。今回はFIPをベースにした改良版RSAAを計算しています。キューバ投手陣の中でも、先発ラザロ・ブランコ(RSAA +1.8点)や、リリーフのライデル・マルティネス(RSAA+0.5点)、ヨエニス・イエラ(RSAA+0.4点)らの貢献が非常に高かったのが分かります。
そして、もう1人RSAAが+1.2点と高い値を示したのがプエルトリコ戦で先発したフレディ・アルバレスです。彼の成績を見ると、FIP1.94に対して、防御率が4.15と開きがあります。防御率が悪いのはプエルトリコ戦での5失点の影響でしょうが、FIP 1.94という値からすると、守備でファインプレーでもあれば失点をもっと抑えられた可能性があります。そう考えると、大会を通じて投手が安定した中で、唯一失点が多かった相手がプエルトリコだったのは、運が悪かったと思えます。
並みがあった攻撃陣
次に攻撃陣の働きを見てみます。今回は打率(Ave.)以外に、1打席当たりどれだけ得点増加に貢献したかを示すwOBAを計算してみました。更にwOBAを元に、平均的な打者と比べてどれだけ得点を生み出したかを示すwRAAも計算しました。
打撃で貢献度が高かったのは、アレクサンダー・アヤラ(wRAA+3.4点)、カルロス・ベニテス(wRAA+2.9点)、元千葉ロッテのロエル・サントス(wRAA+2.3点)など、ベテラン勢が中心でした。若手の活躍が少なく、左の大砲ギジェルモ・アビレスがwRAA▲1.9点だったのは残念でしたが、攻撃成績は悪くなかったように見えます。ただ、ニカラグアやドミニカ共和国に対しては2桁得点を記録したものの、プエルトリコ戦、ベネズエラ戦、パナマ戦で1得点しか取れておらず波がありました。“打線は水もの”と言われますが、勝ち抜く上での課題と言えそうです。
プエルトリコ代表を上回っていた個々の成績
キューバ代表とプエルトリコ代表を、投手の貢献度『RSAA(FIP版)』+攻撃の貢献度『wRAA』を使って比較してみました。
総合点を見ると、キューバ代表が+11.0点(投手+2.2/攻撃+8.8)、プエルトリコ代表が+2.1点(投手▲4.3/攻撃+8.4)と、キューバ代表が大きく上回りました。この結果から言っても、キューバ代表の力は大会参加国の中でも高かったと言えそうです。
キューバ代表にとっては、他の国がベストメンバーでは無い中で勝てなかったことは、Permier12や東京オリンピックに向けて不安の高まる結果だったでしょうが、対戦相手からするとまだまだ侮れない相手だと言えそうです。
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